墓じまいの手順と費用相場|改葬許可・業者選び・トラブル防止まで

「後継者がいない」「遠方に引っ越して墓参りができない」「管理費の負担が重くなった」——そうした理由から、近年墓じまいを検討されるご家族が増えています。厚生労働省の調査でも、改葬件数は年々増加傾向にあると報告されており、現代の墓地事情を反映した動きとなっています。

ただし墓じまいは、ただ墓石を撤去するだけでなく、改葬許可の取得・菩提寺との交渉・遺骨の移転・各種手続きなど、複数のステップが絡み合う作業です。手順を知らないままに進めると、親族間でもめたり、寺院とのトラブルに発展したりするケースも報告されています。

この記事では、墓じまいを検討している方に向けて、以下の内容を詳しく解説します。

  • 墓じまいとは何か・改葬との違い
  • 墓じまいの手順(全7ステップ)
  • 費用の相場と内訳
  • 改葬許可証の取り方
  • 業者の選び方・注意点
  • 寺院・親族とのトラブル防止策
  • 遺骨の移転先の選択肢
目次

墓じまいとは?改葬との違いをわかりやすく解説

「墓じまい」という言葉は広く使われていますが、法律用語としての正確な定義と、混同されやすい「改葬」との違いを確認しておきましょう。

墓じまいの定義

墓じまいとは、一般的に「現在のお墓を閉じ、墓石を撤去して更地に戻し、埋葬されていた遺骨を別の場所に移すこと」を指します。

手順としては、①閉眼供養(魂抜き)を行い、②改葬許可を取得し、③遺骨を取り出して新しい供養先へ移し、④墓石を解体・撤去して墓地を返還する——という流れが基本とされています。

墓じまいは「墓石を撤去すること」だけを指すのではなく、遺骨の新たな安置先を確保することと一体です。遺骨の行き先を決めずに墓石だけ撤去することは、法律上も現実的にも望ましくありません。

改葬との違い

「改葬(かいそう)」は、墓地埋葬等に関する法律(墓埋法)に定められた法的な手続きの名称で、「埋葬された遺骨を別の場所に移すこと」を意味します。

用語 意味 法的根拠
墓じまい お墓を閉じて墓石を撤去すること(一般的な呼び名) 一般用語(法律用語ではない)
改葬 埋葬された遺骨を別の場所に移すこと 墓地、埋葬等に関する法律第2条

墓じまいをするためには、法律上の「改葬」手続きが必要です。改葬許可証を取得せずに遺骨を移動させることは、墓埋法違反となる可能性があります。

「墓じまい=改葬手続きが必要」という認識を最初に持っておくことで、手順を踏み飛ばすリスクを避けられます。

墓じまいが増えている背景

近年、墓じまいの件数が増加しているのには、いくつかの社会的な背景があります。

  • 少子化・核家族化:後継者がおらず、管理できる人がいなくなった
  • 地方から都市への人口移動:故郷のお墓が遠くなり、墓参りが困難になった
  • 管理費・年間費用の負担:経済的な理由から維持が難しくなった
  • 宗教観の変化:特定の宗派への帰属意識が薄れてきた
  • 終活意識の高まり:自分の代できれいに整理しておきたいという考え方の広まり

墓じまいは「先祖を粗末にする」行為ではなく、現代の生活実態に合わせた形で、遺骨を適切に供養し続けるための選択肢のひとつとして捉えられるようになっています。

墓じまいを行う前に知っておくべきこと

墓じまいを始める前に、まず確認・準備しておくべき重要なポイントがあります。後になってトラブルになりやすいのがこのフェーズです。

祭祀承継者の確認

お墓は「祭祀財産」として民法第897条に規定されており、慣習・遺言・家族間の協議によって祭祀承継者(さいしくしょうけいしゃ)が定まります。祭祀承継者はお墓の管理権を持ち、墓じまいを進める主体となります。

祭祀承継者が誰かを明確にしないまま手続きを進めると、他の親族から「勝手に進めた」と問題になることがあります。まず家族・親族間で「誰が責任者として進めるか」を確認・共有することが重要です。

