成年後見制度の申請方法と費用完全ガイド|法定後見・任意後見の違い

親が認知症になり、預金の引き出しもできない、施設との契約も進まないという状況に追い込まれて初めて「成年後見制度」を調べ始める方が多くいます。あるいは、自分自身がまだ元気なうちに認知症になった後の財産管理をどう備えておくか、真剣に考えている60〜70代の方もいるでしょう。

この記事では、成年後見制度の仕組みと対象者、法定後見の3種類の違い、任意後見との使い分け、申立ての流れ、費用相場、そして家族信託との比較まで、実際に判断できる情報をまとめます。

目次

成年後見制度とは何か

判断能力が低下した人を守る制度の意義

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分になった方が、財産の管理や重要な契約(施設入居、不動産売買、医療同意など)を適切に行えるよう、家庭裁判所が選任した「後見人」等が支援する制度です。民法第7条〜第18条および任意後見契約に関する法律に根拠があります。

制度の目的は本人の保護と自己決定権の尊重の両立です。判断能力が低下した方が不利益な契約を結ばされたり、財産を使い込まれたりするリスクを防ぎながら、可能な限り本人の意思・希望を尊重した支援を目指します。

成年後見制度は大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類に分かれます。法定後見は判断能力がすでに低下してから家庭裁判所に申し立てる制度で、任意後見は本人が元気なうちに将来の備えとして契約を結んでおく制度です。どちらを選ぶかは本人の現在の状態によって決まります。

なお、後見制度の利用者数は年々増加しており、最高裁判所の統計によると、後見監督等開始件数は年間3万件以上に上るとされています(2023年度)。認知症の増加に伴い、この制度に関わる機会はますます増えていくと考えられます。

対象となる方の状況

成年後見制度の対象は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な成年者(18歳以上)です。判断能力が「どの程度低下しているか」によって、法定後見の3種類(後見・保佐・補助)のいずれが適用されるかが決まります。

判断能力の程度は、申立時に添付する医師の診断書(所定の書式あり)によって判定されます。家庭裁判所が専門家(精神科医等)に鑑定を依頼するケースもあります。ただし、診断書の内容が申立てのタイプ(後見・保佐・補助)と一致しない場合、裁判所が別のタイプで審判を行うこともあります。

法定後見の3種類の違い

後見・保佐・補助の区別と選び方

法定後見には「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。判断能力の程度によって区別されますが、それぞれ後見人等に与えられる権限の範囲も異なります。

種類 対象者の判断能力 代理権の範囲 同意権・取消権 主な申立人
後見 ほぼない(重度の認知症・知的障害等) 財産に関するすべての法律行為 同意権なし・日常生活行為を除くすべての行為に取消権あり 本人・配偶者・4親等内の親族・市区町村長等
保佐 著しく不十分(中程度の認知症等) 申立てで定めた特定の行為 民法第13条第1項の特定行為(借金・不動産売買等)に同意権・取消権あり 同上
補助 不十分(軽度の認知症・判断力の低下等) 申立てで定めた特定の行為 申立てで定めた特定の行為に同意権・取消権(本人の同意が必要) 同上(本人の同意が必要)

最も権限が広いのは「後見」で、成年後見人は財産全般について本人を代理して法律行為を行えます。日常的な買い物などの行為には取消権が及びませんが、不動産の売買や金融機関との手続き、施設との契約など、重要な法律行為はすべて後見人が本人の代わりに行います。

「保佐」は判断能力が著しく不十分な方向けで、民法第13条第1項に列挙された特定の重要行為(借財・保証・不動産売買・相続の承認・放棄等)について同意権と取消権を持ちます。それ以外の行為については本人が自分で行えます。

「補助」は最も権限が限定的で、本人の同意のもとに申立てで定めた特定の行為についてのみ代理権・同意権が付与されます。本人がある程度自分で判断できる状態に適しています。

どの類型が適用されるか判断する目安

実務では、申立書に添付する医師の診断書の記載内容が大きく影響します。医師が「後見相当」「保佐相当」「補助相当」を判断しますが、最終的な判断は家庭裁判所が行います。

目安として、重度の認知症で日常的な判断もほとんど困難な状態であれば「後見」、ある程度の日常会話はできるが重要な契約の理解が難しい場合は「保佐」、軽度の物忘れや判断力の低下があるが基本的なことは理解できる場合は「補助」が選ばれる傾向があります。ただしこれはあくまで傾向であり、実際の適用類型は個々の状況によって異なります。

