親や配偶者が亡くなり、相続が発生したとき「相続税はいくらかかるのか」「どうやって計算するのか」と不安になる方は多いのではないでしょうか。相続税の計算は複雑に見えますが、基本的な仕組みを理解すれば、全体の流れを把握することができます。
本記事では、相続税の計算方法・基礎控除・税率・申告手続きの流れ・節税対策まで、必要な情報をまとめて解説します。2024年(令和6年)の税制改正にも触れながら、最新の情報をもとに解説していますので、相続税について基礎から知りたい方はぜひ参考にしてください。
- 相続税の基礎控除の計算方法
- 相続税の税率と速算表
- 相続税の申告・納付手続きの流れ
- 不動産・預貯金など財産ごとの評価方法
- 代表的な節税対策と注意点
- 専門家(税理士)に相談すべきタイミング
※本記事は2026年3月時点の法令・税制に基づいています。税制改正により内容が変わることがあります。
相続税とは|課税される仕組みをわかりやすく解説
相続税とは、人が亡くなった際にその人の財産(遺産)を相続した人に対してかかる税金のことです。日本では、相続する財産の価額が一定額(基礎控除額)を超えた場合に限り、相続税の申告・納付義務が生じます。
多くの方が「相続税がかかるのはお金持ちだけ」と思っているかもしれませんが、2015年(平成27年)の税制改正により基礎控除額が引き下げられてからは、課税対象となる方の割合が増加しています。特に地価の高い都市部では、自宅の土地が相続財産の大部分を占め、課税対象になるケースが見られます。
国税庁のデータによると、2022年(令和4年)分の相続税の申告事績では、課税対象となった被相続人数の割合(課税割合)は全国平均で9.6%程度とされています。10人に1人近くが課税対象になっている計算です。
相続税と贈与税の違い
相続税と混同されやすいのが贈与税です。両者の主な違いは「財産の移転タイミング」にあります。
| 項目 | 相続税 | 贈与税 |
|---|---|---|
| 発生タイミング | 亡くなったとき | 生きている間に財産を渡したとき |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 | 年間110万円(暦年課税) |
| 申告期限 | 死亡翌日から10か月以内 | 翌年2月1日〜3月15日 |
| 税率 | 10〜55%(8段階) | 10〜55%(2種類) |
生前に計画的な贈与を行うことで相続財産を減らし、相続税を抑える「生前贈与」は代表的な節税対策の一つです。ただし、2024年の税制改正で相続前の生前贈与の加算期間が3年から7年に延長されるなど、ルールが変わっていますので注意が必要です。
相続税が発生するかどうかの確認方法
まず「相続税がかかるかどうか」を確認するには、以下の流れで判断します。
- 遺産の課税価格の合計額を算出する(相続財産の時価評価)
- 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を計算する
- 遺産の課税価格が基礎控除額を超えているかどうかを確認する
課税価格が基礎控除額以下であれば、原則として相続税はかかりません。申告書の提出も不要です(一部例外あり)。課税価格が基礎控除額を超える場合は、申告・納付が必要になります。
相続税の基礎控除の計算方法
相続税には「基礎控除」があります。これは相続税を計算する前に遺産額から差し引ける金額で、この範囲内であれば相続税はかかりません。
基礎控除額の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額となります。
法定相続人の数の数え方
基礎控除の計算に必要な「法定相続人の数」は、民法で定められた相続人の範囲に基づきます。
| 相続順位 | 法定相続人 | 備考 |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | 婚姻関係にある配偶者 |
| 第1順位 | 子(実子・養子・胎児) | 子が亡くなっている場合は孫(代襲相続) |
| 第2順位 | 直系尊属(父母・祖父母) | 第1順位がいない場合 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 第1・2順位がいない場合 |
基礎控除の計算で注意が必要な点として、相続放棄をした人がいても法定相続人の数には含めてカウントします。また、養子は法定相続人に含まれますが、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までしか法定相続人の数に算入できないルールがあります(租税回避目的の養子縁組への対策)。
基礎控除の具体的な計算例
いくつかの家族構成を例に、基礎控除額を計算してみます。
| 家族構成 | 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|---|
| 配偶者のみ | 1人 | 3,600万円 |
| 配偶者+子1人 | 2人 | 4,200万円 |
| 配偶者+子2人 | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者+子3人 | 4人 | 5,400万円 |
| 子2人(配偶者なし) | 2人 | 4,200万円 |
遺産総額が4,200万円で、法定相続人が配偶者と子1人の2人の場合、基礎控除額4,200万円と同額のため相続税はかかりません。遺産総額が4,300万円であれば、4,300万円-4,200万円=100万円が課税遺産総額となります。
相続税の税率と計算の流れ
