【完全ガイド】相続で借金があるか調べる方法|CIC・JICC・KSC開示請求の手順と費用・期限内の対処法

親や配偶者が亡くなった直後、残された財産を整理する中で「もしかして借金があるのでは」と不安になる方は少なくありません。

自宅の書類を探しても契約書や督促状が見つからず、借金の有無すら分からない状況では、相続放棄の期限(3ヶ月)が迫る中で焦りと混乱が募ります。

本記事では、信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求を中心に、被相続人の借金を確実に調べる方法・費用・必要書類・開示報告書の見方・借金が見つかった場合の対処法まで、相続手続きの専門家が詳しく解説します。

相談者

父が亡くなったのですが、借金があるかどうか分からなくて不安です。どうやって調べればいいのでしょうか?

目次

相続で借金を調べる必要性|なぜ確認が必要なのか

相続は、亡くなった方(被相続人)の財産を引き継ぐ手続きです。

しかし、相続の対象となるのは不動産や預金といったプラス財産だけではなく、借金や保証債務といったマイナス財産も含まれます

民法第896条では「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められており、借金を見落としたまま相続してしまうと、相続人が返済義務を負うことになります。

だからこそ、被相続人に借金があるかどうかを早期に確認することが不可欠なのです。

借金も相続の対象|プラス財産とマイナス財産

相続財産には、大きく分けて「プラス財産」と「マイナス財産」があります。

プラス財産とは、不動産・預貯金・有価証券・生命保険金(受取人指定がない場合)・自動車・貴金属などの資産を指します。

一方、マイナス財産とは、住宅ローン・カードローン・クレジットカードの未払い債務・消費者金融からの借入・保証債務・連帯保証人としての責任などの負債を指します。

相続では、プラス財産だけを選んで引き継ぐことはできず、マイナス財産も一緒に相続するのが原則です。

たとえば、被相続人が住宅ローンを組んでいた場合、ローンの残債は相続人が引き継ぐことになります。

また、クレジットカードのキャッシング枠やショッピング枠の未払い分、消費者金融のカードローン残高も相続の対象です。

さらに注意が必要なのは、保証債務や連帯保証人としての責任です。

被相続人が誰かの借金の連帯保証人になっていた場合、その保証債務も相続人に引き継がれるため、主債務者が返済できなくなると相続人が代わりに返済する義務を負います。

こうしたマイナス財産を見落とすと、相続後に突然債権者から請求が来て、予想外の負担を強いられるケースがあるのです。

相続放棄の期限は3ヶ月|早期調査が重要な理由

相続放棄や限定承認(後述)を選択する場合、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申述する必要があります(民法第915条)。

この3ヶ月という期間を「熟慮期間」と呼びます。

熟慮期間内に何も手続きをしなかった場合、自動的に「単純承認」をしたとみなされ、プラス財産もマイナス財産もすべて無条件で相続することになります。

期限を過ぎてから借金が判明しても、原則として相続放棄はできません

つまり、借金の調査は時間との勝負なのです。

実際に、相続開始から3ヶ月が経過した後に多額の借金が発覚し、相続放棄ができずに返済義務を負うことになったケースも少なくありません。

ただし、「相続財産がまったくないと信じており、かつそう信じたことに相当な理由がある場合」には、借金の存在を知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄が認められるケースもあります(最高裁昭和59年4月27日判決)。

しかし、こうした例外的な対応は確実ではないため、相続開始後すぐに借金の有無を調査することが最も重要です。

⚠ 注意ポイント

  • 相続放棄・限定承認の期限は「相続開始を知った時から3ヶ月以内」
  • 期限を過ぎると自動的に単純承認となり、借金も相続する
  • 借金調査は相続開始後すぐに着手することが重要

