「遺言書を書きたいけれど、書き方が分からない」「費用はいくらかかるのか」——そんな疑問をお持ちではないでしょうか。自筆証書遺言は費用ほぼ0円で作成でき、法務局保管制度を使えば3,900円で安全に保管できます。
遺言書は、亡くなった後に残された家族が財産の分け方で揉めないようにするための、最も有効な手段のひとつです。しかし、書き方を間違えると法律的に無効になってしまうため、正しい知識が欠かせません。
この記事では、遺言書の種類・書き方の手順・費用・法務局保管制度まで、初めて遺言書を作成される方が知っておくべき内容をすべてまとめました。読み終えた後には、自分に合った遺言書の形を選んで行動に移せるようになっています。
- 遺言書の3種類と選び方
- 自筆証書遺言の書き方(必須要件・無効になるケース)
- 公正証書遺言の作成手順と費用
- 2020年開始の法務局保管制度の活用法
- ケース別の文例テンプレート5選(コピペ参考用)
- 遺留分の計算例と封筒の書き方
- 費用の比較と専門家への相談タイミング
遺言書とは|民法が定める「最後の意思表示」
遺言書の定義と法的根拠
遺言書とは、自分の死後に財産の処分方法や家族へのメッセージを法的に有効な形で残す文書のことです。民法第960条では「遺言は、この法律の定める方式に従わなければ、することができない」と規定されており、法律が定める一定の形式を満たさない遺言書は、内容がどれだけ明確であっても法的効力を持ちません。
遺言書の効力が生じるのは、遺言者が亡くなったときです。生前に書き換えることも自由にできます。また、民法第1004条により、自筆証書遺言(法務局保管を除く)を発見した相続人は、家庭裁判所に「検認」の申立てをしなければならないと定められています。
遺言書は「遺言者本人の最後の意思表示」として、法定相続分よりも優先される場合が多くあります。たとえば、法定相続では配偶者と子どもが均等に遺産を受け取ることになっていても、遺言書で「自宅は妻に」「預金は長男に」と指定することで、その通りに実行されるケースが一般的です。
ただし、遺留分(いりゅうぶん)と呼ばれる、一定の相続人に保障された最低限の相続分を侵害する内容は、後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺言書を書く際は、この遺留分にも配慮することが重要です。
遺言書が必要になる主なケース
遺言書が特に重要になる場面はいくつかあります。法定相続の原則では、相続人全員の合意がなければ遺産を分けることができないため、争いが起きやすい状況では遺言書の存在が大きな意味を持ちます。
まず、再婚や前婚の子どもがいるケースでは、遺産分割協議の場でトラブルが起きやすいとされています。遺言書があれば、誰にどの財産を渡すかを遺言者の意思で明確にできます。
次に、子どもがなく配偶者のみが相続人のケースです。この場合、法律上は亡くなった配偶者の両親や兄弟姉妹にも相続権が発生する場合があります。「全財産を配偶者に」と遺言書で明記しておくことで、意図しない相続を防ぐことができます。
また、特定の相続人に事業や不動産を継がせたい場合や、相続人以外の人物(内縁のパートナー・孫・NPO法人など)に財産を渡したい場合も、遺言書が欠かせません。法定相続の枠を超えた財産の移転は、遺言書によってのみ実現できます。
さらに、認知症などで意思能力を失う前に意思を残しておきたいという目的でも遺言書は活用されています。意思能力を欠く状態で作成された遺言書は無効とされるため、心身ともに健康なうちに作成しておくことが望ましいとされています。
遺言書がないとどうなるか
遺言書がない場合、相続は「法定相続」と「遺産分割協議」によって進めることになります。法定相続とは、民法が定めた割合に従って遺産を分けるルールで、配偶者と子どもが相続人の場合は配偶者が1/2、子ども全員で1/2を分け合うのが原則です。
しかし、法定相続分はあくまでも「目安」であり、相続人全員の合意によって異なる分割をすることもできます。その合意を文書にまとめたものが「遺産分割協議書」です。相続人が多い・疎遠な親族がいる・不動産が含まれるといった状況では、協議がまとまらず時間がかかることも少なくありません。
遺言書を残しておくことで、相続人間での話し合いの負担を大幅に軽減できるケースが多く、残された家族への「最後の気遣い」にもなります。
特に不動産は「分割しにくい財産」の代表格です。遺言書がない場合、不動産は相続人全員の共有状態になることがあり、その後の売却や活用に支障が出るケースも報告されています。資産が複雑な方ほど、遺言書の作成を早めに検討する価値があるといえます。
遺言書の3種類|自筆証書・公正証書・秘密証書の比較
3種類の特徴と選び方の基準
遺言書には、民法で定められた3つの種類があります。それぞれ作成方法・費用・メリット・デメリットが異なるため、自分の状況に合わせて選ぶことが重要です。
| 種類 | 費用目安 | 証人 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | ほぼ無料(法務局保管は3,900円) | 不要 | いつでも・どこでも・費用ゼロで作成可能 | 形式不備で無効になるリスクがある。検認が必要(法務局保管を除く) |
| 公正証書遺言 | 数万〜十数万円程度 | 2名必要 | 無効リスクが低い。検認不要。原本を公証役場が保管 | 費用がかかる。証人2名の確保が必要 |
| 秘密証書遺言 | 数千円〜1万円程度 | 2名必要 | 内容を秘密にしたまま存在を証明できる | 形式不備リスクあり。利用例が少なく実務的には使いにくい |
実務上は自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかを選ぶケースが大多数を占めています。秘密証書遺言は「内容を誰にも知られたくないが存在は公証したい」という特殊なニーズに応えるものですが、公正証書遺言でも内容の秘密保持は相応に守られるため、秘密証書遺言を選ぶメリットは限定的とされています。