任意後見制度とは何か

元気なうちに備える制度の仕組み

任意後見制度は、本人が判断能力のあるうちに、将来判断能力が低下した際に後見人となる人(任意後見受任者)と契約を結んでおく制度です。任意後見契約は公正証書で締結する必要があり、法務局の後見登記ファイルに登記されます。

任意後見の大きなメリットは、後見人を自分で選べることと、後見の内容(代理権の範囲)を自分で設計できることです。法定後見では家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも家族が後見人になれるわけではありませんが、任意後見では信頼できる家族や知人を受任者として指定できます。

任意後見契約を結んだだけでは効力は生じません。本人の判断能力が低下した後、任意後見受任者(家族等)が家庭裁判所に「任意後見監督人の選任」を申し立てることで、初めて任意後見が効力を発揮します。任意後見監督人は家庭裁判所が選任し、任意後見人の活動を監督します。

任意後見の費用は、公正証書作成費用(数万円程度)と任意後見監督人報酬(月額1〜3万円程度が多いとされています)がかかります。法定後見と比べて本人の意思が反映されやすい反面、監督人の選任が必要で、費用がゼロではありません。

法定後見と任意後見の使い分け

項目 法定後見 任意後見
利用できる時期 判断能力が低下した後 判断能力があるうちに契約
後見人の選任 家庭裁判所が選任 本人が事前に指定
本人の意思反映 限定的 高い(契約内容を自分で決定)
家族が後見人になれるか なれる場合もあるが保証なし 指定した人が後見人になれる
手続きの開始 申立て後、数か月〜で審判 判断能力低下後に監督人申立て
費用(概算) 申立費用数万円+後見人報酬 公正証書費用+監督人報酬

法定後見申立ての流れ

申立てから審判確定までのステップ

法定後見の申立てから後見開始まで、一般的に2か月〜4か月程度かかるとされています。急を要する場合でも、裁判所の手続きには一定の時間が必要です。以下にステップを整理します。

  1. 申立ての準備:申立書類の取得・記入(家庭裁判所の窓口またはウェブサイト)、医師の診断書の取得(所定書式あり)、財産目録の作成、申立費用の準備
  2. 家庭裁判所への申立て:本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書類一式を提出
  3. 審理・調査:家庭裁判所の調査官が本人・申立人・後見人候補者等と面接。必要に応じて医師に鑑定を依頼(鑑定費用は5万〜10万円程度が相場とされています)
  4. 審判:家庭裁判所が後見・保佐・補助のいずれかを開始する審判を下し、後見人等を選任
  5. 審判の確定・登記:審判確定後、法務局の後見登記ファイルに登記。後見人は「登記事項証明書」を取得して各機関(金融機関・施設等)での手続きに利用

申立てを行える人は、本人・配偶者・4親等内の親族・検察官・市区町村長等です。ご家族が申し立てるケースが最も多いとされています。なお、補助については本人の同意が申立ての要件になっています。

後見人候補者として申立書に記載した人が必ず選任されるわけではありません。家庭裁判所が候補者の適格性を審査し、相応しくないと判断した場合や、親族間で意見が割れている場合は、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家が後見人に選任されることがあります。

申立てに必要な書類一覧

申立書類は家庭裁判所によって若干異なる場合がありますが、一般的に以下の書類が必要です。

書類名 取得先・注意事項
申立書 家庭裁判所の窓口・ウェブサイト(後見・保佐・補助で書式が異なる)
申立書付票(本人の経歴等) 同上
医師の診断書(所定書式) かかりつけの医師・精神科医等に依頼(所定書式を医師に渡す)
本人の戸籍謄本 本人の本籍地の市区町村役場
本人の住民票または戸籍附票 本人の住所地の市区町村役場
後見人候補者の住民票 候補者の住所地の市区町村役場
本人の財産目録・収支状況報告書 申立人が作成(通帳・不動産登記情報等を参照)
本人の財産関係書類 預金通帳の写し・不動産登記事項証明書・保険証券等
親族関係図 申立人が作成
親族の意見書(任意) 他の親族の賛否・意見を記入(提出が求められることが多い)

これらの書類を揃えるだけでも相当な手間と時間がかかります。弁護士・司法書士に申立て代理を依頼することで、書類収集から申立てまでを任せることができます。費用は10万〜20万円程度が相場とされています(事務所によって異なります)。

