突然の訃報から数日、涙が乾かないうちから「手続きをしなければ」というプレッシャーが迫ってきます。
配偶者を亡くされたご遺族にとって、葬儀後の手続きは種類が多く、期限があるものもあり、どこに何を提出すればよいのかわからなくなりがちです。「年金の手続きを忘れていた」「銀行口座が凍結されて困った」「健康保険をどうすれば」——そうした声は現場でよく聞かれます。
この記事では、夫または妻が亡くなった後に必要な手続きを、時系列・カテゴリ別に整理しました。各手続きの期限・必要書類・手続き窓口を一覧でまとめていますので、手続き漏れを防ぐためのチェックリストとしてご活用ください。
この記事でわかること:
- 配偶者死亡後の手続きを「期限」「場所」別に整理した完全一覧
- 特に見落としがちな手続きと対応方法
- 手続きの優先順位と窓口の選び方
- 各手続きに必要な書類リスト
- 手続きが複雑になる場合の専門家活用法
まず最初に確認すべき「手続きの全体像」
手続きは「時系列」で動く——優先順位の考え方
配偶者が亡くなった後の手続きは、同時並行ではなく「時系列」で発生します。すべてを一度に片付けようとすると混乱するため、まず「いつまでに何をすべきか」を時系列で把握することが最初のステップです。
大まかに分けると、以下の3つのフェーズになります。
| フェーズ | 時期の目安 | 主な手続き |
|---|---|---|
| 緊急対応期 | 死亡〜7日以内 | 死亡届・火葬許可証・葬儀手配 |
| 行政手続き期 | 死亡後〜3か月以内 | 年金停止・健康保険・各種給付金の請求 |
| 財産・相続手続き期 | 死亡後〜10か月以内 | 相続・遺産分割・銀行口座・不動産・相続税申告 |
特に注意が必要なのは、相続放棄の期限(死亡を知った日から3か月以内)と相続税の申告・納付期限(死亡日の翌日から10か月以内)です。これらは期限を過ぎると不利益が生じるため、フェーズの早い段階から準備を始めることが重要です。
また、複数の手続きが重なることも多いため、メモや手帳に「何をいつまでに・どこに提出したか」を記録しておくと、後々の確認に役立ちます。
手続きに共通して必要な書類
ほぼすべての手続きで提出を求められる書類があります。事前にまとめて用意しておくと、各窓口でのやり取りがスムーズになります。
| 書類 | 入手先・備考 |
|---|---|
| 故人の死亡診断書(死体検案書) | 病院・医師が発行。複数枚コピーを取っておく |
| 故人の戸籍謄本(除籍謄本含む) | 本籍地の市区町村 |
| 故人の住民票(除票) | 住所地の市区町村 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各自の本籍地の市区町村 |
| 手続き人(遺族)の本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |
| 故人の年金手帳または基礎年金番号通知書 | 自宅保管 / 不明な場合は年金事務所に確認 |
| 通帳・印鑑(遺族本人名義) | 各種給付金の受取口座として必要 |
死亡診断書は1枚しか発行されない場合も多いため、最初に10枚以上コピーを取っておくことをお勧めします。各窓口でコピーが必要になることがあり、原本が手元にないと手続きが止まってしまうケースがあります。
緊急期(死亡〜7日以内)の手続き
死亡届・火葬許可証の申請
配偶者が亡くなったら、死亡を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3か月以内)に死亡届を提出する必要があります(戸籍法第86条)。これは最優先の手続きです。
提出先は、故人の本籍地・死亡地・届出人(遺族)の所在地のいずれかの市区町村窓口です。24時間・365日受け付けている自治体も多いです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類 | 死亡届(死亡診断書と一体になっている用紙)・届出人の印鑑 |
| 提出先 | 本籍地・死亡地・届出人の現住所地の市区町村 |
| 期限 | 死亡を知った日から7日以内 |
| 費用 | 無料 |
死亡届を提出すると同時に「火葬許可証」が交付されます。火葬許可証は火葬場に提出する書類で、火葬後は「埋葬許可証」として返却されます。埋葬許可証はお墓への納骨時に必要になるため、大切に保管してください。
なお、葬儀社に依頼している場合は、死亡届の提出を代行してくれるケースが多いです。葬儀社との契約時に確認しておくと手間が省けます。
世帯主の変更届
亡くなった配偶者が世帯主だった場合、死亡届提出後に世帯主変更届を提出する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類 | 世帯主変更届・本人確認書類 |