相続で借金を調べる5つの方法

被相続人に借金があるかどうかを調べる方法は複数ありますが、最も確実なのが信用情報機関への開示請求です。

ただし、信用情報機関だけでは把握できない借金もあるため、他の調査方法も併用することをお勧めします。

ここでは、借金を調べる5つの方法を具体的に解説します。

【最重要】信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求

信用情報機関への開示請求は、被相続人の借金を網羅的に把握できる最も確実な方法です。

日本には、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つの信用情報機関があります。

それぞれの機関に加盟している金融機関の種類が異なるため、3機関すべてに開示請求を行うことで、借金の有無を漏れなく調査できます

CICは主にクレジット会社・信販会社が加盟しており、クレジットカードのキャッシング・ショッピングローン・自動車ローンなどの情報が登録されています。

JICCは消費者金融・保証会社・クレジット会社など幅広い事業者が加盟しており、消費者金融のカードローンや保証会社の保証債務情報を確認できます。

KSCは銀行・信用金庫・農協などの金融機関が加盟しており、住宅ローン・カードローン・教育ローンなどの情報を管理しています。

1機関だけに開示請求しても、他の機関に登録されている借金は把握できません。

たとえば、CICだけに請求した場合、銀行の住宅ローンや消費者金融の借入は見落とす可能性があります。

必ず3機関すべてに開示請求を行い、借金の全体像を把握することが重要です。

自宅の書類・郵便物の確認

信用情報機関への開示請求と並行して、被相続人の自宅に残されている書類や郵便物を確認することも有効です。

契約書・督促状・振込明細・通帳記録・クレジットカードの明細などが見つかれば、金融機関名や借入額を特定できます。

特に、以下のような書類は重要な手がかりになります。

  • 金銭消費貸借契約書:住宅ローンやカードローンの契約書
  • クレジットカード明細:キャッシング枠やショッピング枠の未払い残高
  • 督促状・催告書:債権者からの支払い要求の通知
  • 通帳の引き落とし記録:定期的な返済や利息の引き落としがないか確認
  • 郵便物:債権者からの請求書や契約更新の案内

また、被相続人が利用していたメールアカウントやスマートフォンの履歴も確認することをお勧めします。

最近では、オンライン完結型のローンやクレジットカードも増えており、紙の契約書が残っていないケースもあるためです。

相談者

書類を探してもローンの契約書が見つからないのですが、これは借金がないということでしょうか?

いいえ、契約書が見つからないからといって借金がないとは限りません。

オンライン契約や電子契約の場合、紙の契約書が存在しないこともあります。

そのため、書類確認と信用情報機関への開示請求を併用することが重要です。

不動産登記簿謄本の取得

被相続人が不動産を所有していた場合、法務局で登記簿謄本を取得し、抵当権が設定されているかどうかを確認します。

抵当権とは、住宅ローンなどの借入金の担保として不動産に設定される権利のことです。

登記簿謄本の「乙区(所有権以外の権利に関する事項)」欄を確認すると、抵当権の有無・債権額・債権者(金融機関名)が記載されています。

抵当権が設定されている場合、住宅ローンの残債がある可能性が高いため、金融機関に問い合わせて残債額を確認する必要があります。

登記簿謄本は、最寄りの法務局窓口またはオンライン請求(登記情報提供サービス)で取得できます。

手数料は窓口請求で600円、オンライン請求で334円です。

金融機関への問い合わせ

被相続人が取引していた可能性のある金融機関に直接問い合わせる方法もあります。

通帳やキャッシュカードが見つかった場合、その金融機関に口座の残高照会と併せて借入の有無を確認します。

問い合わせの際には、以下の書類が必要になるケースが一般的です。

  • 戸籍謄本(相続人であることを証明)
  • 被相続人の死亡を証明する書類(除籍謄本または死亡診断書)
  • 相続人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)

ただし、金融機関によっては問い合わせに応じない場合や、回答に時間がかかる場合もあります。

また、取引のない金融機関を特定するのは困難なため、信用情報機関への開示請求と併用することで調査の精度を高めることが重要です。

市区町村役場での名寄帳・固定資産税納税通知書の確認

被相続人が所有していた不動産を網羅的に把握するため、市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得します。

名寄帳とは、その市区町村内で被相続人が所有する不動産の一覧表のことです。

名寄帳を確認することで、自宅以外に所有している土地や建物がないかを調べることができます。

また、毎年4月頃に送付される「固定資産税納税通知書」にも、所有不動産の情報が記載されています。

不動産が複数ある場合、それぞれに抵当権が設定されている可能性があるため、登記簿謄本を取得して担保設定の有無を確認します。

💡 調査のポイント

  • 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求が最も確実
  • 自宅の書類・郵便物の確認も併用する
  • 不動産がある場合は登記簿謄本で抵当権を確認
  • 金融機関への直接問い合わせも有効
  • 複数の調査方法を組み合わせることで漏れを防ぐ

