遺言書の書き方完全ガイド|自筆証書・公正証書・秘密証書の違いと選び方【2026年最新】

「遺言書を書いておきたいけれど、何から始めればいいのかわからない」「自筆で書いた遺言書は本当に有効なのか不安」——そのような疑問をお持ちの方は多くいらっしゃいます。遺言書は、亡くなった後に自分の意思を確実に伝えるための重要な法的文書です。しかし書き方を間違えると、せっかく書いても無効になる可能性があります。

本記事では、遺言書の3種類(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)の違いから、それぞれの書き方・手順・費用・注意点まで、2026年時点の最新情報を基に詳しく解説します。相続する財産の種類別の記載文例も掲載していますので、実際に遺言書を作成する際の参考にしてください。

目次

遺言書の種類と特徴|3種類を徹底比較

遺言書には法律で定められた3つの種類があります。それぞれに特徴・メリット・デメリットがあり、自分の状況に合ったものを選ぶことが大切です。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言書の全文・日付・氏名を自筆(手書き)で書き、押印する遺言書です。費用がかからず、いつでも一人で作成できる点が最大のメリットです。

2019年の民法改正により、財産目録についてはパソコン作成や通帳のコピーの添付が認められるようになりました。また、2020年からは法務局での保管制度(自筆証書遺言書保管制度)が始まり、紛失・改ざんのリスクを防げるようになっています。

自筆証書遺言は費用ゼロで作成できますが、形式不備による無効リスクがあります。特に「全文自書」「日付」「氏名」「押印」の4要件はすべて満たす必要があります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認しながら作成する遺言書です。公証役場で作成し、原本は公証役場に保管されます。最も確実性が高く、紛失・偽造のリスクがなく、家庭裁判所の検認が不要という大きなメリットがあります。

費用は財産の総額によって異なりますが、数万円程度が目安です。証人2名が必要となります。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は、遺言内容を秘密にしたまま、その存在だけを公証人に証明してもらう方法です。遺言書の内容は誰にも知られず、パソコンでの作成も可能ですが、公正証書遺言に比べてメリットが少ないため、現在はあまり利用されていません。

3種類の遺言書比較表

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 本人が全文自書 公証人が作成 本人作成・公証人が存在証明
費用 無料(保管制度利用時は3,900円) 数万円〜 1万1,000円程度
証人 不要 2名必要 2名必要
家裁の検認 必要(保管制度利用時は不要) 不要 必要
紛失リスク あり(保管制度で解消) なし あり
内容の秘密保持 可能 公証人・証人に開示 完全秘密
無効リスク 高い(形式不備の場合) 低い 中程度
向いている人 費用を抑えたい方 確実に効力を持たせたい方 内容を秘密にしたい方

自筆証書遺言の書き方|有効な遺言書を作成するための要件

自筆証書遺言を有効に作成するためには、民法に定められた要件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると遺言書全体が無効になる場合があります。

4つの必須要件

自筆証書遺言が有効となるための必須要件は以下の4点です。

  1. 全文自書:財産目録を除く本文全体を、遺言者本人が手書きすること。代筆・ワープロ打ちは無効。
  2. 日付の記載:「令和○年○月○日」と具体的な日付を自書すること。「○月吉日」のような曖昧な表記は無効。
  3. 氏名の自書:フルネームを自書すること。通称でも有効な場合があるが、戸籍上の氏名が望ましい。
  4. 押印:認め印でも法的には有効だが、実印の使用が推奨される。
日付は必ず「年・月・日」すべてを記載してください。「令和○年○月○日」の形式が最も確実です。日付が不明確な場合、遺言書全体が無効となることがあります。

財産目録の作成方法(2019年改正後)

2019年1月の民法改正により、財産目録についてはパソコンで作成したものや、通帳・登記事項証明書のコピーを添付することが認められました。ただし、財産目録の各ページに遺言者本人が署名・押印する必要があります(両面印刷の場合は両面に)。

財産目録に記載すべき主な内容:

  • 不動産(所在地・地番・家屋番号・面積など)
  • 預貯金(金融機関名・支店名・口座種別・口座番号)
  • 有価証券(証券会社名・口座番号・銘柄・株数など)
  • その他の財産(生命保険・車・貴重品など)
  • 負債(借入金・住宅ローンなど)