| 提出先 | 住所地の市区町村 |
| 期限 | 死亡後14日以内 |
| 費用 | 無料 |
ただし、世帯に残る人が1人(生存配偶者のみ)の場合は、自動的に世帯主が変更されるため届出が不要な場合もあります。子どもが15歳以上の場合などは届出が必要になるため、管轄の市区町村に確認することをお勧めします。
年金関連の手続き
年金受給停止の届出(速やかに)
配偶者が年金を受給していた場合、死亡後に年金受給停止の届出を速やかに行う必要があります。届出が遅れると年金が過払いとなり、返還を求められることがあります。
| 年金の種類 | 届出先 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 国民年金(老齢・障害) | 住所地の市区町村 | 死亡後14日以内 |
| 厚生年金・共済年金 | 年金事務所・共済組合 | 死亡後10日以内 |
必要書類は、年金証書・死亡診断書(または死亡届のコピー)・戸籍謄本・本人確認書類などです。年金の種類(老齢・障害・遺族)によって手続きが異なるため、年金事務所に問い合わせて必要書類を事前に確認しておくことをお勧めします。
特に注意が必要なのは、受給停止の届出を忘れた場合です。死亡後も年金が振り込まれ続けてしまい、後から返還請求を受けるケースは実際に起きています。死亡届と同時期に年金事務所への連絡も済ませることが理想的です。
遺族年金の請求手続き
配偶者が亡くなった場合、要件を満たせば遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)を受け取れる場合があります。これは自動的に支給されるわけではなく、自ら請求手続きが必要です。請求が遅れた分の年金は過去5年分しか遡って受給できないため(時効)、できるだけ早く手続きすることをお勧めします。
| 種類 | 受給対象の目安 | 請求先 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 故人が国民年金加入者・18歳未満の子がいる配偶者等 | 住所地の市区町村 |
| 遺族厚生年金 | 故人が厚生年金加入者・一定の要件を満たす配偶者 | 年金事務所 |
必要書類は、年金請求書・戸籍謄本・住民票・死亡診断書・故人の年金証書・受取口座の通帳などです。必要書類の種類が多いため、まず年金事務所に「遺族年金の請求に必要なもの」を一覧で確認してから準備するとスムーズです。
なお、遺族厚生年金の受給要件は複雑で、年齢・婚姻期間・子の有無によって受給額が異なります。「受給できるのかどうかわからない」という場合も、年金事務所の窓口または社会保険労務士に確認することをお勧めします。
未支給年金の請求
死亡した月の年金は、死亡後に支払われていない「未支給年金」が発生することがあります。未支給年金は、一定の遺族(生計を同じくしていた配偶者・子等)が請求できます。
請求先は年金事務所で、死亡後5年以内に請求が必要です(時効5年)。受け取った未支給年金は「一時所得」として課税される場合があるため、受取金額によっては確定申告が必要になることもあります。
健康保険・公的医療保険の手続き
健康保険証の返却・資格喪失手続き
配偶者の死亡により、故人が加入していた健康保険の被保険者資格は自動的に喪失します。ただし、健康保険証の返却と資格喪失届の提出は自分で行う必要があります。
| 加入していた保険 | 手続き先 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 住所地の市区町村 | 死亡後14日以内 |
| 会社の健康保険(協会けんぽ等) | 勤務先または協会けんぽ | 死亡後5日以内 |
| 後期高齢者医療保険 | 住所地の市区町村 | 死亡後14日以内 |
配偶者の健康保険の被扶養者(扶養家族)だった場合は、自分の健康保険の加入手続きも必要です。国民健康保険への加入(住所地の市区町村)、または就労している場合は自分の勤務先の社会保険への加入切替を行います。
自分の健康保険加入手続き(扶養されていた場合)
亡くなった配偶者の扶養に入っていた場合、健康保険の喪失後は自分で健康保険に加入し直す必要があります。加入しないままでいると、医療費が全額自己負担になるリスクがあるため、できるだけ早く手続きしましょう。
| 加入先の選択肢 | 条件・特徴 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 就業していない・自営業の場合。住所地の市区町村へ死亡後14日以内に届出 |