自筆証書遺言が向いている方・向いていない方
自筆証書遺言は、費用ゼロで手軽に作成できる点が最大の特徴です。紙とペンさえあれば、今すぐ書き始めることができます。ただし、「手軽に作れる」ということは「形式を間違えても誰も指摘してくれない」ということでもあります。
自筆証書遺言が向いている方としては、財産の内容がシンプル(預貯金のみなど)、相続人が少なく関係が良好、費用をできるだけ抑えたい、法務局の保管制度を利用する予定がある、といった状況の方が挙げられます。
一方、不動産や事業資産が含まれる・相続人間の関係が複雑・遺言内容の有効性に不安がある、といった場合は公正証書遺言を選んだ方が安心感は高いとされています。
また、自筆証書遺言を自宅で保管する場合は、発見されなかったり、死後に開封されてしまうリスクもあります。こうしたリスクを避けるためにも、2020年から始まった法務局の保管制度の活用を検討する価値があります。
公正証書遺言が向いている方
公正証書遺言は、公証人(国が任命した法律の専門家)が遺言者の口述をもとに作成・認証する遺言書です。民法第969条に規定された厳格な手続きを経るため、形式不備による無効リスクがほぼないとされています。
向いている方としては、財産に不動産・株式・事業資産が含まれる、相続人が多い、法定相続分と異なる分割を希望している、確実に遺言を執行させたい、体力的・健康上の理由から法務局に出向くことが難しい(出張公証に対応してもらえる場合がある)、といったケースが代表的です。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がありません。また、相続開始後の家庭裁判所での検認手続きが不要なため、遺言の執行をスムーズに進めやすい点も実務上大きなメリットです。
自筆証書遺言の書き方|必須記載事項と正しい手順
自筆証書遺言の法定要件(民法第968条)
自筆証書遺言が有効であるためには、民法第968条が定める要件を厳密に満たす必要があります。要件を一つでも欠くと、遺言全体が無効になる場合があるため、慎重に確認することが重要です。
第一の要件は、全文を遺言者本人が自署(手書き)することです。パソコンで作成した本文は無効です。ただし、2019年1月から施行された改正民法により、財産目録(土地・建物・預金口座の一覧)に限りパソコンで作成したものを添付することが認められるようになりました。財産目録には各ページに自署と押印が必要です。
第二の要件は、作成日付を正確に記入することです。「令和7年春」「2025年吉日」といった曖昧な表記では、いつ書かれたものか特定できないため無効とされます。「令和7年(2025年)〇月〇日」と年月日を具体的に記入してください。
第三の要件は、遺言者本人の署名と押印です。署名は戸籍上の本名を記載するのが一般的です。押印は認印でも法律上は有効ですが、本人の意思を明確にするため実印を使用するケースが多くあります。
この3要件(全文自署・日付・署名押印)はすべて必須です。一つでも欠けた遺言書は法的効力を持ちません。
自筆証書遺言の書き方・手順(ステップ別)
自筆証書遺言を作成する際の手順を、実際の流れに沿って解説します。準備から完成まで、焦らず丁寧に進めることが大切です。
STEP 1: 財産の棚卸しをする
まず、自分が保有するすべての財産を書き出します。不動産(土地・建物の所在地・地番・家屋番号)、預金(金融機関名・支店名・口座種別・口座番号)、有価証券(証券会社名・銘柄・数量)、その他の財産(車・貴金属・保険・借地権など)を一覧にまとめます。財産目録はパソコン作成も可能ですが、各ページに自署と押印が必要です。
STEP 2: 相続人・受遺者を確認する
誰に何を渡すかを決めます。相続させる相手が法定相続人(配偶者・子・親など)の場合は「相続させる」、相続人以外の場合は「遺贈する」という表現を使い分けることが重要です。また、受取人が先に亡くなった場合の「予備的遺言」も記載しておくと安心です。
STEP 3: 本文を手書きで記入する
白紙(A4またはB5程度)に黒のボールペンや万年筆で本文を記入します。消えやすい鉛筆や摩擦式ボールペンは使用しないことが推奨されています。文字は丁寧に、第三者が読んでも意味が通じるよう明確に書きます。「〇〇銀行〇〇支店の普通預金(口座番号:xxxxxxx)は、長男〇〇(生年月日:〇〇年〇月〇日)に相続させる」というように、財産と相続人を具体的に特定することが重要です。
STEP 4: 日付・署名・押印を記入する
本文の末尾に「令和〇年〇月〇日」と正確な日付を書き、氏名を自署し、押印します。この3点が揃って初めて法的要件を満たします。
STEP 5: 訂正がある場合の正しい方法
民法第968条第3項により、訂正・加除は法定方式に従う必要があります。具体的な手順は次の4ステップです。
【遺言書の訂正手順】
① 変更箇所に二重線を引く(塗りつぶさないこと)
② 二重線の上方または側方の余白に、正しい内容を書く
③ 変更箇所の近くに押印する(遺言書本文に押したものと同じ印鑑)
④ 遺言書の末尾または余白に「第〇条中〇字削除、〇字加入」と付記し、署名する
訂正方法を間違えると訂正部分が無効になるリスクがあります。訂正箇所が多い場合は、新しく遺言書を書き直すほうが確実でお勧めです。
財産の特定方法と付言事項の書き方
遺言書の内容を巡るトラブルの多くは、財産の特定が不十分なことに起因しています。「預金の半分を長男に」という記載では、どの預金口座のいくらを指すのかが不明確で、相続人間で解釈が異なる場合があります。