書き方の基本フォーマットと注意点

遺言書の冒頭には「遺言書」または「遺言状」と記載し、本文には財産を誰に相続・遺贈するかを明確に記載します。最後に日付・氏名を書き、押印して完成です。

用紙は特に規定はありませんが、A4サイズの白紙が一般的です。鉛筆や消えるボールペンは避け、消えにくい黒インクのボールペンや万年筆を使用しましょう。

公正証書遺言の作成手順|公証役場での手続きを詳解

公正証書遺言は作成に手間と費用がかかりますが、最も確実な遺言書の形式です。作成手順を詳しく解説します。

事前準備と必要書類

公証役場に行く前に、以下の書類を準備します。

  • 遺言者の印鑑証明書(発行から3か月以内)
  • 遺言者の実印
  • 相続人の戸籍謄本(相続人の本人確認のため)
  • 不動産の登記事項証明書(不動産を遺贈・相続させる場合)
  • 固定資産評価証明書(不動産の評価額確認のため)
  • 預金通帳のコピー(預貯金がある場合)
  • 証人2名の住所・氏名・生年月日・職業のメモ
証人には相続人・受遺者・その配偶者や直系血族はなれません。信頼できる知人や弁護士・司法書士に依頼するか、公証役場で紹介してもらうことも可能です。

公証役場での手続きの流れ

公正証書遺言の作成は、一般的に以下の流れで進みます。

  1. 公証役場への相談・予約:事前に電話またはメールで相談・予約を入れます。遺言の内容の概要を伝えておくとスムーズです。
  2. 遺言内容の草案提出:作成したい遺言の内容を公証人に伝え、草案を作成してもらいます。
  3. 草案の確認・修正:公証人が作成した草案を確認し、必要に応じて修正を依頼します。
  4. 正式作成・署名押印:公証役場で証人2名とともに遺言書の内容を確認し、署名・押印します。
  5. 原本の保管:原本は公証役場に20年間保管されます(遺言者が120歳になるまで)。遺言者には「正本」と「謄本」が渡されます。

公正証書遺言の費用

公正証書遺言の作成費用は、財産の総額(遺産の価額)に応じた公証人手数料が必要です。

財産の価額 公証人手数料
100万円以下 5,000円
100万円超200万円以下 7,000円
200万円超500万円以下 11,000円
500万円超1,000万円以下 17,000円
1,000万円超3,000万円以下 23,000円
3,000万円超5,000万円以下 29,000円
5,000万円超1億円以下 43,000円
1億円超3億円以下 43,000円+5,000万円超過ごとに13,000円加算

上記のほか、証人立会料(1名につき7,000円程度)、用紙代、正本・謄本の手数料(1枚250円)などが別途かかります。弁護士や司法書士に依頼する場合は、別途専門家報酬が必要です。

法務局による自筆証書遺言書保管制度|紛失・改ざんを防ぐ新制度

2020年7月から始まった「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に基づく制度で、法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言書を預けることができます。

制度の概要と手続き方法

この制度を利用すると、以下のメリットがあります。

  • 遺言書の紛失・改ざん・隠匿を防止できる
  • 相続開始後の家庭裁判所による検認が不要になる
  • 遺言書情報証明書の交付・閲覧請求ができる
  • 相続人等への通知(関係遺言書保管通知)サービスがある

手続きには、遺言者本人が法務局(遺言書保管所)に予約の上、直接出向く必要があります。代理人による手続きは認められていません。

法務局保管制度の手数料は1件3,900円です。保管後でも遺言書の内容を変更したい場合は、保管の申請を撤回して新たに作成・申請し直す必要があります。

保管制度利用時の必要書類

法務局に遺言書を預ける際に必要な書類:

  • 自筆証書遺言書(所定の様式に沿って作成したもの)
  • 申請書
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きのもの)
  • 本籍の記載がある住民票の写し(作成後3か月以内)

保管制度の限界と注意点

法務局の保管制度は遺言書の形式チェックを行いますが、内容の法的有効性を保証するものではありません。例えば遺留分を侵害する内容でも保管されます。また、保管された遺言書でも相続人間での争いを完全には防げません。

確実に意思を実現したい場合は、公正証書遺言の作成が引き続き推奨されます。

遺言書に記載すべき内容|財産・相続人の明確な特定方法

遺言書の効力を確かなものにするためには、財産と相続人・受遺者を正確に特定して記載することが重要です。曖昧な表現は、後になって争いのもとになります。

不動産の記載方法と文例

不動産は登記簿(登記事項証明書)の記載に従い、正確に記載します。

土地の記載例:

東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

所在 東京都〇〇区〇〇町〇丁目

地番 〇番〇

地目 宅地

地積 〇〇.〇〇平方メートル

上記不動産を、長男 〇〇 〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

建物の記載例:

所在 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地〇

家屋番号 〇番〇

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル、2階 〇〇.〇〇平方メートル

上記不動産を、妻 〇〇 〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

預貯金の記載方法と文例

預貯金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号を明記します。

預金の記載例:

〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号 〇〇〇〇〇〇〇

上記預金口座の預金債権を、二男 〇〇 〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に遺贈する。

相続人には「相続させる」、相続人以外の第三者(受遺者)には「遺贈する」という表現を使い分けましょう。表現を間違えると手続きが複雑になる場合があります。

その他の財産・包括条項の記載例

有価証券や車、その他の財産の記載例と、記載漏れを防ぐための包括条項の文例です。

有価証券の記載例:

〇〇証券 〇〇支店 口座番号 〇〇〇〇〇〇〇に係る全ての有価証券を、長女 〇〇 〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

包括条項(残余財産)の記載例:

上記のほか、遺言者の有する一切の財産を、妻 〇〇 〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

遺言執行者の指定例:

本遺言の執行者として、長男 〇〇 〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)を指定する。

遺言書が無効にならないための注意点|よくある失敗と対策

遺言書が形式上の不備で無効になってしまうと、相続人間での争いや遺産分割協議が必要になります。よくある失敗とその対策を確認しておきましょう。

形式上の不備による無効リスク

自筆証書遺言における代表的な無効原因:

  • 代筆や共同遺言:本人以外が書いた、または夫婦が同じ紙に連名で書いた場合は無効
  • 日付の記載ミス:日付がない、または「〇月吉日」のような不確定な表記
  • 押印漏れ:署名はあっても押印がない場合は無効
  • 財産・相続人の特定不足:「自宅を長男に」のような曖昧な表記(特定できない場合)
  • 訂正方法の誤り:修正テープや修正液を使用。正しい訂正方法は、変更箇所を二重線で消し、余白に正しい内容を書き、変更した旨を付記して押印する
遺言書を訂正する場合は「〇行目〇字削除〇字追加」などと変更箇所と変更内容を明記し、遺言者が署名・押印する必要があります。修正テープ・修正液の使用は絶対に避けてください。

遺留分への配慮

遺言書は自由に作成できますが、法律で定められた「遺留分」を侵害する内容は、後に遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)を受ける可能性があります。

遺留分が認められる相続人と割合:

  • 配偶者・子(直系卑属):相続分の1/2
  • 父母(直系尊属のみが相続人の場合):相続分の1/3
  • 兄弟姉妹:遺留分なし

遺言書を作成する際には、遺留分を侵害しないよう財産の分配を考慮するか、遺留分相当額の代償措置(生命保険の活用等)を検討しておくことが重要です。

複数の遺言書がある場合の取り扱い

複数の遺言書がある場合、原則として最新の日付のものが有効となります。ただし、同じ財産について異なる内容が記載されている場合は最新のものが優先されますが、異なる財産について書かれている場合は両方が有効となります。

遺言書を書き直したい場合は、新しい遺言書を作成して「本遺言書は、以前の遺言書をすべて撤回・取り消す」という文言を入れておくと確実です。

遺言書作成の費用比較|弁護士・司法書士への依頼も検討

遺言書の作成を専門家に依頼する場合の費用と、自分で作成する場合の費用を比較します。

自分で作成する場合の費用

自筆証書遺言を自分で作成する場合、基本的に費用はかかりません。法務局の保管制度を利用する場合は3,900円の手数料が必要です。

項目 費用
自筆証書遺言(自作) 無料
自筆証書遺言+法務局保管 3,900円
公正証書遺言(本人手続き) 公証人手数料のみ(財産額による)