信用情報機関(CIC・JICC・KSC)とは?|3機関の違いと特徴

信用情報機関とは、個人の借入・返済状況などの信用情報を収集・管理・提供する機関です。

日本には、CIC・JICC・KSCの3つの信用情報機関があり、それぞれ加盟している金融機関の種類や登録されている情報の内容が異なります。

3機関すべてに開示請求を行うことで、被相続人の借金を漏れなく調査できます

信用情報機関 主な加盟機関 登録される主な情報
CIC
(株式会社シー・アイ・シー)
クレジット会社
信販会社
リース会社
クレジットカードのキャッシング・ショッピング利用
信販会社の分割払い
自動車ローン
JICC
(株式会社日本信用情報機構)
消費者金融
保証会社
クレジット会社
銀行
消費者金融のカードローン
保証会社の保証債務
クレジットカードの利用
KSC
(全国銀行個人信用情報センター)
銀行
信用金庫
信用組合
農協
住宅ローン
銀行のカードローン
教育ローン
自動車ローン

CIC(シー・アイ・シー)|クレジット会社・信販会社系

CICは、主にクレジット会社や信販会社が加盟する信用情報機関です。

クレジットカードのキャッシング枠やショッピング枠の利用状況、信販会社の分割払い契約、自動車ローンなどの情報が登録されています。

クレジットカードは多くの方が利用しているため、CICの開示請求は必須といえます。

たとえば、被相続人がクレジットカードでキャッシングを繰り返していた場合、その残高や返済状況がCICに記録されています。

また、家電製品や自動車の分割払い契約もCICに登録されるため、未払い分がないかを確認できます。

JICC(日本信用情報機構)|消費者金融・保証会社系

JICCは、消費者金融・保証会社・クレジット会社・銀行など、幅広い事業者が加盟する信用情報機関です。

消費者金融のカードローンや保証会社が保証する借入の情報が登録されており、特に消費者金融系の借入を調査する際に重要です。

また、保証会社が保証人となっている住宅ローンやカードローンの情報もJICCに登録されます。

被相続人が消費者金融から借入をしていた場合、その契約内容・残高・返済状況がJICCで確認できます。

保証債務の情報もJICCに登録されるケースがあるため、開示請求は必須です。

KSC(全国銀行個人信用情報センター)|銀行・信用金庫系

KSCは、銀行・信用金庫・信用組合・農協などの金融機関が加盟する信用情報機関です。

住宅ローン・銀行のカードローン・教育ローン・自動車ローンなどの情報が登録されています。

住宅ローンは金額が大きいため、KSCの開示請求で住宅ローンの有無や残債額を確認することは非常に重要です。

また、銀行のカードローンや教育ローンの情報もKSCに登録されます。

KSCは窓口での開示請求を受け付けておらず、郵送のみでの対応となるため、早めに手続きを開始することをお勧めします。

相談者

3つの機関すべてに開示請求しないと、借金を見落とす可能性があるということですね。

そのとおりです。

1機関だけでは、その機関に加盟していない金融機関との契約は把握できません。

漏れなく調査するためには、3機関すべてに開示請求を行うことが重要です。

信用情報機関への開示請求の手順|必要書類・費用・期間

信用情報機関への開示請求は、郵送または窓口で行うことができます。

ここでは、CIC・JICC・KSCそれぞれの開示請求方法・必要書類・費用・期間を詳しく解説します。

CICの開示請求方法|郵送・窓口・オンライン

CICは、郵送・窓口・オンライン(スマートフォンアプリ)の3つの方法で開示請求が可能です。

インターネット開示の場合、手数料は500円で、PayPay・楽天ペイ・キャリア決済・クレジットカード・デビットカードで支払いができます。

郵送開示の場合、手数料1,500円分の定額小為替と必要書類を送付し、約10日で開示報告書が届きます。

窓口開示は全国7箇所(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・福岡)で受け付けており、手数料500円で即日開示が可能です。

相続人が開示請求する場合の必要書類(CIC・郵送の場合)

  • 信用情報開示申込書(CIC公式サイトからダウンロード)
  • 被相続人の死亡を証明する書類(除籍謄本または死亡診断書のコピー)
  • 相続人と被相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本)
  • 相続人の本人確認書類2種類(運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証など)
  • 被相続人の個人情報(氏名・生年月日・住所・電話番号または運転免許証番号)
  • 手数料1,500円分の定額小為替

