相続税の延納・物納とは?条件・手続き方法・注意点を完全解説

相続が発生して10か月という納税期限が迫っているにもかかわらず、手元に十分な現金がない——そのような状況に直面している方は少なくありません。相続財産の多くが不動産や非上場株式などの「すぐには換金できない財産」で占められている場合、期限内に相続税を一括で納めることが難しいケースがあります。

そのような場合に活用できるのが「延納」と「物納」という制度です。延納は最長20年にわたる分割払いを認める制度で、物納は現金の代わりに不動産などの財産そのもので納税する制度です。いずれも一定の条件を満たす必要があり、申請手続きも決して簡単ではありません。

この記事では、相続税の延納と物納それぞれの条件・手続きの流れ・利子税率・注意点、そしてどちらを選ぶべきかの判断基準について、国税庁の情報をもとに詳しく解説します。

目次

相続税の納税期限と一括納付の原則

相続税は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から起算して10か月以内に申告・納付を行う必要があります(相続税法第27条)。10か月という期限は、遺産分割協議の完了・相続財産の評価・申告書の作成などにかかる時間を考慮した上で設定されています。

相続税の納付は原則として「金銭による一括納付」です。期限内に一括で現金を用意して納税するのが基本の形です。しかし、相続財産が不動産・非上場株式・農地など、すぐに換金できない財産ばかりである場合には、10か月以内に現金を確保することが困難なケースがあります。

そのような事情がある場合に設けられているのが、延納と物納という特例制度です。ただし、これらの制度は申請すれば誰でも利用できるわけではなく、一定の要件を満たし、税務署の許可を得る必要があります。期限を過ぎてから慌てて申請しても認められないため、早めに税理士に相談することをお勧めします。

なお、延納・物納の申請は、相続税の申告期限である10か月以内に行う必要があります(同時申請が基本)。期限を過ぎると延滞税が発生するため、現金が不足しそうな場合は速やかに動くことが重要です。

延滞税は、本来の納税額に対して年7.3%(特例:年2.4〜8.7%の範囲で設定)が課されることがあります。延納・物納の申請中は延滞税の一部が猶予される場合がありますが、申請が却下された場合は遡及して延滞税が課されるリスクもあるため、申請の可否は税理士と慎重に検討することをお勧めします。

延納とはどのような制度か

延納の基本的な仕組みと特徴

延納(えんのう)とは、相続税を分割して支払う制度です。一度に全額を納めることが難しい場合に、税務署の許可のもとで分割払いが認められます。延納の期間は相続財産に占める不動産等の割合によって異なり、最長20年にわたって分割納付することが可能です。

延納が認められると、元本を分割で支払うとともに、未払い残高に対して「利子税」が課されます。利子税は延納の対価として国に支払う利息のようなものです。利子税率は財産の種類・延納期間によって異なります(後述の利子税率表を参照)。

延納は金銭での納付が前提であり、延納期間中も分割した金額を現金で支払い続けます。物納(後述)と異なり、財産そのもので納税するわけではありません。延納を選択した場合、毎年一定額を税務署に納め続けることになります。

延納の最大のメリットは、まとまった現金がなくても相続財産(特に不動産)を手放さずに納税できる点です。不動産を売却したくないご家族にとっては有力な選択肢となります。

一方、延納のデメリットとして、利子税の負担が長期間にわたって続く点があります。延納期間中は毎年の分割払いに加えて利子税を支払う必要があり、総支払額は当初の税額より増えます。また、延納期間中に担保財産の状況が変わった場合(売却・滅失等)には税務署への報告・手続きが必要になります。

延納が認められる条件

延納が認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります(相続税法第38条)。

  • 相続税の納税額が10万円を超えていること
  • 金銭で一時に納付することが困難な金額の範囲内であること(「金銭納付困難額」の範囲内)
  • 延納税額・利子税に相当する担保を提供できること(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は担保不要)
  • 延納の申請書を申告期限内(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)に税務署に提出していること