| 勤務先の健康保険(協会けんぽ等) | 会社員の場合。勤務先経由で手続き |
| 任意継続被保険者 | 退職後2年以内であれば前職の保険を継続可能。退職後20日以内に申請 |
相続関連の手続き
遺言書の確認と検認
配偶者が亡くなったら、まず遺言書の有無を確認することが重要です。遺言書の内容によって、相続の進め方が大きく変わるからです。
自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所で検認の手続きが必要です(民法第1004条)。公正証書遺言の場合は検認不要です。検認を経ずに遺言書を開封・実行すると、5万円以下の過料に処せられる場合があります(戸籍法)。
また、法務局の「遺言書保管制度」を利用していた場合は、法務局で保管状況を確認できます。
相続人・相続財産の調査
相続手続きを進めるためには、まず誰が相続人になるか(法定相続人)の確認が必要です。
法定相続人の確認には、故人の出生から死亡までのすべての戸籍(戸籍謄本・改製原戸籍・除籍謄本)を収集する必要があります。前婚の子や認知した子がいる場合など、思わぬ相続人が判明することがあります。
相続財産の調査も並行して行います。預貯金・不動産・有価証券・生命保険・借金・ローン残高など、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も含めてリストアップします。借金がある場合は、相続放棄(死亡を知った日から3か月以内)の検討も必要です。
相続放棄の手続き
相続放棄の申述期限は「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」です(民法第915条)。この期限を過ぎると原則として相続放棄できなくなります。
相続放棄をすると、借金等のマイナス財産だけでなく、預貯金・不動産等のプラス財産も受け取れなくなります。相続財産の全体像を把握してから判断することが重要です。
相続放棄の申述先は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。必要書類は申述書・故人の戸籍謄本・申述人の戸籍謄本などです。3か月以内の判断が難しい場合は、家庭裁判所に期間の伸長申立を行うことができます。
遺産分割協議の進め方
相続人が複数いる場合(例:配偶者と子ども)、遺産分割協議を行い「誰がどの財産を受け取るか」を決める必要があります。
遺産分割協議が成立したら、相続人全員が署名・押印した遺産分割協議書を作成します。この書類は不動産の相続登記・銀行口座の名義変更などの際に必要になります。
協議が整わない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停・審判に進むことになります。
相続税の申告・納付
相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納付が必要です。期限は被相続人の死亡の日の翌日から10か月以内(国税通則法)です。
相続税の計算・申告は複雑なため、税理士への依頼を検討することをお勧めします。税理士報酬は遺産総額の0.5〜1.5%程度が目安とされています。
銀行口座・金融機関の手続き
銀行口座の凍結と解除
金融機関は、口座名義人の死亡を確認した時点で口座を凍結します。凍結後は預金の引き出しや振込が停止されます。
口座の凍結解除(相続手続き)には、相続人全員(または代表者)の協力が必要な場合がほとんどです。必要書類は金融機関によって異なりますが、一般的に以下のものが必要です。
- 相続届(各金融機関の所定用紙)
- 故人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(分割協議した場合)
- 故人の通帳・届出印
金融機関ごとに手続きが異なるため、まず取引のある金融機関に「相続手続きの相談窓口」を問い合わせるところから始めることをお勧めします。多くの銀行では「相続専用ダイヤル」を設けています。
なお、口座凍結後も「葬儀費用」として一定額(150万円を上限の目安)を引き出せる「預貯金の仮払い制度」が2019年の民法改正で設けられています(民法第909条の2)。急な葬儀費用が必要な場合はこの制度を活用することができます。
証券口座・株式の名義変更
故人が株式や投資信託などを保有していた場合、証券口座の相続手続きも必要です。証券会社ごとに手続きが異なりますが、遺産分割協議書・相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書などが必要になります。
証券口座の手続きは銀行口座と比べて複雑な場合があるため、早めに各証券会社に相談することをお勧めします。