不動産の記載では、登記簿(登記事項証明書)に記載された内容をそのまま転記することが望ましいとされています。土地の場合は「所在・地番・地目・地積」、建物の場合は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を正確に記入します。法務局や市区町村で登記簿を取得して確認してから記載することをお勧めします。
預貯金の場合は「〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇」のように、口座を特定できる情報をすべて記載します。有価証券は「〇〇証券〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇 〇〇株式会社株式 〇〇株」のように記載するケースが一般的です。
また、遺言書の末尾に「付言事項」として、家族へのメッセージや遺言内容の背景にある思いを記載することができます。付言事項は法的拘束力を持ちませんが、相続人の感情的な受け止め方に影響し、遺産分割の紛争を和らげる効果があるとされています。「長男には家業を継いでほしいため自宅を相続させる」「介護をしてくれた長女に感謝を込めて」といった形で、遺言の趣旨を伝えることができます。
自筆証書遺言の文例・テンプレート(ケース別)
自筆証書遺言の具体的な書き方を、よくあるケース別にテンプレートとして紹介します。実際に書く際の参考にしてください。
【文例1】全財産を配偶者に相続させる場合
遺 言 書
遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻 山田花子(昭和30年3月15日生)に相続させる。
第2条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、妻 山田花子を指定する。
(付言事項)
花子へ。長い間、支えてくれて本当にありがとう。子どもたちには父の思いを伝えてくれると嬉しいです。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都〇〇区〇〇町一丁目2番3号
遺言者 山田太郎 ㊞
【文例2】不動産と預金を複数の相続人に分ける場合
遺 言 書
遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、下記の不動産を、妻 山田花子(昭和30年3月15日生)に相続させる。
土地 所在:東京都〇〇区〇〇町一丁目
地番:23番4
地目:宅地
地積:120.50平方メートル
建物 所在:東京都〇〇区〇〇町一丁目23番地4
家屋番号:23番4
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階 60.25平方メートル 2階 45.30平方メートル
第2条 遺言者は、下記の預貯金を、長男 山田一郎(昭和55年7月10日生)に相続させる。
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号 1234567
第3条 遺言者は、下記の預貯金を、長女 山田美咲(昭和58年2月20日生)に相続させる。
△△銀行△△支店 普通預金 口座番号 7654321
第4条 前各条に記載なき遺言者の有する一切の財産は、妻 山田花子に相続させる。
第5条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男 山田一郎を指定する。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都〇〇区〇〇町一丁目2番3号
遺言者 山田太郎 ㊞
【文例3】相続人以外(内縁のパートナー)に遺贈する場合
遺 言 書
遺言者 田中次郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、下記の預貯金を、鈴木良子(昭和40年5月1日生、住所:東京都〇〇区〇〇町)に遺贈する。
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号 9876543
第2条 遺言者は、前条に記載なき一切の財産を、兄 田中太郎(昭和35年1月15日生)に相続させる。
第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、弁護士 佐藤誠(東京弁護士会所属)を指定する。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都〇〇区〇〇町二丁目5番6号
遺言者 田中次郎 ㊞
※内縁のパートナーは法定相続人ではないため「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載します。遺言執行者の指定は特に重要です。
【文例4】予備的遺言を含む場合
遺 言 書
遺言者 高橋三郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻 高橋京子(昭和32年9月1日生)に相続させる。
第2条 妻 高橋京子が遺言者より先に、または遺言者と同時に死亡した場合は、第1条の財産を長男 高橋健太(昭和57年4月5日生)に相続させる。
第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、妻 高橋京子を指定する。ただし、妻が遺言執行者に就任できない場合は、長男 高橋健太を遺言執行者に指定する。
令和〇年〇月〇日
住所 千葉県〇〇市〇〇町三丁目7番8号
遺言者 高橋三郎 ㊞
予備的遺言(第2条)がない場合、配偶者が先に亡くなると遺言の該当部分が失効し、法定相続となります。年齢の近い夫婦や持病がある場合は予備的遺言を必ず記載しましょう。
【文例5】子の認知を含む場合
遺 言 書
遺言者 中村四郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者と木村美香(昭和50年6月10日生)との間に生まれた子 木村翔太(平成10年8月20日生)を認知する。