担保として提供できる財産は、国債・地方債・社債(一定のもの)・土地・建物・立木・船舶・航空機・自動車などです。担保は延納税額の全額をカバーするものでなければなりません。

「金銭納付困難な金額」の計算は複雑です。手元現金・預貯金・生命保険金・退職手当金など「すぐに換金できる財産」を考慮した上で算定されるため、税理士に確認することを強く勧めます。

金銭納付困難額の計算では、相続財産全体から「すぐに換金できる財産(流動性の高い財産)」を差し引いた金額が基準となります。流動性の高い財産とは、預貯金・上場株式・生命保険金・退職手当金などです。これらの財産が相続税額を超えていれば、延納は認められません。相続財産のほとんどが不動産であっても、手元の預貯金が納税額を賄えるなら延納は使えない点に注意が必要です。

延納の利子税率

延納期間中は、未納残高に対して利子税が課されます。利子税率は相続財産に占める「不動産等の割合」と「延納期間」によって異なります。以下は国税庁の定める利子税率の概要です(特例基準割合が0.9%の場合の特例割合を含む)。

区分 不動産等の割合 延納期間(最長) 利子税率(年) 特例割合(年)※
不動産等に係る延納相続税額(不動産割合75%以上) 75%以上 20年 3.6% 0.8%
動産等に係る延納相続税額(不動産割合75%以上) 75%以上 10年 5.4% 1.2%
不動産等に係る延納相続税額(不動産割合50%以上75%未満) 50〜75%未満 15年 3.6% 0.8%
動産等に係る延納相続税額(不動産割合50%以上75%未満) 50〜75%未満 10年 5.4% 1.2%
動産等に係る延納相続税額(不動産割合50%未満) 50%未満 10年 5.4% 1.2%
一般の延納相続税額(不動産割合50%未満) 50%未満 5年 6.0% 1.4%

※特例割合は、特例基準割合が年0.9%の場合(2024年時点)の目安です。特例基準割合は毎年国税庁が告示するため、最新の数値は国税庁のウェブサイトでご確認ください。実際の利子税率は「本来の利子税率×(特例基準割合÷7.3%)」で計算されます。

特例基準割合が低い現状では、実際に適用される特例割合は上記の通り1%前後にとどまることが多く、市中銀行の住宅ローン金利と同程度かそれ以下となっています。延納の利子税率が「高い」と感じる方もいますが、特例が適用されると実質的な負担は思ったより小さいケースもあります。

延納利子税の計算例として、相続税1,000万円(不動産割合75%以上)を延納20年で分割する場合、年間の元本返済額は50万円です。特例割合0.8%であれば、1年目の利子税は1,000万円×0.8%=8万円です。2年目以降は残高に応じて利子税が減っていきます。

物納とはどのような制度か

物納の基本的な仕組み

物納(ぶつのう)とは、相続税を金銭の代わりに相続財産そのもので納付する制度です(相続税法第41条)。相続した不動産・株式などを現金化することなく、その財産を国(税務署)に引き渡すことで相続税の支払いに充てます。

物納は、延納によっても金銭での納付が困難な場合にのみ認められる制度です。つまり、物納を申請する前提として「延納でも対応できない」という状況が必要です。

物納に充てられた財産は、国(財務省)が管理・処分します。物納した財産は完全に国のものとなり、後で買い戻すことはできません。この点は延納と大きく異なります。

物納のメリットは、手元に現金がなくても財産を引き渡すことで税金の支払いが完了する点です。ただし、財産を失うことになるため、慎重な判断が求められます。

物納が許可されると、不動産であれば所有権移転登記が行われ、財産は国のものになります。その後、国(財務省理財局)が財産を売却・活用します。物納財産を後から買い戻す制度(一般競争入札等への参加)は可能ですが、物納時の価格での買い戻しは認められていません。