JICCの開示請求方法|郵送・窓口・アプリ

JICCも、郵送・窓口・スマートフォンアプリの3つの方法で開示請求が可能です。

郵送開示の場合、手数料1,000円分の定額小為替と必要書類を送付し、約1週間で開示報告書が届きます。

窓口開示は東京と大阪の2箇所で受け付けており、手数料500円で即日開示が可能です。

相続人が開示請求する場合の必要書類(JICC・郵送の場合)

  • 開示申込書(JICC公式サイトからダウンロード)
  • 被相続人の死亡を証明する書類(除籍謄本または死亡診断書のコピー)
  • 相続人と被相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本)
  • 相続人の本人確認書類2種類(運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証など)
  • 被相続人の個人情報(氏名・生年月日・住所・電話番号)
  • 手数料1,000円分の定額小為替

KSCの開示請求方法|郵送のみ

KSCは郵送のみでの開示請求となり、窓口での受付は行っていません。

インターネット開示では手数料1,000円を支払って約1週間で結果をダウンロードでき、郵送の場合は手数料1,124円〜1,200円分の利用券を準備して送付し、約1週間〜10日で開示報告書が届きます。

相続人が開示請求する場合の必要書類(KSC・郵送の場合)

  • 登録情報開示申込書(全国銀行協会公式サイトからダウンロード)
  • 被相続人の死亡を証明する書類(除籍謄本または死亡診断書のコピー)
  • 相続人と被相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本)
  • 相続人の本人確認書類2種類(運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証など)
  • 被相続人の個人情報(氏名・生年月日・住所・電話番号または運転免許証番号)
  • 手数料1,124円〜1,200円分の利用券(コンビニまたは郵便局で購入)

相続人が開示請求する場合の必要書類

相続人が被相続人の信用情報を開示請求する場合、以下の書類を揃える必要があります。

書類に不備があると返送されてしまい、時間の無駄になるため、必要書類を正確に揃えてから郵送することが重要です。

  • 戸籍謄本:相続人と被相続人の関係を証明するため。市区町村役場で取得(手数料450円程度)
  • 除籍謄本または死亡診断書:被相続人が亡くなったことを証明するため
  • 相続人の本人確認書類2種類:運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証・パスポートなど
  • 被相続人の個人情報:氏名・生年月日・住所・電話番号(または運転免許証番号)
  • 手数料:定額小為替または利用券(各機関で異なる)

被相続人の電話番号や運転免許証番号が分からない場合でも、他の情報があれば開示請求が可能なケースもあります。

不明な点がある場合は、各信用情報機関のカスタマーセンターに問い合わせることをお勧めします。

💡 費用の目安

  • CIC:郵送1,500円、窓口・ネット500円
  • JICC:郵送1,000円、窓口500円
  • KSC:郵送1,124円〜1,200円、ネット1,000円
  • 3機関すべてに郵送で請求する場合:約3,700円
  • 戸籍謄本・除籍謄本の取得費用:約1,200円
  • 合計:約5,000円程度

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開示報告書の見方|どの項目をチェックすべきか

信用情報機関から開示報告書が届いたら、以下の項目を重点的に確認します。

開示報告書には、契約内容・残債額・返済状況・延滞情報などが記載されており、借金の有無だけでなく金額や返済状況まで把握できます

契約内容欄の確認ポイント

開示報告書の「契約内容」欄には、以下の情報が記載されています。

  • 契約種類:クレジットカード・カードローン・住宅ローンなどの種類
  • 契約日:契約を結んだ日付
  • 契約額:契約時の借入額または限度額
  • 残債額:現在の借入残高