第2条 遺言者は、遺言者の有する財産を、次のとおり相続させる。
(1)妻 中村和子(昭和30年12月1日生)に3分の1
(2)長男 中村大輔(昭和53年3月5日生)に3分の1
(3)木村翔太に3分の1
第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、弁護士 鈴木一郎(〇〇県弁護士会所属)を指定する。
令和〇年〇月〇日
住所 神奈川県〇〇市〇〇町四丁目9番10号
遺言者 中村四郎 ㊞
遺言による認知(民法第781条第2項)では、遺言執行者が必須です。認知届の提出は遺言執行者が行うため、必ず指定してください。
封筒の書き方と保管の準備
自筆証書遺言を完成させた後の封筒の書き方と保管方法も重要なポイントです。
封筒への入れ方
- 遺言書を三つ折りまたは四つ折りにして封筒に入れます
- 封筒は白色の無地のものを使用するのが一般的です
- のりで封をし、封じ目に押印します(遺言書本文に押したものと同じ印鑑)
封筒の表面・裏面の書き方
【表面】
遺 言 書
※開封厳禁 家庭裁判所の検認前に開封しないでください
【裏面】
令和〇年〇月〇日
遺言者 山田太郎 ㊞
封筒に「開封厳禁」と書くことで、検認前の開封(過料5万円以下)を防ぐ効果があります。なお、法務局保管制度を利用する場合は封入せずにそのまま提出します(A4サイズの用紙、ホチキス不可)。
遺留分に配慮した遺言書の書き方|計算例と対策
遺言書の内容は遺言者の自由意思で決められますが、「遺留分」を侵害する内容は相続後にトラブルの原因となります。遺留分とは、一定の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に法律で保障された最低限の取り分です。
遺留分の割合
| 相続人の構成 | 遺留分の合計 | 各相続人の遺留分 |
|---|---|---|
| 配偶者のみ | 1/2 | 配偶者:1/2 |
| 配偶者+子ども1人 | 1/2 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
| 配偶者+子ども2人 | 1/2 | 配偶者:1/4 子各:1/8 |
| 子どものみ(配偶者なし) | 1/2 | 子ども全員で1/2を均等分割 |
| 直系尊属(父母)のみ | 1/3 | 父母全員で1/3を均等分割 |
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
【計算例】遺産総額5,000万円・配偶者+子ども2人の場合
■ 遺留分の合計 = 5,000万円 × 1/2 = 2,500万円
■ 配偶者の遺留分 = 5,000万円 × 1/4 = 1,250万円
■ 子ども1人の遺留分 = 5,000万円 × 1/8 = 625万円
→ つまり「全財産を長男に」と遺言しても、配偶者は最低1,250万円、次男は最低625万円を請求できます。
遺留分に配慮した遺言書のポイント
- 各相続人への配分が遺留分を下回らないように設計する
- やむを得ず遺留分を侵害する場合は、付言事項で理由を丁寧に説明する
- 生命保険金を活用して遺留分相当額を確保する方法もある
- 複雑なケースでは弁護士に相談し、遺留分侵害額請求のリスクを事前に評価する
自筆証書遺言が無効になる7つのケース
形式不備による無効パターン
自筆証書遺言は「書き方を間違えると無効になる」というリスクが常に存在します。実際に家庭裁判所で検認を受けた遺言書の中には、形式不備を理由に遺言の効力が争われるケースも少なくないとされています。以下に代表的な無効パターンをまとめます。
| # | 無効になるケース | 理由・根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 本文の全部または一部をパソコンで作成した | 民法第968条第1項「自筆証書遺言は、遺言者が全文・日附・氏名を自書し」と規定。財産目録以外は手書きが必須 |
| 2 | 日付が「令和〇年春」「2025年吉日」など曖昧 | 日付が特定できないため無効。複数の遺言書がある場合に前後関係を判断できない |
| 3 | 署名はあるが押印がない | 押印は民法第968条第1項が定める必須要件。認印・拇印(親指の指印)でも可とされているが、なければ無効 |
| 4 | 夫婦が同一の用紙に連名で記載(共同遺言) | 民法第975条により共同遺言は禁止。別々に作成することが必要 |
| 5 | 財産の特定が不明確(「全財産の半分」「預金」など) | 遺言の内容を実行できず無効と判断される場合がある |
| 6 | 法定の方式に従わない訂正・加除 | 民法第968条第3項違反。訂正箇所が無効、または全体が無効になる可能性がある |
| 7 | 意思能力がない状態で作成 | 認知症の診断を受けていた場合など、遺言能力を欠く状態での作成は民法第963条により無効 |
特に注意が必要なのは「意思能力」の問題です。認知症が進行した後に作成された遺言書は、遺族から効力を争われる場合があります。「まだ早い」と思っても、判断能力が十分なうちに作成しておくことが重要です。
また、訂正方法の誤りによる無効は見落とされやすいリスクです。後から気づいて修正する際に、普通に二重線を引いて書き直しただけでは法定の訂正方式を満たしていない場合があります。訂正が生じた場合は、新しく書き直した遺言書を作成するほうが確実です。
検認手続きと注意点
法務局に保管していない自筆証書遺言を相続人が発見した場合、民法第1004条第1項により、家庭裁判所に遺言書の「検認」を申立てることが義務付けられています。検認とは、遺言書の偽造・変造を防ぐための証拠保全手続きであり、遺言書の内容の有効・無効を判断するものではありません。