基礎控除を差し引いた後の課税遺産総額に対して、相続税の税率が適用されます。ただし、税率は個人の取得金額に直接かけるのではなく、「法定相続分で按分した後の金額に税率を適用する」という独特の計算方法をとります。
相続税の税率表(速算表)
相続税の税率は、取得金額に応じた累進課税で、10%〜55%の8段階に設定されています。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | - |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:国税庁「相続税の税率」(No.4155)
相続税の計算ステップ
相続税の計算は、大きく6つのステップで行います。
- 相続財産の総額(課税価格)を計算する
プラスの財産(現預金・不動産・有価証券など)からマイナスの財産(借金・葬儀費用など)を差し引きます。 - 課税遺産総額を計算する
課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。 - 法定相続分で按分し、各相続人の取得金額を算出する
課税遺産総額を法定相続分(民法で定められた割合)で按分します。 - 各相続人の相続税額を計算する
按分後の金額に税率表を適用し、各相続人の税額を計算します。 - 相続税の総額を求める
各相続人の税額を合計して「相続税の総額」を算出します。 - 実際の取得割合で按分し、各相続人の納税額を確定する
相続税の総額を実際の遺産取得割合で按分し、各人の最終的な納税額を算出します。配偶者控除や未成年者控除などの税額控除もここで適用します。
相続税の計算具体例
遺産総額1億円、法定相続人が配偶者と子2人(合計3人)のケースで計算してみます。
まず基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。課税遺産総額は1億円-4,800万円=5,200万円となります。
次に法定相続分で按分します。配偶者の法定相続分は1/2(2,600万円)、子それぞれの法定相続分は1/4ずつ(各1,300万円)です。
税率を適用すると、配偶者の税額は2,600万円×15%-50万円=340万円、子それぞれの税額は1,300万円×15%-50万円=145万円です。
相続税の総額=340万円+145万円+145万円=630万円となります。これを実際の相続割合で按分して各人の納税額を確定します。配偶者が1/2を相続した場合、配偶者の相続税は315万円ですが、配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い方まで非課税)を適用すると0円になるケースが多いです。
相続財産の評価方法|不動産・預貯金・有価証券
相続税を計算するには、まず相続財産の価額(評価額)を算出する必要があります。財産の種類によって評価方法が異なります。
不動産(土地・建物)の評価方法
不動産は相続財産の中でも評価が複雑な財産の一つです。土地と建物では評価方法が異なります。
土地の評価方法には2つのパターンがあります。
- 路線価方式:市街地など路線価が設定されている地域で適用。「路線価×土地の面積×各種補正率」で計算します。路線価は国税庁のホームページ(財産評価基準書)で毎年7月頃に公開されます。
- 倍率方式:路線価が設定されていない地域(農村部など)で適用。「固定資産税評価額×倍率」で計算します。倍率も国税庁のホームページで確認できます。
建物の評価は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額として使われます。一般的に時価より低い水準になることが多いとされています。
自宅の土地については「小規模宅地等の特例」が適用できるケースがあり、評価額を最大80%減額できる場合があります。この特例は相続税負担を大きく軽減できる可能性があるため、適用要件の確認が重要です。
預貯金・現金の評価方法
預貯金は相続開始日(被相続人が亡くなった日)の残高が相続税評価額となります。普通預金は残高そのまま、定期預金は既経過利息(満期日前の利息相当額)を加算した金額が評価額になります。
現金は手元にある金額がそのまま評価額です。タンス預金も申告が必要ですが、申告漏れは税務調査で発見されるケースがあり、加算税・延滞税のリスクがあります。故人の口座の入出金履歴を精査されることが多いため、意図的な隠蔽は厳に慎む必要があります。
有価証券(株式・投資信託)の評価方法
上場株式は、相続開始日の終値・相続開始月の終値の月平均額・前月の月平均額・前々月の月平均額のうち、最も低い金額が評価額として使われます。つまり4つの価格のうち、相続人にとって有利な(低い)金額を選択できます。
非上場株式(中小企業のオーナー株など)の評価は複雑で、「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」などを用いて計算します。専門家への相談が不可欠なケースが多いとされています。
投資信託は相続開始日の基準価額(1口あたりの純資産価額)×口数で評価します。MRFやMMFなど特定の投資信託については若干異なる取扱いがあります。
生命保険金・死亡退職金の取扱い
被相続人を被保険者とする生命保険金(死亡保険金)は「みなし相続財産」として相続税の対象となります。ただし、「500万円×法定相続人の数」が非課税限度額として設定されており、この範囲内の金額は相続税がかかりません。
同様に、雇用主から支払われる死亡退職金も「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。これらの非課税枠は節税効果が高く、生命保険を活用した相続対策として広く利用されています。