残債額がゼロでも、契約が残っている場合は注意が必要です。

たとえば、クレジットカードのキャッシング枠が設定されている場合、残高がゼロでも今後利用される可能性があります。

また、ショッピング枠の未払い分がないかも確認します。

ショッピング枠の利用は一括払いと分割払いがあり、分割払いの未払い分が残っている場合は相続人が返済義務を負います。

返済状況欄の確認ポイント

「返済状況」欄には、延滞情報・完済状況・保証履行情報が記載されます。

特に注意すべきは「異動」マークです。

「異動」とは、延滞・代位弁済・債務整理などの事故情報を指します。

異動マークがある場合、返済が滞っていた可能性が高く、債務残高が膨らんでいるケースもあります。

また、「保証履行」の記載がある場合、保証会社が被相続人の代わりに返済を行ったことを意味します。

この場合、保証会社が新たな債権者となり、相続人に返済を求めてくる可能性があります。

保証債務・連帯保証人の確認方法

被相続人が誰かの借金の連帯保証人になっていた場合、その保証債務も相続の対象となります。

信用情報機関の開示報告書には、保証会社が保証している契約の情報が記載されることがありますが、個人間の連帯保証契約は信用情報機関に登録されないケースが多いため注意が必要です。

被相続人が連帯保証人になっていたかどうかを調べるには、以下の方法があります。

  • 自宅に残された契約書や保証契約書を確認する
  • 金融機関に問い合わせて保証人情報を照会する
  • 公正証書や債務承認書が残っていないか確認する

保証債務は、主債務者が返済を滞らせるまで表面化しないケースが多いため、見落としやすいリスクがあります。

被相続人が経営者や個人事業主だった場合、事業用の借入の連帯保証人になっている可能性も高いため、特に注意が必要です。

相談者

開示報告書に「異動」と書かれていました。これは借金が残っているということですか?

「異動」は延滞や代位弁済などの事故情報を示しています。

借金が残っている可能性が高いため、債権者に直接問い合わせて残債額を確認することをお勧めします。

✓ 開示報告書で確認すべき項目

  • 契約種類・契約日・契約額・残債額
  • 返済状況・延滞情報・異動マークの有無
  • 保証履行情報・代位弁済の記載
  • ショッピング枠・キャッシング枠の未払い分
  • 完済済みでも契約が残っていないか

借金が見つかった場合の3つの選択肢|相続放棄・限定承認・単純承認

信用情報機関の開示報告書やその他の調査で借金が見つかった場合、相続人には3つの選択肢があります。

相続放棄・限定承認・単純承認のうち、どれを選ぶかによって返済義務の範囲が大きく変わります。

それぞれの特徴・メリット・デメリットを理解し、自分の状況に合った選択をすることが重要です。

選択肢 内容 メリット デメリット
相続放棄 すべての財産を放棄し、借金も引き継がない 借金の返済義務を負わない
手続きが比較的簡単
プラス財産も受け取れない
撤回できない
限定承認 プラス財産の範囲内でマイナス財産を相続 プラス財産が残る可能性
借金が財産を超えない
相続人全員の同意が必要
手続きが複雑
単純承認 すべての財産を無条件で相続 プラス財産をすべて受け取れる
手続き不要
借金も全額引き継ぐ
後から取り消せない

相続放棄|借金を一切引き継がない方法

相続放棄とは、被相続人の財産をすべて放棄し、相続人ではなくなる手続きのことです。

相続放棄をすると、借金だけでなくプラス財産(不動産・預金など)も一切受け取れません。

ただし、借金がプラス財産を大きく上回る場合は、相続放棄が最も安全な選択肢となります。

相続放棄は、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出することで行います。

相続開始を知った時から3ヶ月以内に手続きを完了させる必要があり、期限を過ぎると原則として相続放棄できません。

相続放棄の手続き方法

  1. 必要書類を準備する(戸籍謄本・除籍謄本・相続放棄申述書など)
  2. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出
  3. 家庭裁判所から「照会書」が届く(質問に回答して返送)
  4. 家庭裁判所が受理し「相続放棄申述受理通知書」が届く

相続放棄が受理されると、債権者から請求が来ても返済義務はありません。

ただし、相続放棄は撤回できないため、慎重に判断する必要があります。

限定承認|プラス財産の範囲内で借金を引き継ぐ方法

限定承認とは、プラス財産を限度としてマイナス財産を相続する手続きです。

たとえば、プラス財産が500万円、マイナス財産が800万円の場合、500万円を返済すれば残りの300万円は返済不要となります。

逆に、プラス財産が800万円、マイナス財産が500万円の場合、500万円を返済した後に300万円が手元に残ります。

借金の総額が不明確な場合や、プラス財産が残る可能性がある場合に有効です。

ただし、限定承認には以下のデメリットがあります。

  • 相続人全員の同意が必要:相続人のうち1人でも反対すると限定承認できない
  • 手続きが複雑:財産目録の作成・官報公告・債権者への配当など、専門的な手続きが必要
  • 費用がかかる:官報公告費用(約3万円)や専門家報酬(10万円〜30万円)がかかる