検認前に遺言書の封を開けることは禁止されており、民法第1005条により5万円以下の過料が科せられる場合があります。遺言書を発見したら、まず封をしたまま家庭裁判所に持参することが重要です。
検認の申立から期日が設定されるまでに通常1ヵ月〜2ヵ月程度かかるとされており、その間は相続手続きが進められない場合があります。この手続きを省略できる点も、公正証書遺言や法務局保管制度を利用する大きなメリットのひとつです。
公正証書遺言の作り方|手順と費用を詳しく解説
公正証書遺言の作成手順(ステップ別)
公正証書遺言は、公証人(裁判官・検察官・弁護士などの法律実務経験者の中から法務大臣が任命)が作成に関与する遺言書です。民法第969条が定める厳格な手続きを経るため、形式不備のリスクがほぼないとされており、信頼性の高い遺言書を作成したい方に選ばれています。
STEP 1: 遺言内容の整理と草案の準備
誰にどの財産をどのように渡すかを決め、財産の一覧と相続人・受遺者の情報をまとめます。遺言執行者(遺言内容を実際に実行する人)を指定する場合は、その方の同意も事前に得ておくことが望ましいとされています。内容が複雑な場合は、事前に弁護士・司法書士・行政書士に相談して草案を作成してもらうことも可能です。
STEP 2: 証人2名の確保
公正証書遺言には、作成時に証人2名の立会いが必要です。民法第974条により、未成年者、推定相続人、受遺者、これらの配偶者および直系血族は証人になることができません。証人の確保が難しい場合は、公証役場や専門家(弁護士・司法書士事務所)に証人の手配を依頼することも可能です(証人1名あたり1万円程度の手数料がかかる場合があります)。
STEP 3: 公証役場への予約と必要書類の準備
最寄りの公証役場(全国に約300か所)に電話またはメールで予約します。その後、公証人と内容について打ち合わせを行い、必要書類を準備します。遺言者が直接出向くことが難しい場合(入院中・身体的に困難な場合)は、公証人が病院や施設、自宅へ出張することも可能です(出張手数料が加算されます)。
STEP 4: 公証役場での作成・署名
遺言者が公証役場に出向き、公証人の面前で遺言内容を口述します。公証人が筆記した内容を遺言者・証人に読み聞かせ(または閲覧させ)、遺言者・証人2名・公証人の4者が署名押印して完成します。公証役場に原本が保管され、遺言者には正本(または謄本)が交付されます。
公正証書遺言の必要書類一覧
公正証書遺言の作成に必要な書類は、状況によって異なりますが、一般的に以下のものが必要とされています。事前に公証役場に確認することをお勧めします。
| 書類 | 入手先・備考 |
|---|---|
| 遺言者の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード等) | 本人保有 |
| 遺言者の印鑑登録証明書(実印) | 市区町村窓口(発行から3ヵ月以内が目安) |
| 相続人の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村窓口 |
| 受遺者の住民票 | 相続人以外に遺贈する場合。市区町村窓口 |
| 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本) | 不動産がある場合。法務局 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産がある場合。市区町村窓口 |
| 金融機関の通帳・残高証明書 | 預金口座を特定するため |
| 証人2名の住所・氏名・生年月日・職業のメモ | 証人本人に確認 |
公正証書遺言の費用|公証人手数料の計算方法
公正証書遺言の費用の中心となるのは「公証人手数料」です。手数料は「公証人手数料令」によって定められており、遺言する財産の価額に応じた計算式で算出されます。
| 財産額(各受遺者ごと) | 公証人手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
| 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 3,000万円以下 | 23,000円 |
| 5,000万円以下 | 29,000円 |
| 1億円以下 | 43,000円 |
| 3億円以下 | 43,000円+超過額5,000万円ごと13,000円加算 |
| 10億円以下 | 95,000円+超過額5,000万円ごと11,000円加算 |
手数料は「相続させる各相続人・受遺者に渡す財産ごと」に計算され、合計した金額が公証人手数料の基本額となります。さらに、以下の加算が生じます。
- 遺言全体の財産額が1億円未満の場合は、基本手数料に一律1万1,000円が加算されます
- 正本・謄本の交付手数料(1ページあたり250円程度)
- 証人の日当(証人を公証役場に手配してもらう場合:1名あたり1万円程度)
- 出張公証の場合は基本手数料の1.5倍、日当・交通費が別途加算
総遺産が3,000万円程度・相続人が2〜3名の一般的なケースでは、公証人手数料の合計が5万〜10万円程度になるケースが多いとされています。専門家(弁護士・司法書士・行政書士)に遺言書の草案作成を依頼する場合は、別途専門家報酬(5万〜20万円程度)が加わることが一般的です。
法務局の遺言書保管制度|2020年7月開始の画期的な制度
法務局保管制度の概要と特徴
2020年7月10日から開始された「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)に基づく制度が、法務局の自筆証書遺言書保管制度です。自筆証書遺言が持つ弱点(紛失・改ざん・未発見・検認の手間)を大幅に改善することを目的として設けられました。