相続税の主な控除・特例制度
相続税には税負担を軽減するためのさまざまな控除・特例制度が設けられています。適用できるものがあれば、納税額が大幅に変わることがあります。
配偶者の税額軽減(配偶者控除)
被相続人の配偶者が相続した財産については、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のいずれか多い金額まで、相続税がかからない制度です。
たとえば遺産が3億円でも、配偶者が1億6,000万円以下の財産を相続した場合は相続税が0円になる可能性があります。夫婦で築いた財産に再度課税しないようにという趣旨から設けられた制度です。
ただし、この制度を最大限活用しすぎると「二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)」で子どもへの相続税負担が増える可能性があります。一次・二次相続を通じた税額のシミュレーションを税理士に依頼することをお勧めします。
小規模宅地等の特例
被相続人が自宅として使っていた土地(特定居住用宅地等)を、配偶者や一定の条件を満たす親族が相続した場合、土地の評価額を最大80%減額できる特例です。
対象面積は330㎡まで(特定居住用宅地の場合)で、要件を満たせば大きな節税効果が期待できます。たとえば路線価ベースで評価額5,000万円の土地がある場合、特例適用後は1,000万円まで下がる計算になります。
適用要件には「取得者の種類(配偶者・同居親族・別居親族など)」ごとの条件があります。特に同居の有無・家屋の所有状況・申告期限までの継続居住・保有が要件となることが多いため、早めに専門家への確認をお勧めします。
未成年者控除・障害者控除
相続人が未成年者の場合、18歳(2022年4月以降)に達するまでの年数×10万円が税額控除されます。相続人に一般障害者がいる場合は85歳に達するまでの年数×10万円、特別障害者は20万円が控除されます。
相次相続控除
10年以内に2回以上相続が発生した場合、前回の相続で納付した相続税の一部を今回の相続税から控除できる制度です。短い期間に相続が重なった場合の税負担を緩和する趣旨で設けられています。
相続税の申告・納付手続きの流れ
相続税の申告は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に対して行います。手続きには書類収集から計算・申告書作成まで多くのステップがあります。
申告までの準備ステップ
- 相続人を確定する:戸籍謄本を収集し、法定相続人が誰かを確定します。出生から死亡まですべての戸籍が必要になることがあります。
- 相続財産を把握する:不動産・預貯金・有価証券・生命保険・借金など、すべての財産をリストアップします。通帳・証券口座の残高証明・登記事項証明書などの書類を取り寄せます。
- 遺産分割協議を行う:相続人全員で遺産の分け方を話し合い、遺産分割協議書を作成します。小規模宅地等の特例の適用を受けるには、申告期限までに分割が完了している必要があります。
- 相続税評価額を計算する:各財産の相続税評価額を計算します。不動産は路線価図や固定資産税評価証明書を参照します。
- 申告書を作成する:国税庁の申告書様式(第1表〜第15表など)を使って申告書を作成します。
- 申告書を提出・納税する:申告期限(10か月以内)までに税務署へ申告書を提出し、相続税を納付します。
相続税申告に必要な主な書類
| 書類の種類 | 内容 | 入手先 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(除籍謄本等) | 被相続人・相続人の戸籍関係書類 | 市区町村役場 |
| 登記事項証明書 | 不動産の登記情報 | 法務局 |
| 固定資産税評価証明書 | 土地・建物の評価額 | 市区町村役場 |
| 預金口座残高証明書 | 死亡日時点の残高証明 | 各金融機関 |
| 有価証券の残高証明書 | 死亡日時点の株式・投信残高 | 証券会社等 |
| 生命保険金支払通知書 | 死亡保険金の支払い明細 | 保険会社 |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の署名・実印押印が必要 | 自作または専門家作成 |
| 印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押印した印鑑の証明 | 市区町村役場 |
延納・物納という選択肢
相続税は原則として現金で一括納付ですが、一定の要件を満たす場合は「延納(分割払い)」や「物納(不動産などで納税)」を選択できます。
延納:納税額が10万円超で一括納付が困難な場合に申請できます。不動産等の割合により延納期間が最長20年まで認められることがあります。ただし延納税率(利子税)がかかります。
物納:延納でも現金納付が困難な場合に、不動産・有価証券・国債などで納税できる制度です。物納できる財産の種類・順位が税法で定められています。物納には収納価額が相続税評価額となる点に注意が必要です。
相続税の節税対策|効果的な方法と注意点
相続税の節税対策は、できるだけ早い段階から計画的に実施することが重要です。相続が発生した後では使えない対策も多くあります。
生前贈与の活用
生前贈与は相続財産を生前に移転することで、相続財産を減らす代表的な節税対策です。
暦年贈与:毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額が110万円以下であれば、贈与税は非課税です。これを毎年継続することで、長期にわたって財産を移転できます。