不動産の相続登記
不動産の相続登記(2024年4月から義務化)
故人が不動産(土地・建物)を所有していた場合、相続による所有権移転登記(相続登記)が必要です。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました(不動産登記法改正)。相続を知った日から3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。すでに相続した不動産で登記が済んでいないものも対象となります(施行日から3年の猶予期間あり)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き先 | 不動産の所在地を管轄する法務局 |
| 期限 | 相続を知った日から3年以内(義務化) |
| 必要書類 | 相続登記申請書・故人の戸籍謄本一式・相続人の戸籍謄本・遺産分割協議書・印鑑証明書・固定資産評価証明書など |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
相続登記は自分で申請することも可能ですが、書類の収集・作成が複雑なため、司法書士に依頼するケースが多いです。司法書士費用は5〜15万円程度が目安とされています。
その他の行政手続き
介護保険の資格喪失届
配偶者が65歳以上で介護保険の被保険者だった場合、死亡により資格が自動的に喪失しますが、介護保険証の返却と資格喪失の届出を住所地の市区町村に行う必要があります。期限の目安は死亡後14日以内です。
なお、亡くなった月の介護保険料は日割り計算で調整されます。過払い分が返還される場合もあります。
高額療養費・葬祭費の申請
亡くなる前に高額な医療費を支払っていた場合、加入していた健康保険から高額療養費の払い戻しを受けられる場合があります。申請期限は診療を受けた日の翌日から2年以内(健康保険法)です。
また、国民健康保険に加入していた場合、葬祭費(自治体によって3〜7万円程度)が支給される場合があります。協会けんぽ加入の場合は埋葬料(5万円)の請求ができます。申請を忘れるケースが多いため、加入していた保険の窓口に問い合わせることをお勧めします。
運転免許証・パスポートの返納
故人の運転免許証・パスポートは、死亡によって効力を失います。法律上の返納義務はありませんが、悪用リスクを避けるためにも、警察署(運転免許証)や旅券事務所(パスポート)に返納することをお勧めします。
クレジットカードの解約
故人が保有していたクレジットカードは、死亡後に各カード会社に連絡して解約手続きを行います。年会費や引き落としが継続されるリスクがあるため、早めの対応が望ましいです。
故人のカードで家族カードを利用していた場合も、本会員の死亡により家族カードは使用できなくなります。
公共料金・各種サービスの名義変更または解約
電気・ガス・水道・インターネット・携帯電話など、故人名義の公共料金・サービスについても手続きが必要です。
- 引き続き利用する場合は「名義変更」
- 利用しない場合は「解約」
特に携帯電話は、契約によっては残債(端末分割代金)が発生している場合があるため、キャリアに確認することをお勧めします。
見落としがちな手続きと注意点
デジタル遺品(SNS・ネットバンキング・電子マネー)の整理
近年増えているのが、デジタル遺品に関する手続きです。故人がSNS・オンラインバンキング・電子マネー・サブスクリプションサービスなどを利用していた場合、それぞれの規約に従った手続きが必要です。
特に電子マネー(交通系ICカード・QRコード決済など)は残高の扱いがサービスによって異なります。PayPay等のQRコード決済では、残高の払い戻し手続きが可能なサービスもあります。各サービスの利用規約を確認し、必要に応じて問い合わせを行ってください。
ネットバンキングは通帳(物理的な紙)が存在しない場合があるため、故人が利用していた銀行を把握できていないケースもあります。故人のメールボックスや通知メール・履歴から口座を確認することも有効です。
所得税の準確定申告
故人が個人事業主・フリーランスだった場合、または年間所得が2,000万円超・給与所得以外が20万円超だった場合などは、準確定申告が必要です。
準確定申告の期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内(所得税法第124条)です。
一般的な会社員の場合は、勤務先が年末調整の代わりに手続きを行うため、準確定申告が不要なことがほとんどです。ただし、医療費控除・ふるさと納税の申告などがある場合は別途確認が必要です。
固定資産税・住民税の手続き