物納できる財産の優先順位

物納に充てられる財産には、法律で定められた優先順位(物納適格財産の順位)があります(相続税法第41条第2項)。

順位 財産の種類 備考
第1順位 不動産・船舶・国債証券・地方債証券・上場株式等 管理処分が容易なもの優先
第2順位 非上場株式等(特定登録美術品を除く) 管理処分が困難なため第2順位
第3順位 動産(自動車・機械・器具・書画骨董等) 管理処分がさらに困難

不動産は第1順位ですが、すべての不動産が物納できるわけではありません。以下のような「物納劣後財産」は、他に物納できる財産がない場合に限り物納が認められます。

  • 抵当権などの担保が設定されている不動産
  • 境界が未確定の土地
  • 他人が使用中の動産(占有されている物)
  • 係争中の不動産
  • 法令の定める制限があり管理処分が困難な不動産

境界未確定の土地や抵当権付き不動産は物納が難しくなります。物納を予定している場合は、早めに土地の境界確定作業や担保解除の手続きを進めておくことが重要です。

物納が認められる条件

物納が認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 延納によっても金銭での納付が困難であること
  • 物納しようとする財産が、相続等によって取得した財産であること
  • 物納に充てようとする財産が物納適格財産であること
  • 物納申請書・物納手続関係書類を申告期限内に提出していること

物納申請に必要な書類は非常に多く、不動産の場合は登記事項証明書・固定資産評価証明書・地積測量図・境界確認書など多数の書類が必要です。書類の準備に時間がかかるため、物納を検討している場合は税理士に早めに相談することをお勧めします。

また、提出された書類に不備があった場合、税務署から「補完通知」が届きます。補完期間は最長1年間ですが、この間に書類が整わない場合は物納申請が却下されます。補完通知が届いたら迅速に対応することが重要です。

延納と物納の比較——どちらを選ぶべきか

延納と物納はいずれも相続税の納付困難な場合の救済制度ですが、性質・メリット・デメリットが異なります。どちらを選ぶかは、手元の流動性・財産の種類・将来のキャッシュフローを総合的に考えて判断する必要があります。

比較項目 延納 物納
納付方法 分割して現金で納付 財産そのもので納付
財産を手放すか 手放さない 手放す(国に引き渡す)
利子税・手数料 利子税(年1%前後〜6%)が発生 利子税は発生しない
担保 必要(条件による) 財産自体が担保代わり
申請条件の難易 比較的認められやすい 延納不可が前提・審査が厳しい
適した状況 毎年一定の収入がある・将来財産を売却できる見込みがある 毎年の収入が少ない・使い道のない不動産がある
手続き書類 比較的少ない 非常に多い(不動産の場合)
財産評価 相続税評価額で計算 相続税評価額で物納充当(時価と乖離することも)

物納の大きなデメリットは、時価と相続税評価額が乖離している場合に損をする可能性がある点です。例えば、時価3,000万円の土地でも相続税評価額が2,000万円であれば、物納で充当できる金額は2,000万円分にとどまります。時価で売却すれば3,000万円が手に入るところ、物納では2,000万円分の納税にしかなりません。この差額は「物納のコスト」ともいえます。

一方、延納は財産を手放さずに済みますが、毎年の分割払い(元本+利子税)を続ける収入・現金が必要です。賃貸収入のある不動産や、将来的に売却を予定している財産がある場合は、延納を選んで分割払いを続けながら余裕ができた時点で一括返済するという方法も選択肢の一つです。

どちらを選ぶかの判断は、将来のキャッシュフロー予測・財産の時価と相続税評価額の差・延納利子税の総額・物納財産の売却価値などを総合的に試算する必要があります。税理士に依頼してシミュレーションを出してもらうことを強くお勧めします。