この制度を利用すると、法務局(遺言書保管所)が自筆証書遺言を保管してくれます。費用は申請1件あたり3,900円(令和6年時点)と非常に手頃で、自筆証書遺言の低コストというメリットを維持しながら、安全性を大幅に高めることができます。
保管を申請できるのは遺言者本人のみで、代理申請はできません。また、申請には事前予約が必要で、申請先は遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地を管轄する法務局(遺言書保管所)のいずれかとなります。
法務局保管制度の4つのメリット
法務局の保管制度を利用することで得られるメリットは主に4点あります。
第一に、検認手続きが不要になります。法務局に保管された遺言書は、相続開始後に家庭裁判所での検認を経ずに遺言の執行に進むことができます。これにより、遺言執行のスピードが大幅に上がるとされています。
第二に、紛失・改ざんのリスクがない点です。自宅で保管する場合、火災・水害・盗難・相続人による改ざんといったリスクがありますが、法務局が保管することでこれらのリスクを回避できます。
第三に、形式確認が受けられる点です。申請時に法務局の職員が自筆証書遺言の形式的な要件を確認します。全文自署・日付・署名・押印の形式不備があれば指摘を受けることができるため、形式不備による無効リスクを事前に発見できます。ただし、遺言内容の有効性(法的内容の適切さ)については確認されない点に注意が必要です。
第四に、相続人への通知機能があります。遺言者が死亡した後、相続人・受遺者・遺言執行者からの閲覧請求に応じて、あらかじめ指定した関係者に遺言書の保管を通知する「関係遺言書保管通知」が行われます。遺言書の存在が相続人に伝わらないまま手続きが進んでしまうリスクを低減できます。
法務局保管制度は「自筆で書く手軽さ」と「安全な保管」を両立できる制度として、特に費用を抑えたい方に選択肢のひとつとして検討する価値があります。
法務局保管制度の申請に必要なもの
法務局に遺言書の保管を申請する際には、以下のものを持参します。事前にウェブサイトまたは電話で予約が必要です(法務局の遺言書保管係に問い合わせてください)。
- 遺言書(A4サイズの用紙に作成し、ホチキス・のり付けは不可。封入しないこと)
- 遺言者の住民票の写し(発行から3ヵ月以内のもの)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等)
- 申請書(法務局窓口または法務局ウェブサイトから取得可能)
- 手数料(3,900円):収入印紙で納付
申請が完了すると「保管証」が交付されます。保管証は遺言書の保管番号が記載された重要書類ですので、大切に保管してください。なお、遺言書の内容を変更したい場合は、一度保管の撤回を行い、新たな遺言書を作成して再度申請する必要があります。
費用の比較|自筆証書 vs 公正証書 vs 法務局保管
遺言書の種類別・費用一覧
遺言書の作成にかかる費用は、種類と状況によって大きく異なります。以下に主なコストをまとめます。
| 費用項目 | 自筆証書遺言(自宅保管) | 自筆証書遺言(法務局保管) | 公正証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成費用 | ほぼ0円(紙・ペン代のみ) | ほぼ0円 | 公証人手数料(5万〜15万円程度) |
| 保管費用 | 0円(自己管理) | 3,900円(1件) | 0円(公証役場が保管) |
| 証人費用 | 不要 | 不要 | 1〜2万円(役場依頼時) |
| 専門家報酬 | 0〜20万円(依頼する場合) | 0〜20万円(依頼する場合) | 5〜20万円(草案作成依頼時) |
| 検認手続き | 申立手数料800円+切手代等(相続時) | 不要 | 不要 |
| 合計目安 | 0円〜(自分で完結する場合) | 約4,000円〜 | 約7万〜30万円(財産規模による) |
費用だけを見ると自筆証書遺言(特に自宅保管)が圧倒的に安価ですが、形式不備のリスクや検認手続きの手間を考慮すると、法務局保管制度の活用か公正証書遺言の選択が、トータルコストとリスクのバランスを取りやすいとされています。
「費用を抑えながら安全に」という方針であれば法務局保管制度付きの自筆証書遺言、「確実性を最優先に」という方針であれば公正証書遺言、というのが選択の基準として参考になります。
専門家に依頼する場合の費用相場
遺言書の作成を専門家に依頼した場合の費用相場は、専門家の種類・遺言内容の複雑さ・財産規模によって異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
| 専門家 | 業務範囲 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺言書の内容確認・作成サポート・遺言執行まで対応可能。争いが予想される複雑なケースに適している | 5万〜30万円程度 |
| 司法書士 | 遺言書の作成サポート・不動産登記を含む遺言執行が得意。費用は弁護士より抑えられる場合が多い | 3万〜20万円程度 |
| 行政書士 | 遺言書の作成・法務局保管の手続きサポート。比較的費用が低め。訴訟は対応不可 | 2万〜15万円程度 |
専門家に依頼するかどうかの判断基準は「遺言内容の複雑さ」と「相続人間のリスク」です。財産が預貯金のみ・相続人が少ない・関係が良好であれば、自分で作成して法務局保管制度を活用するだけでも十分なケースが多いとされています。一方、不動産・非上場株式・事業継承・相続人間に感情的対立がある、といった場合は専門家のサポートを得ることで、後のトラブルリスクを大幅に低減できる可能性があります。
遺言書の保管場所と管理方法
自宅保管のリスクと対策