故人が不動産(土地・建物)を所有していた場合、固定資産税の名義変更手続きも必要です。相続登記が完了すると、次回の固定資産税は相続人の名義で課税されます。
住民税については、亡くなった年分の住民税が故人の遺産(相続財産)から支払われることになります。未納分がある場合は相続人が納税義務を引き継ぎます。
手続きの際に注意したい「期限切れ」のリスク
期限を過ぎると不利益が生じる手続き一覧
配偶者が亡くなった後の手続きの中には、期限を過ぎると取り返しのつかない不利益が生じるものがあります。特に以下の手続きは、期限を意識して早めに対応することが重要です。
| 手続き | 期限 | 期限を過ぎた場合のリスク |
|---|---|---|
| 死亡届の提出 | 死亡を知った日から7日以内 | 戸籍法上の義務違反(5万円以下の過料) |
| 相続放棄の申述 | 相続を知った日から3か月以内 | 単純承認とみなされ負債も引き継ぐ |
| 準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日から4か月以内 | 延滞税・無申告加算税が発生する可能性 |
| 遺族年金の請求 | 時効:5年 | 5年を超えた部分は時効で受取不可 |
| 相続税の申告・納付 | 死亡の翌日から10か月以内 | 延滞税・無申告加算税・過少申告加算税 |
| 未支給年金の請求 | 時効:5年 | 5年を超えると時効 |
| 高額療養費の申請 | 診療月の翌日から2年以内 | 2年を超えると時効で受取不可 |
| 相続登記(不動産) | 相続を知った日から3年以内 | 10万円以下の過料(2024年4月〜) |
特に相続放棄は一度期限を過ぎると原則として行えなくなります。相続財産の中に多額の借金が含まれている場合、気づいたときには手遅れ——という状況は実際に起きています。「財産がないから相続放棄は関係ない」と思っていたら、後から借金の存在が判明したというケースもあります。
相続財産の全体像が把握できていない段階でも、3か月以内に家庭裁判所へ「相続放棄の期間伸長申立」を行うことで、調査期間を延ばすことができます。迷っている場合は早めに弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
遺族年金の「もらい忘れ」に注意
意外と多いのが遺族年金の「もらい忘れ」です。遺族年金は自動的に支給が始まるわけではなく、自分で請求しなければ受け取れません。
「申請を忘れていた」「申請できると知らなかった」という理由で受け取れていなかったケースは珍しくありません。遺族基礎年金・遺族厚生年金は5年以内であれば過去分を遡って請求できます。「もしかしたら受給できるかもしれない」と思ったら、年金事務所に問い合わせてみましょう。
なお、会社員の夫が亡くなった場合の遺族厚生年金は、妻の年齢・子どもの有無によって受給額が変わります。60歳未満の妻(子なし)は原則として遺族厚生年金が支給されない(5年間の有期年金となる場合がある)など、条件が複雑なため、個別に確認することが必要です。
手続き窓口の選び方・まとめて済ませるコツ
「まとめてできる窓口」を最大限活用する
市区町村の窓口では、近年「ワンストップサービス」として複数の手続きを一度に受け付けてくれる体制を整えている自治体が増えています。事前に「どの手続きをまとめてできるか」を電話で確認してから窓口に行くと、複数回の来庁を減らせます。
| 窓口 | 対応できる主な手続き |
|---|---|
| 市区町村窓口 | 死亡届・世帯主変更・国民健康保険・介護保険・国民年金・住民票・戸籍謄本発行 |
| 年金事務所 | 年金受給停止・遺族年金請求・未支給年金請求 |
| 法務局 | 相続登記・遺言書保管状況の確認 |
| 家庭裁判所 | 相続放棄・遺言書検認・遺産分割調停 |
| 税務署 | 相続税申告・準確定申告 |
専門家に任せるべき手続き・自分でできる手続き
すべての手続きを自分一人で行う必要はありません。複雑な手続きや判断が必要なものは専門家に任せることで、時間・精神的負担を大きく軽減できます。
| 手続き | 専門家 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 相続登記(不動産の名義変更) | 司法書士 | 5〜15万円程度 |
| 相続税の申告 | 税理士 | 遺産総額の0.5〜1.5%程度 |
| 遺産分割協議(揉めた場合) | 弁護士 | 着手金10〜30万円程度〜 |
| 遺言書の作成・遺産整理全般 | 行政書士・司法書士・弁護士 | 内容により異なる |
| 年金相談・遺族年金申請 | 社会保険労務士 | 3〜10万円程度 |
よくある質問(FAQ)
Q: 死亡届はどのような人が提出できますか?