民法上は祭祀承継者が単独で手続きを行うことができますが、親族間の感情的なすれ違いを防ぐためにも、事前の相談・同意取りつけが強く推奨されます。

親族・家族への事前相談

墓じまいは、お墓に眠る先祖への思いが絡む問題です。「自分一人で決めた」という状況が後から親族関係を壊すケースが多く報告されています。特に以下の方への事前相談は欠かせません。

  • 故人の配偶者・子ども(存命の場合)
  • 兄弟・姉妹
  • 普段から墓参りをしてきた親族
  • 菩提寺・寺院の檀家になっている親族

反対意見が出た場合も、頭ごなしに押し切るのではなく、「管理が難しい理由」「新しい供養先での丁寧な供養の見込み」を丁寧に説明する時間を取りましょう。

菩提寺・墓地管理者への事前相談

寺院墓地の場合、菩提寺への事前相談が必須です。突然「墓じまいをしたい」と言うのではなく、まず住職に相談し、理解を求めるプロセスを踏むことがトラブル回避の基本です。

「離檀料(りだんりょう)」を求められるケースがありますが、これは法律上の義務ではありません(支払い義務はないとされています)。ただし長年の檀家関係への感謝として、相応のお布施を包む方も多くいます。金額に迷う場合は、地域の慣習や他の檀家の事例などを参考に、納得できる範囲でお伝えするとよいでしょう。

墓じまいの手順(全7ステップ)

実際の墓じまいの流れを7つのステップで解説します。

STEP 1:遺骨の移転先(新しい供養先)を決める

墓じまいで最初に決めるべきことは、遺骨をどこに移すかです。改葬許可の申請には「受け入れ先の証明書」が必要なため、先に受け入れ先を確定させる必要があります。

主な選択肢は次のとおりです(後の章で詳しく解説)。

  • 永代供養墓(合祀墓・個別墓)
  • 納骨堂
  • 樹木葬
  • 散骨(海洋散骨等)
  • 手元供養
  • 別の一般墓(新たにお墓を建てる)

受け入れ先が決まったら、その施設・寺院から「受入証明書(受け入れ許可書)」を発行してもらいます。

STEP 2:現在の墓地管理者(寺院・霊園)に相談・承認を得る

現在のお墓の管理者(寺院の住職・霊園の管理事務所)に、墓じまいの意向を伝えます。寺院の場合は閉眼供養の日程調整も含めて相談します。

管理者から「埋葬証明書(改葬証明書)」を発行してもらう必要があります。この書類が改葬許可申請に必要です。

管理者への連絡を後回しにすると、必要書類の発行が遅れて手続き全体が滞ります。受け入れ先が決まったら早めに現在の管理者にも連絡することが重要です。

STEP 3:改葬許可証を取得する

現在のお墓がある市区町村の役所(担当窓口)に「改葬許可申請書」を提出し、改葬許可証を取得します。

必要書類の一般的な例は以下のとおりです(市区町村によって異なる場合があります)。

書類名 入手先
改葬許可申請書 市区町村役所(窓口・ウェブサイト)
埋葬証明書(現在の墓地管理者が発行) 現在の寺院・霊園の管理者
受入証明書(新しい受け入れ先が発行) 移転先の寺院・霊園・業者

手数料は市区町村によって異なりますが、数百円程度とされているケースが多いとされています。申請から許可証の発行まで数日〜1週間程度かかることもあるため、早めに手続きを始めましょう。

改葬許可証なしに遺骨を移動させることは、墓地埋葬等に関する法律に違反する可能性があります。必ず取得してから遺骨を移動させましょう。

STEP 4:閉眼供養(魂抜き)を行う

墓石の解体・撤去前に、閉眼供養(へいがんくよう)または「魂抜き(たましいぬき)」と呼ばれる法要を行います。これはお墓に宿った魂を抜く儀式とされており、仏式では僧侶に読経をお願いするのが一般的です。

神式では「遷霊祭(せんれいさい)」に相当する儀式が行われます。キリスト教では同様の概念はないことが多いですが、牧師・神父への相談をされる方もいます。

閉眼供養のお布施の目安は、地域・宗派・寺院によって大きく異なりますが、3万〜10万円程度とされているケースが多いとされています。事前にお寺に確認するのが最も確実です。