延納・物納の申請手続きの流れ

延納の申請手続き

延納の申請は、相続税の申告と同時(または申告期限内)に行います。以下の書類を税務署に提出します。

  1. 相続税延納申請書(国税庁様式)
  2. 金銭納付困難理由書
  3. 担保提供書(担保が必要な場合)
  4. 担保目録・担保に関する書類(登記事項証明書等)

提出後、税務署が申請内容を審査し、許可・却下の通知が行われます。審査期間は申請の内容・税務署の状況によって異なりますが、数か月かかることもあります。許可後は税務署から送付される納付書に基づき、分割払いを行います。

延納の申請後も、分割払いが困難になった場合は延納条件の変更申請が可能です。また、途中でまとまった資金ができた場合は、残額を一括で納付(繰り上げ返済)することもできます。延納条件の変更は「延納条件変更申請書」を税務署に提出して行います。生活状況の変化や収入の増減によって延納が困難になった場合は、早めに税務署または税理士に相談することが重要です。

物納の申請手続き

物納の申請も申告期限内に行う必要があります。必要書類は延納より大幅に多く、以下のようなものが含まれます。

  1. 相続税物納申請書
  2. 物納手続関係書類(財産の種類により異なる)
  3. 不動産の場合:登記事項証明書・固定資産評価証明書・地積測量図・境界確認書・建物図面等
  4. 上場株式の場合:残高証明書・株式の評価明細書等

書類の不備があると補正を求められ、最終的に不許可になるリスクもあります。物納を検討している場合は、税理士または弁護士に依頼して書類を整備することが強く勧められます。

税務署による審査の結果、物納が許可されると、財産の引き渡し手続きが行われます。不動産の場合は所有権移転登記が行われ、その時点で物納財産は国のものとなります。

申請後に書類の補正・追加提出が必要な場合は「物納補完期間」(最長1年)が設けられます。この期間内に書類が整わない場合は物納が却下される可能性があるため、早めの準備が不可欠です。物納の書類準備は、境界確定の測量だけでも数か月かかることがあるため、物納を検討しているならば相続発生後できる限り早く着手することが重要です。

延納・物納が認められないケース

延納・物納はすべての人に認められるわけではありません。以下のような状況では申請が却下される可能性があります。

延納が認められないケース

延納は「金銭で一時に納付することが困難」であることが前提です。そのため、相続財産に十分な預貯金・有価証券・生命保険金・退職手当金などの流動性の高い財産がある場合は、「金銭納付困難」とは認められません。

たとえ不動産が多くても、手元に納税額を超える現金・預貯金があれば延納は原則として認められません。また、担保として提供できる財産がない場合(延納税額が100万円超・延納期間が3年超の場合)も、延納が難しくなります。

申請書や金銭納付困難理由書の記載が不十分・不正確な場合も却下の原因になります。税理士のサポートのもとで正確な書類を用意することが重要です。

延納が却下された場合、本来の申告期限から延滞税が課される可能性があります。延納申請書の提出だけでは延滞税の発生を完全に防げないケースもあるため、申請前に税理士と十分に相談することが大切です。

物納が認められないケース

物納が却下される主なケースは以下のとおりです。

  • 延納でも金銭納付が困難であることが証明できない場合
  • 物納しようとする財産が物納適格財産でない場合(抵当権付き・境界未確定等)
  • 申請書類が期限内に揃わない場合
  • 財産が物納補完期間内に適格財産に整えられない場合

物納の申請後に「補完を求める通知」が来た場合は、期限(補完期間1年以内)内に速やかに対応してください。放置すると物納が却下され、延滞税が発生します。

相続税の納税猶予制度(農地・非上場株式の特例)

延納・物納とは別に、相続税法では特定の財産について「納税猶予制度」が設けられています。農地と非上場株式が代表的で、それぞれ一定条件を満たすことで相続税の一部または全部の支払いを猶予(場合によっては免除)することができます。

農地等の相続税の納税猶予(農業継続の場合)