専門家に依頼する場合の費用相場

弁護士・司法書士・行政書士に依頼する場合の費用相場は以下の通りです(地域・事務所によって異なります)。

専門家 費用相場(遺言書作成) 特徴
弁護士 30万円〜50万円程度 複雑な相続問題・紛争リスクがある場合に適する
司法書士 10万円〜30万円程度 不動産登記が絡む相続に強い
行政書士 5万円〜15万円程度 比較的費用が抑えられる・相続手続き全般に対応
公証人(公正証書遺言) 公証人手数料のみ 最も確実な遺言書・証人費用も必要
遺産総額が5,000万円を超える場合や、相続人間の関係が複雑な場合、事業承継が絡む場合などは、弁護士や司法書士への依頼を強く推奨します。専門家の費用は相続財産の規模に比べると小さく、将来の紛争防止のための投資といえます。

費用を抑えるための方法

遺言書作成の費用を抑えるためのポイント:

  • 財産が比較的シンプルで相続人関係が明確な場合は自筆証書遺言で自作する
  • 法務局保管制度を活用して公証費用を節約する
  • 公正証書遺言の草案を自分で作成した上で公証役場に相談することで専門家報酬を節約する
  • 地域の無料法律相談(市区町村・弁護士会・司法書士会など)を活用する

遺言書作成に関するよくある質問

遺言書の作成に際してよく寄せられる疑問についてお答えします。

遺言書はいつ書けばよいか・何歳から書けるか

民法上、遺言書は満15歳以上であれば誰でも作成できます。ただし、作成時に意思能力(自分の行為の結果を理解できる能力)が必要です。認知症が進んでいる場合は遺言能力が問題となることがあります。

遺言書を書くタイミングに決まりはありません。健康なうちに書き、その後の状況変化(財産の増減・家族の変化など)に応じて書き直すことが大切です。「終活」の一環として50代〜60代から準備を始める方が増えています。

遺言書は何度でも書き直せるか

遺言書は何度でも書き直すことができます。最新の日付の遺言書が有効となるため、状況が変わった際には随時更新することが可能です。

ただし、古い遺言書が残っていると後でトラブルになることがあります。新しい遺言書を作成したら、古い遺言書は明示的に撤回するか、破棄しておくことが望ましいです。

エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートは自分の人生の記録や希望を書き残す「覚え書き」であり、法的効力はありません。一方、遺言書は民法に定められた形式を満たすことで法的効力を持ちます。

エンディングノートには葬儀の希望・医療・介護に関する意思・デジタル遺産の情報なども記載でき、遺言書を補完する役割を果たします。両方を活用することで、より充実した終活が実現できます。

子供がいない場合の遺言書の重要性

子供がいない夫婦の場合、配偶者が亡くなった際に法定相続では義理の兄弟姉妹も相続人になる可能性があります(配偶者と義兄弟姉妹が共同相続人となるケース)。遺言書で「全財産を配偶者に相続させる」と明記しておくことで、こうした事態を回避できます。

子のいない夫婦にとって、遺言書は特に重要な終活ツールといえます。

まとめ|遺言書作成のポイントと次のステップ

遺言書の作成は、自分の大切な財産と気持ちを確実に次世代に伝えるための重要な行動です。本記事のポイントを振り返ります。

遺言書の種類別・選び方のまとめ

  • 費用をかけずに手軽に作成したい→ 自筆証書遺言(法務局保管制度の活用を推奨)
  • 確実に法的効力を持たせたい・財産が多い・相続関係が複雑→ 公正証書遺言
  • 内容を完全に秘密にしたい→ 秘密証書遺言(ただし利用ケースは限定的)

作成前に確認すべき3つのこと

  1. 相続財産の全体像を把握する:不動産・預貯金・有価証券・保険・負債など全財産をリストアップする
  2. 相続人・受遺者を確認する:法定相続人の範囲と遺留分を確認した上で、誰に何を相続させるか決める
  3. 遺言執行者を指定する:遺言書の内容を実現するための遺言執行者を事前に決めておく

専門家への相談を検討すべきケース

以下のようなケースでは、弁護士・司法書士などの専門家への相談を強く推奨します。

  • 相続人間で対立が予想される場合
  • 事業承継(会社・農地など)が関わる場合
  • 認知症の症状がある方が遺言書を作成する場合
  • 外国籍の相続人・在外財産がある場合
  • 内縁の配偶者や認知した子供への遺贈がある場合

遺言書は一度作成したら終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。結婚・離婚・子供の誕生・財産の変化など、人生の節目に遺言書を確認・更新する習慣をつけましょう。


※本記事は2026年3月時点の法令・制度に基づいて作成しています。法律・制度は改正される場合があります。遺言書の作成にあたっては、最新の情報を確認するとともに、必要に応じて弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。

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