STEP 5:遺骨の取り出し

閉眼供養の後、墓石を解体する前に遺骨を取り出します。石材店(墓石撤去業者)が作業を進める前に、遺骨の取り出しを先に行うのが一般的です。

遺骨は骨壺に入れてお持ち帰りします。複数の方の遺骨が同じ墓に収められている場合、それぞれの識別が必要になることもあります。誰の遺骨かわからなくなった場合の判別は難しいため、作業は慎重に進めましょう。

STEP 6:墓石の解体・撤去と墓地の返還

石材店に依頼して墓石を解体・撤去し、墓地を更地に戻します。この作業が「墓じまい」として最もイメージしやすい工程ですが、費用も最も大きくなりやすい部分です。

撤去後は、墓地の管理者(寺院・霊園・市区町村)に区画を返還します。返還時に必要な書類・手続きは管理者によって異なります。

STEP 7:遺骨を新しい供養先に納める

取り出した遺骨を、あらかじめ決めておいた新しい供養先(永代供養墓・納骨堂・樹木葬地等)に納骨します。改葬許可証を新しい受け入れ先の管理者に提出します。

以上で墓じまいの一連の手順が完了です。最後に親族・家族に完了のご報告をするとよいでしょう。

墓じまいの費用相場と内訳

墓じまいにかかる費用は、複数の項目の合計となります。一般的な費用の目安を整理します。

費用の主な内訳

費用の項目 目安金額 備考
閉眼供養のお布施 3万〜10万円程度 寺院・宗派によって異なる
墓石の解体・撤去費用 10万〜50万円程度 墓の大きさ・立地・石材量による
改葬許可申請の手数料 数百円〜1,500円程度 市区町村によって異なる
遺骨の運搬費用 〜数万円程度 業者に依頼する場合
永代供養・納骨堂等への移転費用 5万〜100万円以上 供養形態・場所によって大幅に異なる
離檀料(任意) 0〜30万円程度 法律上の義務はない。感謝の気持ちとして包む場合もある

合計すると30万〜200万円程度が一般的な費用の幅とされていますが、墓の規模・立地・選ぶ供養先によって大きく変わります。

墓じまいは「一括で頼める業者」に丸投げできる便利さがある反面、費用が割高になるケースもあります。各工程を個別に手配することで費用を抑えられる場合もあるため、見積もりを複数取ることが重要です。

費用を抑えるためのポイント

費用を少しでも抑えたい場合、以下のポイントを参考にされてみてください。

  • 石材店は複数から相見積もりを取る:撤去費用は業者によって差が大きい
  • 供養先は永代供養の合祀型を選ぶ:個別区画より費用が抑えられやすい
  • 離檀料は交渉できることもある:法的義務はないため、過大な請求には冷静に対応する
  • 「墓じまい一括サービス」の内訳を確認する:何が含まれているかを必ず確認する

費用の安さだけで業者を選ぶと、追加費用が後から発生するケースが報告されています。契約前に見積もりの内訳と追加費用の有無を必ず書面で確認しましょう。

遺骨の移転先の種類と特徴

墓じまい後の遺骨をどこに移すかは、家族の状況や考え方によって選択肢が変わります。主な選択肢をまとめます。

永代供養墓(ごうしぼ・合祀墓)

永代供養墓は、寺院・霊園が永続的に管理・供養を行うタイプのお墓です。後継者が不要なため、「子供に負担をかけたくない」「後継者がいない」という方に多く選ばれています。

「合祀型(ごうしがた)」は複数の遺骨を一緒に埋葬するタイプで、費用は比較的抑えられますが、一度合祀すると遺骨を取り出すことはできません。「個別型」は一定期間個別に保管した後に合祀するタイプで、費用はやや高めとなります。

納骨堂

納骨堂は、建物の中に遺骨を安置する施設です。屋内のため天候を問わずお参りでき、都市部にも多く立地しています。ロッカー型・仏壇型・自動搬送型(機械式)など種類が豊富です。年間管理費が発生する場合が多く、施設の経営状況にも注意が必要です。

樹木葬

樹木葬は、樹木を墓標として遺骨を埋葬する形式です。自然の中に眠れるとして近年人気が高まっています。里山型・霊園型・公園型などがあり、費用・立地・管理体制が多様です。