農業を営む方が農地を相続した場合、農業経営を引き継ぐことを条件に、農地の農業投資価格を超える部分に係る相続税の納税が猶予されます(租税特別措置法第70条の6)。農業経営を継続している限り猶予が続き、一定の要件を満たすと猶予税額が免除されることもあります。

農業を辞めた場合や農地を売却した場合には猶予が打ち切られ、猶予されていた税額と利子税を一括で納付する必要があります。農地の納税猶予は、農業を継続する意思と実績が前提となります。適用を受けるためには相続税の申告期限(10か月以内)に申告書と「農業相続人の営農継続等証明書」等を提出する必要があります。

非上場株式等の相続税の納税猶予(事業承継税制)

中小企業の後継者が非上場株式を相続した場合、事業承継税制(租税特別措置法第70条の7の2など)を活用することで、一定株数に係る相続税の80%または全部の納税猶予を受けられる場合があります。

後継者が一定期間(5年間)事業を継続することが条件で、条件を満たし続ければ猶予が継続します。一般措置と特例措置(2027年12月31日が申請期限)があり、特例措置の方が要件が緩和されています。事業承継税制の適用を検討する場合は、早めに税理士や事業承継専門家に相談することが重要です。

事業承継税制の特例措置(特例承継計画の提出期限は2026年3月31日、適用申請期限は2027年12月31日)は期限が設けられているため、早めの準備が必要です。特例措置を適用することで、後継者の相続税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

現金が不足している場合の資金調達の他の方法

延納・物納以外にも、相続税の納税資金を確保する方法はいくつかあります。状況に応じて検討してみてください。

不動産の売却

相続した不動産の一部または全部を売却して相続税の納税資金に充てる方法です。早期売却を余儀なくされると市場価格より低い価格での売却になりやすいため、できるだけ時間的余裕を持って動くことが大切です。

不動産の売却には通常3か月〜半年以上かかることもあります。申告期限の10か月以内に売却が間に合わない場合でも、売却手続きを進めながら延納を申請するという方法もあります。売却資金が入ったタイミングで延納の残額を一括返済することで、利子税の負担を軽減できます。

また、相続した不動産を売却した場合の譲渡所得税についても注意が必要です。相続取得後3年10か月以内の売却であれば、相続税の一部を取得費に加算できる「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」(相続税の取得費加算)が適用できる場合があります。税理士に相談の上、売却のタイミングを検討することをお勧めします。

金融機関からの借入

銀行や信用金庫から相続税の納税資金として融資を受ける方法です。相続した不動産を担保とすることで融資を受けやすくなる場合があります。延納の利子税より低い金利で借りられる場合は、借入による納税の方が総コストを抑えられることもあります。

ただし、金融機関の融資審査に時間がかかることや、担保評価によって希望額が借りられない場合もある点に注意が必要です。また、金融機関からの借入は返済義務があり、返済できない場合には担保不動産が競売にかけられるリスクもあります。

生命保険金・退職手当金の活用

被相続人が生命保険に加入していた場合、死亡保険金は相続税の申告・納税資金として活用できます。生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、一定額(500万円×法定相続人の数)が非課税となります。相続税の資金対策として、生前に生命保険を活用することは相続の事前準備として有効な方法の一つとされています。

生命保険金は被相続人の死亡後、比較的早い段階で保険会社から支払われるため、納税資金として機能しやすいという特性があります。相続税の納税資金確保の観点から、生命保険の活用は生前から検討しておく価値があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 延納の申請をしたら必ず許可されますか?

申請すれば必ず許可されるわけではありません。税務署が「金銭納付困難」の要件を満たしているかどうかを審査し、要件を満たさないと判断した場合は却下されます。却下された場合は一括納付が求められ、期限を過ぎると延滞税が発生します。申請前に税理士に相談して、要件を満たしているかどうかを確認した上で申請することをお勧めします。申請書類の記載内容が正確であることも許可を得るための重要な要素です。

Q2. 延納中に収入が増えた場合、残額を一括返済できますか?