ただし2024年の税制改正により、相続開始前の生前贈与の相続財産への加算期間が従来の3年から7年に延長されました(2024年1月1日以降の贈与から順次適用)。亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算される点を踏まえた計画が必要です。
相続時精算課税制度:60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ贈与する場合に選択できる制度で、合計2,500万円まで贈与税が非課税(超過部分は20%課税)になります。贈与した財産は相続時に相続財産に合算されますが、将来値上がりが見込まれる資産の贈与に有効とされています。2024年の改正で毎年110万円の基礎控除が追加されました。
生命保険の非課税枠活用
前述の通り、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。現預金をそのまま相続させるより、生命保険を活用することで節税できる場合があります。
たとえば法定相続人が3人の場合、1,500万円の死亡保険金が非課税となります。現預金1,500万円を相続させた場合と比べると、相続税評価額を1,500万円圧縮できる可能性があります。
不動産購入・賃貸経営による評価額圧縮
現金で不動産を購入すると、一般的に相続税評価額を時価より低く抑えられるとされています。特にアパート・マンション経営を行うと「貸家建付地」「貸家」として評価され、さらに評価額が下がる可能性があります。
ただし不動産投資には空室リスク・管理コスト・価格下落リスクなど、節税効果とは別のリスクがあります。節税目的だけで判断するのは危険で、収益性・管理体制・相続後の活用方針まで含めた検討が必要です。
教育資金・結婚子育て資金贈与の特例
一定の要件を満たす場合、孫などへの教育資金の一括贈与(1,500万円まで非課税)や結婚・子育て資金の贈与(1,000万円まで非課税)の特例が設けられています。ただし各特例には適用期限・要件があるため、最新の税制を確認することが重要です。
相続税に関するよくある注意点・トラブル
申告期限の見落とし
相続税の申告・納付期限は「被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内」です。この期限を過ぎると、期限後申告には「無申告加算税(原則15%〜20%)」、納付遅延には「延滞税」が課されます。
亡くなった直後は葬儀・相続人の確定・遺産分割協議など多くの手続きが重なるため、気づいたら期限が迫っていたということも少なくありません。早めに専門家に相談し、スケジュールを立てることをお勧めします。
名義預金・名義株の問題
被相続人が子どもや孫の名義で作った預金口座(名義預金)は、実態として被相続人の財産とみなされ相続財産に含まれる可能性があります。「孫の名義だから相続財産ではない」と判断するのは危険です。
税務調査では、被相続人の通帳や過去の資金移動が精査されることがあります。名義預金の存在は申告漏れとして指摘を受けやすいため、注意が必要です。
不動産評価の誤りと税務調査
相続税の税務調査では、不動産評価の誤りが多く指摘されるとされています。特に土地の形状・接道状況・利用状況によって評価額に補正が入る場合がありますが、この補正の適用誤りが申告漏れや過大申告につながるケースがあります。
一方で、正しく補正を適用すれば評価額を下げることもできます。適切な評価のためには、不動産に詳しい税理士への依頼が一般的です。
遺産分割が未了のままの申告
申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、「未分割」のまま申告することが認められています。ただし、未分割の場合は配偶者控除・小規模宅地等の特例が原則として適用できません。
申告期限後3年以内に分割が確定した場合は「更正の請求」により、これらの特例を適用して税額の還付を受けられるケースがあります(事前に「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出が必要)。早めに遺産分割協議を進めることが大切です。
税理士に相談すべきケースと費用の目安
相続税の申告は、財産がシンプルで少額であれば自分で対応できる場合もありますが、多くのケースでは税理士への依頼が一般的です。
税理士への依頼が特に推奨されるケース
- 相続財産に不動産(特に土地)が含まれる場合
- 非上場株式(中小企業の株式)が財産に含まれる場合
- 相続人が複数いて遺産分割が複雑な場合
- 小規模宅地等の特例・配偶者控除など複数の特例を適用したい場合
- 相続財産が基礎控除をわずかに超えており、節税の余地があるか確認したい場合
- 過去に生前贈与があり、申告への影響を確認したい場合
- 申告期限まで時間が少なく、自分での対応が難しい場合
税理士費用の目安
| 遺産総額 | 税理士報酬の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 5,000万円以下 | 20〜40万円程度 | 財産内容の複雑さによる |
| 5,000万円〜1億円 | 40〜80万円程度 | 不動産あり・相続人多数で加算 |
| 1〜3億円 | 80〜150万円程度 | 評価が複雑な財産がある場合は別途 |
| 3億円超 | 個別見積もり | 財産の種類・複雑さによる |
費用は税理士事務所によって異なります。複数の事務所に見積もりを取り、相続税専門の税理士に依頼することが一般的です。初回相談が無料の事務所も多くあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続税の申告後に財産が見つかった場合はどうすればよいですか?