「樹木葬=散骨」と誤解されることがありますが、多くの樹木葬は墓地として許可を受けた区画に埋葬するものであり、散骨とは異なります。

散骨

散骨は、遺骨を粉末状(粉骨)にして、海や山などに撒く方法です。日本では現在のところ散骨を直接禁止する法律はありませんが、節度ある方法で行うことが求められています。専門の散骨業者に依頼するのが一般的です。

散骨は後から遺骨を取り出せないため、全遺骨を散骨するか、一部を手元供養として残すかを家族で相談してから決めることをお勧めします。

手元供養

手元供養は、遺骨の一部または全部を自宅で保管・供養する方法です。遺骨をペンダントやリングなどのアクセサリーに加工する「メモリアルジュエリー」なども広まっています。

手元供養は法律上の制限が少ない方法ですが、保管場所・継承者の問題が将来的に生じることもあります。

業者の選び方と悪質業者への注意点

墓じまいには複数の専門業者が関わります。それぞれの役割と選び方を確認しておきましょう。

関わる業者の種類

業者の種類 主な役割
石材店・墓石撤去業者 墓石の解体・撤去・更地化
葬儀社 墓じまい一式のコーディネート(閉眼供養手配含む)
墓じまい専門業者 手続き代行・石材手配・遺骨移転の一括サポート
行政書士 改葬許可申請の代行

信頼できる業者を選ぶポイント

業者選びで確認すべき主なポイントは以下のとおりです。

  • 見積もりを書面で出してくれるか:口頭のみの業者は後からトラブルになりやすい
  • 追加費用の有無を明示してくれるか:「追加費用一切なし」と書面で確認できるか
  • 実績・口コミが確認できるか:地域の評判や実際の利用者の声を確認する
  • 資格・許可の有無:墓地の管理に関する許可を持っているか
  • 相見積もりを嫌がらないか:比較検討を嫌がる業者には注意が必要

「今すぐ決めないと損」などの急かし営業には応じないことが重要です。墓じまいは一度進めると元に戻せないため、慌てず複数業者を比較する時間を取ることをお勧めします。

悪質業者・トラブルのパターン

墓じまい関連では、以下のようなトラブルが報告されています。注意しましょう。

  • 見積もり後に大幅な追加費用を請求された
  • 撤去後に墓地を更地に戻さず、不完全な状態のままにされた
  • 遺骨の取り扱いが雑で、骨壺が破損した
  • 「寺院との交渉を代行する」と言いながら、交渉せずに高額費用を請求した

国民生活センターや消費生活センターにも墓じまい関連の相談が寄せられています。被害にあった場合は早めに相談窓口に連絡することをお勧めします。

寺院・親族とのトラブルを防ぐための対策

墓じまいで最もトラブルが起きやすいのが、寺院との離檀交渉と親族間の合意形成です。

離檀料トラブルへの対処

菩提寺が「高額な離檀料を払わないと遺骨を渡さない」「改葬証明書を発行しない」などと言ってくることがあります。

法律上、寺院は改葬証明書の発行を拒否できないとされており、不当な高額離檀料を強制的に支払う義務はありません(ただし、檀家規則・寺院との契約内容によって異なる場合があります)。

こうした場面では、冷静に「法律上の権利」を確認しつつ、できる限り関係を壊さない形での対話を続けることが望まれます。解決が難しい場合は弁護士・行政書士への相談も検討できます。

親族間の意見の相違への対処

墓じまいに反対する親族がいる場合、強引に進めることは関係悪化を招きます。以下の対処法が有効とされています。

  • 反対理由を丁寧に聞き、感情に寄り添った対話をする
  • 新しい供養先を一緒に見学し、丁寧に供養されることを理解してもらう
  • 法要の日程や方法を親族全員で決める(当事者意識を持ってもらう)
  • 時間をかけて合意形成をする(急ぎ過ぎない)

「後継者がいないから仕方ない」ではなく、「次の世代の人々が適切に供養を続けられる形を整えること」として墓じまいを提案すると、理解を得やすいとされています。

墓じまいに関するよくある質問(FAQ)

Q: 墓じまいの費用はどのくらいかかりますか?