自筆証書遺言を自宅で保管する場合、最も大きなリスクは「発見されないこと」と「改ざん・処分されること」です。特に封をせずに保管していると、生前に第三者(家族を含む)が内容を確認・変更してしまう恐れがあります。封をする場合は「開封しないこと」と外側に書き添える方法が一般的ですが、検認前に開封されてしまうリスクを完全に排除することは難しいとされています。
自宅保管する場合は、信頼できる人物に「遺言書の場所」を伝えておくことが重要です。ただし、遺言書の内容を伝える必要はありません。「どこにあるか」だけを共有し、自分の死後に適切な手続き(検認申立)をしてもらえるよう依頼しておくことが有効です。
法務局保管・貸金庫・公証役場での保管比較
遺言書の安全な保管方法には複数の選択肢があります。
| 保管方法 | 費用 | 安全性 | アクセス性 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 自宅保管 | 0円 | 低い | 高い | 紛失・改ざんリスクあり。検認必要 |
| 法務局保管 | 3,900円 | 高い | 予約が必要 | 自筆証書遺言のみ。検認不要 |
| 公証役場保管 | 公証人手数料(公正証書遺言) | 高い | 閲覧は手続きが必要 | 公正証書遺言の場合。全国の公証役場で照会可能 |
| 銀行の貸金庫 | 年間数千円〜数万円 | 高い | 自分で取り出せる | 死後に遺族がすぐ取り出せない場合がある |
| 弁護士・司法書士事務所 | 数万円〜(管理料) | 高い | 事務所経由 | 遺言執行者が同じ場合に便利 |
貸金庫は安全性が高い一方で、遺言者の死後に相続人が金庫を開けるために手続きが必要となる場合があり、遺言の執行開始が遅れるリスクがあります。公正証書遺言であれば公証役場が原本を保管するため、別途保管場所を用意する必要がなく、利便性は高いといえます。
ケース別|どの遺言書を選べばいいか
ケース①:財産がシンプルで相続人が少ない場合
預貯金が中心で不動産はなく、子ども1〜2名が相続人というシンプルなケースでは、自筆証書遺言+法務局保管の組み合わせで十分な場合が多いとされています。費用を最小限に抑えながら、検認不要・改ざんリスクなしという安全性を確保できます。
この場合の費用目安は3,900円(法務局保管申請手数料のみ)。専門家に依頼しなくても、本記事で解説した手順に従って作成することが可能です。ただし、法務局への申請前に形式要件を今一度確認することをお勧めします。
ケース②:不動産・事業資産がある複雑な相続
不動産の相続には「誰が取得するか」「ローンの残債はどうするか」「共有にしない設計」といった複数の判断が必要です。事業を継がせる場合は、後継者以外の相続人への遺留分対策も検討しなければなりません。このようなケースでは、専門家(弁護士または司法書士)に依頼して公正証書遺言を作成することが選択肢として有力です。
専門家のサポートを受けることで、遺留分に配慮した遺言内容の設計、税務上の問題点の洗い出し、遺言執行者の選定まで一体的にサポートを受けられる可能性があります。費用は10万〜30万円程度になることが多いとされていますが、相続後に紛争が起きた場合の解決コスト(弁護士費用・家庭裁判所費用・長期化による家族関係の悪化)と比べると、事前投資として合理的と考える方が多い傾向があります。
ケース③:体力的・健康上の理由がある場合
入院中・施設入居中・高齢で移動が困難な場合でも、遺言書の作成は可能です。公証人は遺言者の自宅・病院・施設へ出張することができます(出張手数料が加算)。自筆証書遺言の場合も、法務局の保管申請は本人が直接出向く必要がありますが、遺言書の作成自体は自宅で行うことができます。
認知症の診断を受けている・意思能力に不安がある場合は、かかりつけ医に意思能力があることの確認書類を発行してもらうことも検討する価値があります。遺言書の有効性を後から争われるリスクを低減できる可能性があります。
専門家への相談|弁護士・司法書士・行政書士の選び方
どの専門家に相談すべきか
遺言書の作成に関する相談先は、状況によって適切な専門家が異なります。
弁護士は、相続人間で対立が予想される・遺留分問題がある・遺産分割が複雑で将来の紛争リスクがある、といったケースで最も頼りになる専門家です。遺言書の作成だけでなく、遺言内容の法的妥当性チェック・将来的な紛争予防まで対応できます。費用は高めになる傾向がありますが、複雑なケースでは費用対効果が高い選択肢といえます。
司法書士は、不動産が含まれる相続・相続登記まで一括して依頼したい、といったケースに向いています。公正証書遺言の草案作成・法務局保管の手続きサポートも対応可能です。費用は弁護士より抑えられる傾向があり、不動産絡みの遺言には実務経験が豊富な専門家が多い分野です。
行政書士は、遺言書の作成サポートや遺産分割協議書の作成など、書類作成全般に対応します。費用が比較的低めで、シンプルなケースには選択肢のひとつとして検討できます。ただし、紛争対応や法廷への代理権はないため、争いが予想される場合は弁護士への依頼が適しています。
「まず話を聞いてみたい」という段階では、弁護士・司法書士の多くが初回無料相談に対応しているため、複数の専門家に相談して比較することをお勧めします。
相談前に準備しておくべきこと
専門家への相談をスムーズに進めるために、事前に以下の情報を整理しておくことが有効です。
- 財産の一覧(不動産の所在地・金融機関名・大まかな金額)
- 相続人の構成(配偶者・子・親・兄弟姉妹とその人数)
- 誰にどの財産を渡したいかの希望
- 相続人間に感情的な対立や疎遠な関係があるかどうか
- 遺言執行者として誰を指定したいか
これらを整理しておくことで、相談時間を有効に活用でき、専門家からより具体的なアドバイスを得やすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1:遺言書はいつ書くべきですか?