限定承認も相続放棄と同じく、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

単純承認|すべての財産を引き継ぐ方法

単純承認とは、被相続人のすべての財産を無条件で相続することです。

プラス財産がマイナス財産を上回ることが明らかな場合は、単純承認が適切です。

単純承認は特別な手続きが不要で、相続開始を知った時から3ヶ月以内に何も手続きをしなければ、自動的に単純承認となります。

ただし、単純承認後に借金が判明しても、原則として相続放棄はできないため注意が必要です。

また、以下の行為をすると「法定単純承認」とみなされ、その後の相続放棄・限定承認ができなくなります。

  • 相続財産を処分した(不動産を売却・預金を引き出して使用など)
  • 相続財産を隠匿した
  • 相続放棄・限定承認の後に財産を隠した

そのため、借金の調査が完了するまでは、相続財産に手を付けないことが重要です。

相談者

借金よりプラス財産が多いことが分かったので、単純承認することにしました。

プラス財産が上回ることが確実であれば、単純承認が適切な選択です。

ただし、後から新たな借金が見つかるリスクもあるため、慎重に調査することをお勧めします。

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3ヶ月の期限内にやるべきこと|タイムスケジュール

相続放棄・限定承認の期限は「相続開始を知った時から3ヶ月以内」です。

この期間内に借金の調査・財産の把握・選択の決断・家庭裁判所への申述をすべて完了させる必要があります。

3ヶ月は意外と短く、計画的に進めないと期限に間に合わないリスクがあります

ここでは、1ヶ月目・2ヶ月目・3ヶ月目に分けて、具体的なタイムスケジュールを解説します。

1ヶ月目|書類収集・開示請求

相続開始後すぐに、以下の作業を開始します。

  • 自宅の書類整理:契約書・督促状・通帳・クレジットカード明細などを探す
  • 戸籍謄本・除籍謄本の取得:市区町村役場で取得(郵送請求も可能)
  • 信用情報機関への開示請求:CIC・JICC・KSCの3機関すべてに郵送で請求
  • 不動産登記簿謄本の取得:法務局で取得(オンライン請求も可能)

開示請求には約1週間かかるため、相続開始後すぐに着手することが重要です。

戸籍謄本や除籍謄本は、本籍地の市区町村役場で取得します。

本籍地が遠方の場合は郵送請求も可能ですが、往復で1〜2週間かかることもあるため、早めに手続きを開始します。

2ヶ月目|開示報告書の確認・財産調査

1ヶ月目に請求した開示報告書が届いたら、以下の作業を行います。

  • 開示報告書の内容確認:契約内容・残債額・返済状況・異動マークの有無をチェック
  • 借金総額の計算:すべての借金を合計し、総額を把握
  • プラス財産の評価:不動産評価額・預金残高・生命保険金などを確認
  • プラスとマイナスの比較:プラス財産がマイナス財産を上回るかどうか判断

不動産の評価額は、固定資産税納税通知書に記載されている評価額を参考にするか、不動産業者に査定を依頼します。

預金残高は、金融機関に残高証明書を請求することで正確な金額を確認できます。

生命保険金は、受取人が指定されている場合は相続財産に含まれませんが、受取人が「相続人」と指定されている場合は相続財産として扱われます。

3ヶ月目|選択の決断・家庭裁判所への申述

2ヶ月目までに財産調査が完了したら、以下の作業を行います。

  • 相続方法の決断:相続放棄・限定承認・単純承認のいずれかを選ぶ
  • 相続放棄申述書の作成:家庭裁判所の書式に記入
  • 家庭裁判所への提出:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に郵送または持参
  • 照会書への回答:家庭裁判所から届く照会書に回答して返送

期限ギリギリに申述すると、書類不備で間に合わないリスクがあるため、遅くとも期限の1週間前には提出することをお勧めします。

もし3ヶ月以内に調査が完了しない場合は、家庭裁判所に「相続の承認または放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期限を延長できます。

ただし、伸長が認められるかどうかは家庭裁判所の判断次第です。

✓ 3ヶ月のタイムスケジュール

  • 1ヶ月目:書類収集・開示請求・戸籍謄本取得
  • 2ヶ月目:開示報告書の確認・財産調査・プラスマイナス比較
  • 3ヶ月目:相続方法の決断・家庭裁判所への申述
  • 期限ギリギリは避ける:遅くとも期限の1週間前には提出
相談者

3ヶ月以内に調査が終わらなかったらどうなるのでしょうか?