成年後見制度の費用相場

申立費用の内訳

成年後見制度を利用する際には、申立てにかかる費用と、後見人が選任された後に毎月発生する後見人報酬の2種類の費用が生じます。

費用の種類 金額の目安 備考
申立手数料(収入印紙) 800円(後見)・800円(保佐)・800円(補助) 代理権・同意権の付与申立てには別途800円ずつ
後見登記手数料(収入印紙) 2,600円 審判確定後に法務局に登記される費用
郵便切手 3,000〜5,000円程度 裁判所によって異なる
医師の診断書作成費用 5,000〜2万円程度 医療機関によって異なる
鑑定費用(必要な場合) 5万〜10万円程度 裁判所が必要と判断した場合のみ。全体の約10%程度の案件で実施とされる
書類取得費用 数千〜1万円程度 戸籍謄本・住民票・登記事項証明書等
弁護士・司法書士への依頼費用 10万〜20万円程度 申立て代理を依頼する場合(任意)

後見人報酬の相場

後見人に対する報酬は家庭裁判所が決定します。東京家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」によると、管理財産額によって月額報酬の目安が示されています。

管理財産額 月額報酬の目安
1,000万円以下 月額2万円程度
1,000万円超〜5,000万円以下 月額3万〜4万円程度
5,000万円超 月額5万〜6万円程度

これは専門家(弁護士・司法書士等)が後見人の場合の目安です。親族が後見人になった場合、報酬を受け取らないケースも多いですが、家庭裁判所に申請すれば同様に報酬を受けることができます

後見人報酬は本人の財産から支払われます。月額2万〜6万円が継続的に発生するため、長期にわたると相当な金額になります。財産が少ない方の場合、報酬の支払いが財産を圧迫する可能性もある点は念頭に置いておく必要があります。報酬が払えない場合のために、自治体によっては「成年後見制度利用支援事業」として報酬の一部を助成する制度があります。

後見人に選ばれる人

家族後見人と専門家後見人の違い

家庭裁判所は申立書に記載された後見人候補者を参考にしながら、最終的に後見人を選任します。家族(配偶者・子・兄弟姉妹等)が候補者として選ばれるケースもありますが、必ずしも候補者通りに選任されるとは限りません。

家族後見人が選任されやすいのは、以下のような状況とされています。

  • 親族間で後見人について争いがなく、全員が賛成している
  • 財産の規模が比較的小さく、管理が複雑でない
  • 候補者に問題となる事情(過去の破産・犯罪歴等)がない
  • 候補者が本人と近距離に在住で、日常的な支援が可能

一方、以下のような場合は専門家(弁護士・司法書士・社会福祉士等)が後見人に選任される可能性が高くなります。

  • 親族間で後見人の人選について意見が割れている
  • 本人の財産が多く、専門的な管理が必要
  • 候補者に財産管理能力や状況に問題があると判断された
  • 親族が遠方に居住しており、日常的なサポートが難しい

近年は専門家が選任されるケースが増えているとされており、最高裁の統計でも専門職後見人の割合が高い状況が続いています。家族が後見人になりたいと考えている場合でも、必ずしもその通りにならないことは理解しておく必要があります。

成年後見制度のデメリット・注意点

一度始めると原則として終了できない

成年後見制度の最も大きなデメリットの一つが、一度後見が開始されると、本人が亡くなるか判断能力が回復するまで制度が継続するという点です。認知症は回復が難しいことがほとんどであるため、実質的には終身にわたって後見人報酬が発生し続けることになります。

「もう後見人は必要ない」と家族が思っても、家庭裁判所の許可なく後見を取り消すことはできません。後見人を交代させることも、正当な理由なしには認められません。一度利用を始めたら引き返せない、という点を十分に理解したうえで申立てを検討する必要があります。

財産の柔軟な活用が難しくなる

後見人は本人の財産を「本人のために」管理・使用しなければならず、家族のための支出や、本人の意向が確認できない贈与・投資等は原則として行えません。「孫へのお年玉」「家族旅行の費用」なども、後見人が本人の意思を確認できない状況では認められにくいとされています。

不動産の売却も、家庭裁判所の許可が必要です(本人が居住する不動産の場合は特に厳しく審査されます)。老人ホームへの入居費用のために自宅を売りたい、という場合も、裁判所の許可を得るプロセスが必要で、時間と手間がかかります。

このような制約から、家族信託や財産管理委任契約などと比較検討する方も増えています。

後見人の不正リスクと監督の仕組み

後見人による財産の横領・使い込みは残念ながら社会問題にもなっています。特に家族が後見人になった場合に発生しやすいとされており、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等の調査でも毎年相当数の不正事案が報告されています。

このリスクに対応するため、家庭裁判所は後見監督人の選任や、定期的な報告書の提出を後見人に義務付けています。また、信託銀行との後見制度支援信託(財産の一部を信託銀行に管理させる制度)の利用も進んでいます。後見人を選ぶ際は、信頼性とともに透明性の確保も大切な要素です。