遺言書は、法律上は15歳以上で意思能力がある方であれば、いつでも作成できます。ただし、「まだ若いから」「まだ早い」と先延ばしにしていると、認知症や病気の進行によって意思能力を欠いた状態になり、有効な遺言書を作成できなくなる可能性があります。元気なうちに作成しておき、状況が変わったときに書き直すことが理想的な対応とされています。遺言書はいつでも撤回・書き直しが可能です(民法第1022条)。
Q2:遺言書の内容を後から変更できますか?
はい、遺言書は何度でも内容を変更できます。遺言書が複数存在する場合、日付が新しいものが優先されます(民法第1023条)。古い遺言書を廃棄することも可能ですが、法務局に保管している場合は「保管の撤回」手続きが必要です(本人のみ可能)。変更が多い場合は、古い遺言書を撤回した上で新たな遺言書を一から作成する方が、内容の整合性を保ちやすいとされています。
Q3:遺言書を発見したらどうすればいいですか?
法務局保管・公正証書遺言以外の遺言書(封をされた自筆証書遺言など)を発見した場合は、開封せずに家庭裁判所へ検認の申立てを行う必要があります(民法第1004条)。検認前に開封した場合、5万円以下の過料が科せられる場合があります(民法第1005条)。検認の申立て後、家庭裁判所から期日の通知が届き、相続人立会いのもとで遺言書が開封されます。申立から期日まで通常1〜2ヵ月程度かかります。
Q4:遺言書に書ける内容・書けない内容はありますか?
遺言書には財産の分配方法だけでなく、認知・相続分の指定・遺産分割の禁止(最長5年)・遺言執行者の指定・祭祀主宰者の指定・後見人の指定(未成年の子に限る)なども記載できます。一方、相続人全員の合意が必要な事項・法律で禁じられていること(例:共同遺言)・道徳に反する内容は、法的効力を持たない場合があります。また、遺留分を侵害する内容は記載できますが、後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があることに注意が必要です。
Q5:自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがいいですか?
一概にどちらが優れているとは言えませんが、判断の目安として「財産の複雑さ」と「相続リスクの高さ」が挙げられます。財産がシンプルで相続人間の関係が良好であれば、法務局保管制度を利用した自筆証書遺言でも十分な場合が多いとされています。一方、不動産・事業資産・複雑な相続関係・対立リスクがある場合は、公正証書遺言を選ぶ方が安心感は高いといえます。費用と安全性のバランスを考慮して選択することをお勧めします。
まとめ|遺言書の書き方・費用の選択と次のステップ
この記事では、遺言書の書き方・費用・種類の選び方について、初めて作成される方向けに解説しました。重要なポイントを整理します。
- 遺言書は民法第960条が定める形式を満たさなければ法的効力を持たない
- 自筆証書遺言は費用ゼロで作成できるが、形式不備・紛失・未発見のリスクがある
- 公正証書遺言は費用はかかるが、無効リスクが低く検認不要で信頼性が高い
- 法務局保管制度(3,900円)を活用することで、自筆証書遺言の安全性を大きく高めることができる
- 財産がシンプルなら自筆証書遺言+法務局保管、複雑な相続なら公正証書遺言が選択肢として有力
- 認知症など意思能力の低下が懸念される前に、早めに作成しておくことが重要
- 内容が複雑・相続人間の対立リスクがある場合は、弁護士・司法書士への早期相談を検討する
遺言書は一度作成したら終わりではなく、状況の変化(財産の増減・相続人の変化・家族関係の変化)に応じて見直すことが大切です。まず「自分の財産の棚卸し」から始め、どの方法が自分に合っているかを検討してみてください。
遺言書の内容が複雑だと感じる場合や、「本当にこれでいいのか」と不安に感じる場合は、一度専門家にご相談されることをお勧めします。弁護士・司法書士の多くは初回無料相談に対応しており、気軽に話を聞いてみることができます。
【免責事項】本記事は2026年4月時点の法令・制度情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。遺言書の作成・相続手続きについては、必ず専門家(弁護士・司法書士・行政書士)にご相談ください。法改正により内容が変更される場合があります。