A. 申告後に新たな財産が発覚した場合は「修正申告」を行います。追加の財産に対する相続税と延滞税が発生します。一方で申告後に計算誤りが発覚し、納めすぎた場合は「更正の請求」により還付を受けることができます。更正の請求は原則として申告期限から5年以内です。
Q. 相続放棄をすれば相続税はかかりませんか?
A. 相続放棄をした方は財産を受け取らないため、原則として相続税はかかりません。ただし、死亡保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」は、相続放棄をしても受け取れる場合があります(その場合は生命保険の非課税枠は使えません)。また相続放棄をすると、借金も含めてすべての相続権を失う点に注意が必要です。
Q. 外国に財産がある場合も相続税の申告が必要ですか?
A. 日本居住者(相続人・被相続人)が関わる相続では、国内外の財産すべてが相続税の対象となります。海外の不動産・口座・有価証券なども申告が必要です。外国で相続税に相当する税を納付した場合は「外国税額控除」により二重課税を一定程度回避できます。
Q. 相続税の申告期限に間に合いそうにない場合はどうすればいいですか?
A. 相続税の申告期限は延長することができません(やむを得ない事由がある場合の例外規定はありますが、要件が厳しい)。期限までに確定しない部分は「未分割申告」として申告し、分割確定後に修正申告・更正の請求を行う方法があります。いずれにせよ、期限前に税務署か税理士に相談することをお勧めします。
Q. 相続税の税務調査はどのような場合に来ますか?
A. 税務調査は申告内容や財産規模によって実施されることがあります。特に、申告された財産が少ない・評価方法が適切でない・過去の入出金に不自然な点がある場合などに調査対象になりやすいとされています。調査では被相続人の金融機関取引の精査・不動産の現地確認などが行われることがあります。正確な申告が最大の対策です。
まとめ|相続税の計算と申告のポイント
相続税は複雑に見えますが、基本的な流れを把握することで全体像を理解できます。ここで改めて重要なポイントを整理します。
- 基礎控除の計算:「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた場合のみ相続税が発生します。まず自分のケースで基礎控除額を確認しましょう。
- 財産評価の正確さが重要:不動産・非上場株式など評価が難しい財産は、専門家への依頼が一般的です。評価を誤ると過大・過少申告のリスクがあります。
- 配偶者控除・小規模宅地等の特例:適用できる特例を見落とさないことが節税の第一歩です。特例には要件がありますので、早めに確認することをお勧めします。
- 申告期限は10か月以内:亡くなった日の翌日から10か月以内に申告・納付が必要です。遺産分割協議も期限内に完了させることが理想です。
- 生前対策が有効:暦年贈与・生命保険の活用など、元気なうちに計画的に対策を進めることで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。2024年の税制改正も踏まえて、早めに専門家と相談することをお勧めします。
- 税理士への相談:不動産が含まれる・相続人が複数いる・節税の余地があるか知りたいなどの場合は、相続税専門の税理士への相談が一般的です。初回無料相談を実施している事務所も多くありますので、気軽に問い合わせてみてください。
相続税の申告は、人生で何度も経験することではありません。初めての方でも基礎から安心して取り組めるよう、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。不明な点がある場合は、税務署・税理士など専門家へのご相談をお勧めします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。税額の計算・申告については、必ず税理士など専門家にご相談のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。税制は改正されることがありますので、最新の情報は国税庁ウェブサイト(https://www.nta.go.jp/)でご確認ください。