期限を延長する申立てが可能ですが、必ず認められるわけではありません。

期限内に調査を終えられるよう、早めに着手することが重要です。

専門家に相談すべきケース|弁護士・司法書士の選び方

借金の調査や相続放棄の手続きは、自分で行うことも可能です。

しかし、借金総額が大きい・保証債務がある・期限が迫っている場合は、専門家に相談することをお勧めします

専門家に依頼することで、手続きミスによる単純承認のリスクを避け、確実に相続放棄・限定承認を完了させることができます。

弁護士に相談すべきケース

以下のような場合は、弁護士に相談することが適切です。

  • 債権者から訴訟を起こされている:弁護士は代理人として訴訟対応が可能
  • 保証債務がある:保証債務の範囲や返済義務について法的判断が必要
  • 相続人間で意見が対立している:限定承認には全員の同意が必要なため、調整が必要
  • 債権者との交渉が必要:弁護士は債権者と直接交渉できる

弁護士は、戸籍の収集・家庭裁判所への申述・債権者対応など、相続放棄に関する手続きのすべてを代行してくれます。

弁護士に依頼すると、手続きの負担が大幅に軽減され、確実に期限内に完了できるメリットがあります。

司法書士に相談すべきケース

以下のような場合は、司法書士に相談することも選択肢の一つです。

  • 書類作成のサポートが欲しい:司法書士は相続放棄申述書の作成を代行できる
  • 費用を抑えたい:司法書士の報酬は弁護士より低めの傾向がある
  • 開示請求の代行を依頼したい:司法書士は信用情報機関への開示請求を代行できる

ただし、司法書士は140万円を超える案件の代理権を持たないため、借金総額が大きい場合や訴訟リスクがある場合は、弁護士に依頼する方が適切です。

相談費用・報酬の目安

弁護士・司法書士に依頼する場合の費用相場は以下のとおりです。

専門家 相談費用 報酬の相場
弁護士 初回相談無料の事務所が多い
(有料の場合は30分5,000円程度)
相続放棄:5万円〜10万円
限定承認:10万円〜30万円
司法書士 初回相談無料の事務所が多い 相続放棄:3万円〜5万円
書類作成のみ:1万円〜3万円
法テラス(民事法律扶助) 無料 4万円〜6万円
(分割払い可能)

初回相談は無料の事務所が多いため、まずは相談して見積もりを取ることをお勧めします。

また、経済的に困窮している場合は、法テラスの「民事法律扶助」を利用することで、弁護士費用を抑えられます。

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よくある質問(FAQ)

Q信用情報機関の開示請求は1機関だけでは不十分ですか?
A

はい、1機関だけでは不十分です。CIC・JICC・KSCはそれぞれ加盟している金融機関が異なるため、1機関だけに開示請求しても他の機関に登録されている借金は把握できません。たとえば、CICだけに請求した場合、銀行の住宅ローンや消費者金融の借入を見落とす可能性があります。漏れなく調査するためには、3機関すべてに開示請求を行うことが重要です。

Q開示請求の手数料はいくらかかりますか?
A

各信用情報機関の手数料は以下のとおりです。CIC:郵送1,500円・窓口/ネット500円、JICC:郵送1,000円・窓口500円、KSC:郵送1,124円〜1,200円・ネット1,000円。3機関すべてに郵送で開示請求する場合、合計で約3,700円かかります。これに加えて、戸籍謄本や除籍謄本の取得費用(約1,200円)が必要なため、総額で約5,000円程度を見込んでおくとよいでしょう。

Q開示報告書が届くまでにどのくらいかかりますか?
A

郵送で開示請求した場合、開示報告書が届くまでに約1週間〜10日程度かかります。窓口で開示請求した場合は即日受け取りが可能です(CICとJICCのみ窓口対応)。相続放棄の期限は3ヶ月しかないため、開示請求は相続開始後すぐに行うことをお勧めします。書類に不備があると返送されて時間を無駄にするため、必要書類を正確に揃えてから郵送しましょう。