A: 死亡届を提出できるのは、同居の親族・その他の同居者・家主・地主・後見人・後見監督人・または親族などです(戸籍法第87条)。配偶者が亡くなった場合は、生存配偶者が届出人になるのが一般的です。また、葬儀社が委任を受けて代理提出することも多いです。
Q: 銀行口座の凍結はいつ行われますか?
A: 銀行が名義人の死亡を確認した時点で凍結されます。自動的に情報が伝わるわけではなく、遺族や葬儀社から金融機関に死亡の連絡が入ったタイミングで凍結されることが多いです。凍結前に生活費や葬儀費用を出金しておくことは法律上問題ありませんが、後に相続問題に発展しないよう、金額の記録や領収書の保管を心がけることをお勧めします。
Q: 遺族年金の受給はいつから始まりますか?
A: 遺族年金は請求した翌々月分から支払われるのが一般的です(偶数月に2か月分まとめて支払い)。死亡から請求まで時間がかかった場合も、5年以内であれば過去分を遡って受け取ることができます。できるだけ早く請求手続きを行うことをお勧めします。
Q: 相続手続きを一括して頼める専門家はいますか?
A: 相続手続きをまとめて依頼できる専門家として、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などがいます。相続に強い司法書士や弁護士事務所では、「相続手続き一括サポート」として戸籍収集から登記・金融機関手続きまで代行するサービスを提供しているところも多いです。相続財産の総額・相続人の関係・トラブルの有無に応じて、どの専門家に依頼するかを選ぶとよいでしょう。
Q: 手続きが多すぎて何から始めればよいかわかりません。
A: まずは「死亡届の提出(7日以内)」「年金受給停止」「健康保険の資格喪失」の3つを最優先に進めてください。次に「相続放棄の期限(3か月以内)」を確認した上で、相続財産の調査を始めましょう。お住まいの市区町村によっては「おくやみコーナー」などで複数の手続きを一度に案内してくれるところもあります。まず市区町村の窓口に「配偶者が亡くなったのですが、何から手続きすればよいですか」と電話で問い合わせるのが最も確実です。
まとめ:手続き一覧チェックリスト
配偶者が亡くなった後の手続きを一覧にまとめます。手続きが済んだらチェックし、漏れがないか確認してください。
緊急対応期(7〜14日以内)
- □ 死亡届の提出(7日以内)・火葬許可証の取得
- □ 世帯主変更届(14日以内)
- □ 年金受給停止の届出(厚生年金10日以内・国民年金14日以内)
- □ 健康保険証の返却・資格喪失届
- □ 介護保険証の返却(14日以内)
1か月以内
- □ 遺族年金の請求(できるだけ早く)
- □ 未支給年金の請求
- □ 健康保険への新規加入(自分の加入手続き)
- □ 高額療養費・葬祭費の申請
- □ 遺言書の確認・検認(自筆証書遺言の場合)
- □ 銀行口座の凍結解除・相続手続き開始
3か月以内
- □ 相続人・相続財産の調査完了
- □ 相続放棄の検討・申述(3か月以内)
- □ 準確定申告(個人事業主等・4か月以内)
10か月以内
- □ 遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
- □ 相続登記(不動産の名義変更・3年以内だが早めに)
- □ 銀行口座・証券口座の名義変更
- □ 相続税の申告・納付(10か月以内)
随時対応
- □ クレジットカードの解約
- □ 公共料金・サービスの名義変更または解約
- □ 運転免許証・パスポートの返納
- □ デジタル遺品(SNS・電子マネー)の整理
配偶者を亡くされた直後は、心身ともに疲弊しています。すべてを一人で抱え込まず、家族・親族や専門家の力を借りながら、一つひとつ進めていくことが大切です。わからないことがあれば、市区町村の窓口・年金事務所・法テラスなどに遠慮なく問い合わせてください。
本記事は2024年4月時点の法令に基づいています。法令の改正や自治体によって手続きの内容・期限が異なる場合があります。個別の事情については、弁護士・税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。