A: 墓じまい全体にかかる費用は、一般的に30万〜200万円程度と幅広いとされています。主な内訳は「閉眼供養のお布施(3万〜10万円程度)」「墓石の撤去・解体費用(10万〜50万円程度)」「改葬許可の手数料(数百円程度)」「遺骨の新たな供養先(永代供養・散骨等)の費用」などです。墓の大きさ・立地・業者によって大きく変わるため、複数業者から見積もりを取ることが重要です。

Q: 墓じまいに親族の同意は必要ですか?

A: 法律上は祭祀承継者(お墓の管理者)が単独で手続きを進めることができますが、親族間のトラブルを防ぐためにも、事前に家族・親族全員に相談・同意を得ることが強く推奨されます。特に遠方に暮らす親族には連絡が遅れがちですが、早めに共有することが大切です。強引に進めると後から関係悪化につながることがあります。

Q: 改葬許可証はどこで取得できますか?

A: 改葬許可証は、現在お墓がある市区町村の役所(担当窓口:環境衛生課など)で取得します。申請には「改葬許可申請書」のほか、現在の墓地管理者(寺院・霊園)が発行する埋葬証明書や、新しい受け入れ先の証明書が必要となるのが一般的です。手数料は数百円程度のケースが多いとされています。申請書の書式は市区町村によって異なるため、事前に窓口で確認することをお勧めします。

Q: 墓じまい後の遺骨はどうすればよいですか?

A: 墓じまい後の遺骨の主な行き先として、永代供養墓(合祀墓・個別墓)、納骨堂、樹木葬、散骨(海洋散骨等)、手元供養などがあります。永代供養は管理を寺院・霊園に任せるため、後継者がいない方や管理の手間を省きたい方に選ばれることが多いとされています。費用・立地・宗教的な考え方を家族で話し合い、納得のいく選択をされることをお勧めします。

Q: 墓じまいで寺院ともめないためにはどうすればよいですか?

A: 寺院との円満な関係維持のために、まず住職に墓じまいの相談を早めに(できれば半年〜1年前から)することが大切です。「離檀料」を求められることもありますが、法律上の支払い義務はないとされています。ただし長年の檀家関係への感謝として、相応のお布施を包む方も多くいます。交渉がうまくいかない場合は、第三者(墓じまい専門業者・行政書士・弁護士)への相談も選択肢のひとつです。

墓じまいの際に知っておきたい法律・制度の基礎知識

墓じまい・改葬に関係する法律の基本を押さえておくと、手続きに迷いが減ります。

墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)の概要

墓じまい・改葬の手続きの根拠となる法律が、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)」、通称「墓埋法」です。この法律は、墓地の設置・管理・埋葬方法・改葬手続きなどを定めています。

改葬に関しては第5条に規定があり、「埋葬し、又は埋蔵されている死体(遺骨を含む)を他の墳墓又は納骨堂に移すことを改葬という」と定義されています。改葬を行う場合は、市区町村長の許可(改葬許可証)が必要とされています。

無許可で遺骨を移動させた場合、法律上の問題が生じる可能性があります。手続きを省略しないことが大切です。

散骨に関する法的な考え方

散骨は日本では現時点で直接禁止する法律がない一方、遺骨を「遺棄」とみなされる行為は刑法に抵触する可能性が指摘されています。節度ある方法で行うことが求められており、専門業者に依頼するのが安心です。

また、自治体によっては散骨を制限・禁止する条例が設けられているケースもあります(長野県諏訪市など)。希望する海域や場所が制限区域に該当していないか、事前に確認することをお勧めします。

祭祀財産としてのお墓の法的位置づけ

お墓は民法第897条に規定される「祭祀財産」に分類されます。相続財産とは異なり、祭祀承継者が単独で管理権を持つとされています。祭祀承継者は遺言・慣習・家族間の協議によって決まります。

「お墓の名義は誰か」「誰が祭祀承継者か」を明確にしておくことが、墓じまいをスムーズに進める上で重要です。

墓じまい後の「心の整理」について

墓じまいは手続き上の作業だけでなく、先祖への思いや家族の歴史と向き合う心理的なプロセスでもあります。

「罰当たり」という心理的な抵抗について

墓じまいを検討する際、「先祖に申し訳ない」「罰当たりではないか」という気持ちを持たれる方は少なくありません。特に高齢の親御さんや親族から反対意見が出ることもあります。