Q保証債務も信用情報機関で確認できますか?
A

保証会社が保証している借入の情報は信用情報機関に登録されるため、開示請求で確認できます。ただし、個人間の連帯保証契約は信用情報機関に登録されないケースが多いため、注意が必要です。被相続人が誰かの借金の連帯保証人になっていた場合、自宅に残された契約書や保証契約書を確認するか、金融機関に直接問い合わせる必要があります。保証債務は相続の対象となるため、見落とさないよう慎重に調査しましょう。

Q相続放棄の期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
A

原則として、相続開始を知った時から3ヶ月を過ぎると相続放棄はできなくなり、自動的に単純承認となります。ただし、「相続財産がまったくないと信じており、かつそう信じたことに相当な理由がある場合」には、借金の存在を知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄が認められる場合があります(最高裁昭和59年4月27日判決)。この例外が認められるかどうかは裁判所の判断次第なので、確実ではありません。期限を過ぎそうな場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

Q相続放棄しても生命保険金は受け取れますか?
A

はい、受取人が指定されている生命保険金は、相続財産に含まれないため、相続放棄をしても受け取ることができます。ただし、受取人が「相続人」と指定されている場合や受取人が指定されていない場合は、相続財産として扱われるため、相続放棄すると受け取れません。生命保険金の受取人が誰になっているかは、保険証券や保険会社への問い合わせで確認できます。相続放棄を検討する際は、生命保険金の扱いも含めて総合的に判断することが重要です。

Q借金がなかった場合でも開示請求する意味はありますか?
A

はい、借金がなかったことを確認するためにも開示請求は有効です。借金がないと思っていても、実は少額のクレジットカード未払いや保証債務が残っていたというケースもあります。相続後に突然債権者から請求が来るリスクを避けるためにも、信用情報機関への開示請求で「借金がないこと」を確認しておくことをお勧めします。費用は約5,000円程度なので、安心を得るための投資として考えるとよいでしょう。

まとめ

相続で借金があるかどうかを調べることは、相続人にとって最も重要な手続きの一つです。

借金を見落としたまま相続してしまうと、返済義務を負うことになり、予想外の負担を強いられるケースがあります。

本記事で解説した内容を改めて整理します。

  • 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求が最も確実:3機関すべてに開示請求することで、金融機関との契約・借入状況を漏れなく把握できます。
  • 開示請求の費用は約5,000円程度:手数料は3機関合計で約3,700円、戸籍謄本等の取得費用を含めて約5,000円です。
  • 開示請求は相続開始後すぐに着手する:開示報告書が届くまでに約1週間かかるため、早めに手続きを開始することが重要です。
  • 相続放棄の期限は3ヶ月:相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。期限を過ぎると単純承認となり、借金も相続します。
  • 借金が見つかったら3つの選択肢を検討:相続放棄・限定承認・単純承認のうち、自分の状況に合った選択をします。
  • 保証債務も見落とさない:個人間の連帯保証契約は信用情報機関に登録されないケースが多いため、自宅の書類や金融機関への問い合わせも併用します。
  • 専門家に相談することも検討:借金総額が大きい・期限が迫っている・保証債務がある場合は、弁護士や司法書士に相談することで、確実に手続きを完了できます。

相続は人生で何度も経験することではないため、不安や疑問を抱えるのは当然です。

しかし、借金の調査を怠ると、後で大きな負担を負うリスクがあります。

本記事で紹介した方法を参考に、計画的に調査を進め、適切な相続方法を選択しましょう。

もし借金総額が大きい・期限が迫っている・判断に迷っている場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします

初回相談無料の弁護士事務所も多いため、まずは相談して状況を整理することから始めましょう。

相談者

信用情報機関への開示請求と相続放棄の手続きが無事に完了しました。専門家に相談して本当に良かったです。

相続の手続きは複雑ですが、正しい知識と計画的な行動で、安心して進めることができます。

あなたの相続手続きが無事に完了することを願っています。

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免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。相続に関する具体的な判断は、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。本記事の情報は2026年4月時点の法令に基づいており、法改正により内容が変更される可能性があります。

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