家族信託との使い分け

家族信託が向いているケースと成年後見が向いているケース

認知症対策として近年注目が高まっている「家族信託」と成年後見制度の違いを理解し、状況に応じて選択することが重要です。

比較項目 成年後見制度(法定後見) 家族信託
利用できる時期 判断能力が低下した後 元気なうちに契約締結
費用の継続性 後見人報酬が毎月発生(終身) 初期費用のみ(信託報酬は設計次第)
財産の柔軟な活用 制限が多い 契約で定めた範囲で柔軟に活用可
身上保護(医療・施設等の手続き) 後見人が対応できる 信託財産以外の対応は別途必要
裁判所の関与 家庭裁判所が監督 原則として裁判所の関与なし
相続対策との連携 難しい 比較的容易(次の世代への承継設計可)
対応できる財産 すべての財産 信託財産として設定したものに限定

家族信託が有効なケースは、本人がまだ元気なうちに財産管理の仕組みを作りたい場合、不動産を含む財産を柔軟に活用したい場合、相続対策も合わせて行いたい場合です。家族信託は判断能力のある元気なうちにしか設定できないため、すでに認知症が進んでいる場合は利用できません。

一方、成年後見制度が向いているのは、すでに判断能力が低下していて今すぐ財産管理や身上保護の支援が必要な場合です。また、身上保護(医療の同意、施設との契約等)については家族信託では対応できないため、後見制度が必要になるケースがあります。

両制度を組み合わせる「信託+後見」の設計も存在します。財産管理は家族信託で行い、身上保護が必要になった段階で任意後見を発動させる、というプランを専門家に設計してもらう方法です。

成年後見制度を利用する前に確認すること

申立て前に整理しておきたい事項

成年後見の申立てを行う前に、いくつかの点を確認・整理しておくと手続きがスムーズになります。まず、本人の財産状況を把握することです。財産目録の作成は申立書類の一部ですが、預金口座・不動産・有価証券・保険・負債(住宅ローン等)を一覧化するには時間がかかります。通帳・権利証・保険証券・株式の残高報告書などを早めに集め始めることをお勧めします。

次に、後見人候補者を誰にするかを親族間で事前に合意しておくことです。候補者について親族間で意見が対立していると、家庭裁判所が専門家を選任する可能性が高くなります。「○○が後見人になる」という合意形成を事前に行い、他の親族の意見書(賛成の内容)も用意できると、候補者通りの選任につながりやすくなるとされています。

また、本人にかかりつけの医師がいるかどうかも確認が必要です。申立てに必要な診断書は所定の書式(家庭裁判所指定)で作成してもらう必要があります。かかりつけ医がいない場合は、精神科・神経内科等で診察を受けて診断書の作成を依頼する必要があります。診断書の取得に数週間かかる場合もありますので、早めに動くことが重要です。

市区町村や社会福祉協議会の支援を活用する

成年後見制度の申立てにかかる費用や手続きについて、各市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談することができます。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口として機能しており、成年後見制度の説明・相談に対応しているところも多いとされています。

また、親族が成年後見の申立てを行うことが難しい場合(親族がいない・疎遠・高齢等)は、市区町村長が職権で申立てを行う制度(首長申立て)があります。「身寄りのない方の場合はどうするのか」という不安がある場合は、市区町村の高齢者・障害者担当窓口に問い合わせてみてください。

財産が少なく後見人報酬の支払いが難しい場合は、自治体の「成年後見制度利用支援事業」として報酬の一部助成が受けられる可能性があります。制度の内容や対象要件は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村に確認することをお勧めします。

なお、日本司法支援センター(法テラス)では、弁護士・司法書士への相談費用の立替制度(審査あり)を提供しています。費用面で不安がある場合は法テラスへの相談も選択肢の一つです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 親族が後見人候補として申立書に記載したのに、別の人が選ばれることはありますか?

あります。家庭裁判所は申立書の候補者に拘束されず、最終的に最適と判断した人を後見人として選任します。親族間で後見人の人選について意見が対立している場合、財産規模が大きく専門的な管理が必要な場合、候補者に適格性の問題がある場合などは、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職後見人が選任されることがあります。家族が後見人に就けることを前提に計画を立てると、見直しが必要になる可能性があります。事前に司法書士や弁護士に相談しておくことで、選任の見通しをある程度確認できます。

Q2. 後見人に選ばれた後、どんな仕事をするのですか?