延納中に資金が確保できた場合、残りの延納税額を一括で繰り上げ納付することができます。繰り上げ納付した場合、その後の利子税の発生は止まります。繰り上げ納付の手続きは税務署に申し出て行います。毎年の分割払いが続く中で、例えば不動産を売却した資金が入った場合などに活用する方が多い方法です。

Q3. 物納した財産の評価額はどのように決まりますか?

物納に充当される財産は、相続税の計算に使った「相続税評価額」で計算されます。時価(市場価格)ではなく相続税評価額が基準となるため、土地の路線価評価額が時価より低い場合は、時価より少ない金額の相続税しか充当できないことになります。一方、路線価評価額が時価に近い場合は時価売却と大きく変わりません。物納を選ぶ前に、時価売却と物納のどちらが有利かを税理士に試算してもらうことをお勧めします。

Q4. 延納の申請は相続人全員で行う必要がありますか?

延納の申請は、相続人ごとに個別に行います。各相続人は自分が納付すべき相続税について、それぞれ延納の申請を行うことができます。ある相続人が延納を選び、別の相続人が一括納付を選ぶことも可能です。延納・物納は共同申請ではなく、各相続人が個別に判断する制度です。

Q5. 相続税の延納中に担保として提供した不動産を売却できますか?

延納の担保として提供した不動産は、原則として税務署の承認なしに売却することができません。担保が必要な状態(延納中)で担保不動産を売却するには、税務署に対して「担保の変更申請」を行い、代わりの担保を提供する必要があります。担保変更が認められれば売却が可能ですが、新たな担保として税務署が認める財産が必要です。売却を検討している場合は事前に税務署または税理士に相談してください。

Q6. 物納できる財産がない場合はどうすればよいですか?

物納適格財産がない、あるいは物納の要件を満たせない場合は、延納・借入・不動産売却など他の方法で納税資金を確保する必要があります。どの方法もすぐに対応できない場合は、税務署への事前相談をお勧めします。正当な理由がある場合に限り、一定の配慮がなされることもあります。いずれにせよ、期限を過ぎてから動くと延滞税が発生するため、早めの行動が重要です。

まとめ

相続税の延納と物納は、現金が不足している場合の有力な選択肢です。ただし、いずれも申請要件を満たす必要があり、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)内に申請を完了させなければなりません。

延納は、最長20年の分割払いで相続財産を手放さずに納税できる制度です。利子税は現在の特例基準割合が低い環境では1%前後の実質負担にとどまるケースも多く、金融機関の借入と比較検討してみる価値があります。毎年一定の収入がある方や将来的に財産を換金できる見通しがある方に適しています。

物納は、延納でも金銭納付が困難な場合の最終手段といえる制度です。財産を国に引き渡すことで相続税が完済されますが、相続税評価額と時価の乖離によって損をするケースもあるため、時価売却と比較した上で判断することが重要です。申請に必要な書類が多く、準備に時間がかかる点も注意が必要です。

農地を相続した農業後継者や、非上場株式を相続した中小企業後継者には、納税猶予制度という別の選択肢もあります。特例措置には申請期限があるため、早めに専門家に相談することをお勧めします。

延納・物納以外の資金調達手段として、不動産の売却・金融機関からの借入・生命保険金の活用なども検討に値します。どの方法が最も有利かは、相続財産の構成・将来のキャッシュフロー・税負担の試算を総合的に行った上で判断することが大切です。

いずれの方法を選ぶにせよ、相続税の申告・納税は複雑で専門的な知識を要します。税理士への相談は、早ければ早いほど選択肢が広がります。10か月という期限が迫っている方は、できるだけ早く税理士に相談し、自身の状況に合った最善の方法を検討してください。

※本記事は2024年時点の国税庁の情報を参考に作成しています。税制は改正されることがあるため、申告・申請の際には必ず最新の情報を国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp)でご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。

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