しかし、墓じまいは「供養をやめること」ではなく、「供養の形を変えること」とも言えます。後継者がいない状態で荒れたままになるお墓より、適切に管理された永代供養墓で継続して供養されることを、故人も望んでいるかもしれません。そうした視点で家族・親族に説明すると、理解が得られやすいとされています。

法要・供養の機会を設ける

墓じまいの際に閉眼供養・法要を丁寧に行うことは、遺族自身の「心の区切り」にもなります。「ただ撤去した」という感覚を残さないためにも、法要の場を設け、家族・親族で故人に感謝を伝える機会を持つことが大切とされています。

新しい供養先(永代供養墓・納骨堂など)への納骨の際にも、小規模でも法要を行うことで、気持ちの整理がつくご遺族も多いとされています。

グリーフと墓じまい

大切な人を亡くしてから間もない時期に墓じまいの検討を迫られる場合もあります。悲しみの中での大きな決断は心身に負担がかかります。急ぎの理由がない場合は、十分に気持ちの整理がついてから検討を始めることも選択肢のひとつです。

一方、後継者問題や費用の問題が深刻な場合は、先延ばしにするよりも早めに相談を始めた方がよいこともあります。葬儀社や終活専門家への相談は、決断を急かすためではなく、選択肢を整理するためのものとして活用されることをお勧めします。

ケース別:こんな時どうする?墓じまいの判断基準

墓じまいを検討する状況はさまざまです。ケース別に判断の目安を整理します。

ケース1:後継者がいない・見つからない場合

後継者問題は墓じまいの最も多い理由のひとつです。子どもがいない・子どもに継がせたくない・地方のお墓を都市在住の子どもが継げないなど、状況は多様です。この場合、永代供養墓への移転が有力な選択肢となります。寺院や霊園が永続的に管理・供養するため、後継者を必要としません。

ケース2:遠方で管理が難しい場合

地方のお墓を都市在住の子孫が管理することが難しい場合、自宅近くの納骨堂・永代供養墓への改葬(引っ越し改葬)が選ばれることがあります。管理の手間を省きつつ、より身近な場所でお参りできることがメリットです。

ケース3:経済的な理由で管理費が払えない場合

墓地の年間管理費・寺院の檀家費用が負担になっている場合も、墓じまいの判断材料のひとつです。合祀型の永代供養墓は初期費用が抑えられるケースもあり、長期的な費用負担を軽減できる可能性があります。ただし、一度合祀すると遺骨の取り出しができない点は理解した上で選択することが重要です。

ケース4:無縁墓になりそう・すでに無縁墓になっている場合

長年管理者が現れず無縁墓になったお墓の場合、自治体や墓地管理者が一定の手続きを経て改葬・合祀する場合があります。関係者が現れた場合は、遺骨の引き取りや改葬の手続きが必要になります。詳細は墓地の管理者や市区町村へ相談されることをお勧めします。

まとめ

墓じまいについて、この記事のポイントをまとめます。

  • 墓じまいは「墓石の撤去+遺骨の移転」をセットで行うもの。法的には「改葬」手続きが必要
  • 改葬許可証は、現在のお墓がある市区町村の役所で取得する
  • 費用の目安は30万〜200万円程度。内訳(閉眼供養・撤去・移転先)ごとに複数業者から見積もりを取ることが重要
  • 手順は7ステップ:①移転先決定→②現管理者への相談→③改葬許可取得→④閉眼供養→⑤遺骨取り出し→⑥墓石撤去・返還→⑦新供養先への納骨
  • 寺院との離檀料交渉・親族への事前相談が、トラブル防止の要
  • 遺骨の移転先には永代供養・納骨堂・樹木葬・散骨・手元供養など多くの選択肢がある
  • 業者選びは書面での見積もり・相見積もりが基本。急かし営業には応じないこと

墓じまいは、一度進めると元に戻すことができない大きな決断です。時間をかけて家族・親族と話し合い、すべての関係者が納得できる形で進めることが何より大切とされています。

特に、菩提寺への連絡と親族への事前相談は、後のトラブルを防ぐための最重要ポイントです。お一人で抱え込まず、葬儀社・行政書士・墓じまい専門業者などの専門家に早めに相談されることをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。手続きの詳細は市区町村・菩提寺・専門家にご確認ください。費用・制度は変更される場合があります。本記事は2025年時点の一般的な情報に基づいています。

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