後見人の主な役割は「財産管理」と「身上保護」の2つです。財産管理では、本人の預金口座の管理、公共料金・施設費用の支払い、不動産の管理(売却には裁判所の許可が必要)などを行います。身上保護では、介護施設との契約締結・更新、医療機関との手続き(医療行為そのものへの同意は後見人の権限外とされています)、生活環境の整備などが含まれます。家庭裁判所には年1回以上、財産状況・後見事務の報告書を提出する義務があります。後見人は本人の利益のためにのみ財産を使用・管理しなければなりません。

Q3. 申立てから後見が始まるまでどのくらいかかりますか?

一般的に2か月〜4か月程度かかるとされています。申立て書類の準備・提出後、裁判所の調査官による調査(本人・申立人・候補者との面接)、必要な場合は医師による鑑定(別途1〜2か月かかることがある)を経て審判が下されます。鑑定が必要なケースでは全体で4か月〜6か月に及ぶこともあります。施設入居の契約など急を要する手続きがある場合は、審判確定前でも「審判前の保全処分」を申立てる方法もありますが、ハードルは高いとされています。なるべく早めに申立て準備を始めることが重要です。

Q4. 任意後見の契約にはどのくらいの費用がかかりますか?

任意後見契約の締結には、公正証書の作成が必要です。公証役場の手数料は原則として1万1,000円(財産の多寡にかかわらず一定)で、法務局への登記費用(1,400円程度)も加わります。弁護士・司法書士に契約書の作成を依頼した場合は別途10万〜20万円程度の報酬がかかる場合があります。任意後見が実際に発動した後(判断能力低下後)は、家庭裁判所に選任された任意後見監督人への報酬が月額1万〜3万円程度発生するとされています。後見人に報酬を支払う場合は、その金額も別途必要です。

Q5. 成年後見制度を使わずに銀行の手続きはできないのですか?

金融機関によって対応は異なりますが、多くの銀行では判断能力が低下した本人の口座から代理人(家族)が出金しようとしても、対応できないことが多くなっています。「成年後見の登記事項証明書が必要」とされるケースが増えており、後見制度を使わない代替手段として、判断能力があるうちに「代理人登録(家族カード等)」を利用するか、家族信託で財産を受託者に移しておく方法があります。認知症になってから慌てて動くより、元気なうちに対策を立てておくことが望ましいとされています。

Q6. 後見人を途中で変えることはできますか?

後見人を途中で変更(解任・辞任)することは可能ですが、条件があります。後見人に不正行為・不適切な管理がある場合などは、家庭裁判所に解任を申立てることができます(民法第846条)。後見人自身が辞任する場合も、正当な理由があれば家庭裁判所の許可を得て辞任できます。「気に入らないから変えたい」という理由だけでは認められにくいとされています。家族後見人から専門職後見人への変更、または専門職後見人から別の専門職への変更も、裁判所の審判を経ることになります。

まとめ

成年後見制度は、認知症や障害等により判断能力が低下した方の財産と生活を守る重要な制度です。法定後見(後見・保佐・補助)は判断能力が低下した後に利用でき、任意後見は元気なうちに将来の備えとして契約しておく制度です。

主なポイントを整理します。

  • 法定後見は判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類がある
  • 後見人は家庭裁判所が選任し、家族が候補者でも必ずしも選ばれるとは限らない
  • 申立てから審判まで2〜4か月程度かかるため、早めの行動が重要
  • 申立費用は数万円程度だが、専門家への依頼費用(10〜20万円程度)も見込んでおく
  • 後見人報酬は月額2〜6万円程度が継続的に発生し、長期では相当な金額になる
  • 制度が始まると原則として本人が亡くなるまで継続し、途中でやめることが難しい
  • 財産の柔軟な活用には制約が多く、家族信託との使い分けを検討する価値がある
  • 任意後見は元気なうちにしか設定できないため、早めの準備が有効

成年後見制度は「使い始めたら後戻りできない」性質が強いため、利用する前に十分に調べ、できれば弁護士・司法書士・行政書士等の専門家に相談することをお勧めします。家族信託・任意後見も含めた選択肢を比較したうえで、本人の状況と家族の状況に合った方法を選ぶことが、長期的に見て最も安心につながるでしょう。まだ元気なうちであれば、任意後見や家族信託という選択肢もあります。「まだ大丈夫」と思っているうちに動き始めることが、いざというときの備えになります。


【免責事項】本記事は2025年4月時点の法令・裁判所運用に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。法律・制度は改正されることがあります。実際の申立てや制度利用にあたっては、弁護士・司法書士・家庭裁判所にご相談のうえ、最新の情報に基づいてご判断ください。

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