生前贈与と相続の違い|節税効果・贈与税の計算・注意点をわかりやすく解説

相続対策として「生前贈与」という言葉をよく耳にしますが、実際に相続とどのように違うのか、どちらが節税に有利なのか、わからない方も多いのではないでしょうか。

生前贈与と相続には、それぞれ異なる税制が適用され、利用の仕方によって大きく税負担が変わってきます。2024年の税制改正により、暦年贈与の加算期間が7年に延長されたことで、従来の節税方法が使いにくくなったという側面もあります。

この記事では、生前贈与と相続の違い、贈与税・相続税の仕組み、税制改正の影響、効果的な贈与の方法、注意点まで、相続専門家の視点からわかりやすく解説します。

相談者

親から財産を受け取るなら、生前に贈与してもらう方が税金が安いと聞いたのですが、本当ですか?

専門家

ケースによって異なります。財産の総額や贈与の方法によっては、生前贈与が有利になることもあれば、相続のほうが税負担が少ないこともあります。この記事でしっかり理解していきましょう。

目次

生前贈与と相続の基本的な違い

まずは、生前贈与と相続の基本的な違いを整理しておきましょう。どちらも財産を次世代に移転する方法ですが、そのタイミングや税制、手続きには大きな違いがあります。

生前贈与とは

生前贈与とは、財産を持っている人が生きている間に、他人に財産を無償で譲渡することです。民法上は「贈与契約」と呼ばれ、贈与者と受贈者の双方の合意によって成立します。

生前贈与には、主に次のような特徴があります。

  • 財産を渡すタイミングを自由に決められる
  • 財産を渡す相手を自由に選べる
  • 贈与税が課税される(年110万円までは非課税)
  • 計画的に財産を移転できる

生前贈与は、相続税対策として古くから利用されてきた方法です。毎年少しずつ財産を移転することで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。

相続とは

相続とは、人が亡くなったときに、その人が持っていた財産や権利・義務が法律で定められた相続人に移転することです。相続は亡くなった瞬間に自動的に開始され、遺言書がない場合は民法で定められた順位に従って相続人が財産を取得します。

相続の主な特徴は以下の通りです。

  • 財産を渡すタイミングは死亡時に限定される
  • 原則として法定相続人が財産を取得する(遺言がある場合は別)
  • 相続税が課税される(基礎控除額以下なら非課税)
  • 遺産分割協議が必要になる場合がある

相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」までは非課税となります。たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、4,800万円までは相続税がかかりません。

生前贈与と相続の主な違い一覧

生前贈与と相続の違いを表でまとめると、次のようになります。

項目生前贈与相続
タイミング生前(いつでも可能)死亡時
課税される税金贈与税相続税
基礎控除年110万円(暦年課税)3,000万円+600万円×法定相続人数
税率10~55%(累進課税)10~55%(累進課税)
財産の移転先自由に選べる法定相続人が原則(遺言で変更可)
計画性計画的に分散可能一括で移転

どちらの方法を選ぶかは、財産の総額、家族構成、将来の計画などによって異なります。単純に「生前贈与のほうが得」とは言えないため、個別の状況に応じた判断が必要です。

ポイント

生前贈与は計画的に財産を移転できるメリットがある一方、贈与税の負担も考慮する必要があります。相続税の基礎控除が大きいため、財産総額によっては相続のほうが有利になるケースもあります。

贈与税の仕組みと計算方法

生前贈与を検討する際に必ず理解しておくべきなのが、贈与税の仕組みです。贈与税には「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2つの制度があり、どちらを選ぶかによって税負担が大きく変わります。

暦年課税制度の基本

暦年課税制度は、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額に対して課税される制度です。最も一般的な贈与税の課税方式で、特に手続きをしなければ自動的にこの制度が適用されます。

暦年課税制度の最大の特徴は、年間110万円の基礎控除があることです。つまり、1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。

贈与税の計算式は次の通りです。

贈与税の計算式

贈与税額 = (1年間の贈与額 – 110万円) × 税率 – 控除額

税率は贈与額に応じて10%から55%まで累進的に上がっていきます。また、贈与者と受贈者の関係によって「一般税率」と「特例税率」の2種類があり、直系尊属(祖父母や父母)から成人した子や孫への贈与は特例税率が適用され、やや税負担が軽くなります。

贈与税の税率表

特例税率(直系尊属から20歳以上の子・孫への贈与)の税率は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

たとえば、父親から成人した子どもへ500万円を贈与した場合の贈与税は次のように計算されます。

  • 課税価格:500万円 – 110万円 = 390万円
  • 贈与税額:390万円 × 15% – 10万円 = 48.5万円

このように、基礎控除を超えると一気に税負担が大きくなるため、計画的に複数年にわたって贈与することが節税のポイントになります。

相談者

毎年110万円ずつ贈与すれば、贈与税はずっとかからないということですか?

専門家

その通りです。ただし、定期贈与とみなされないように注意が必要です。また、2024年の税制改正で、相続前7年以内の贈与は相続財産に加算されるようになったため、この点も考慮する必要があります。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫への贈与について選択できる制度です。この制度を選択すると、贈与時には2,500万円まで非課税となり、その枠を超えた部分には一律20%の贈与税が課税されます。

ただし、この制度の特徴は、贈与した財産は相続時に相続財産として加算され、相続税の対象となる点です。つまり、贈与税は一時的に軽減されるものの、最終的には相続税として精算される仕組みです。

相続時精算課税制度のメリットとデメリットは次の通りです。

メリット

  • 一度に大きな金額を贈与できる
  • 贈与した財産の値上がり益が相続税の対象にならない
  • 早期に財産を移転できる

デメリット

  • 一度選択すると暦年課税に戻れない
  • 110万円の基礎控除が使えなくなる(2024年改正で年110万円の控除が追加)
  • 相続税の計算が複雑になる

相続時精算課税制度は、将来値上がりが見込まれる財産(株式、不動産など)を早期に移転したい場合や、事業承継で自社株を移転したい場合などに有効です。ただし、選択には慎重な判断が必要なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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2024年税制改正による影響

2024年(令和6年)の税制改正により、生前贈与に関する重要なルール変更がありました。この改正は、相続税対策として広く利用されてきた暦年贈与に大きな影響を与えるものです。

暦年贈与の加算期間が7年に延長

最も大きな変更点は、相続開始前の生前贈与について、相続財産に加算される期間が3年から7年に延長されたことです。これは2024年1月1日以降の贈与から適用されます。

従来は、相続開始前3年以内に相続人に対して行われた贈与は、相続税の計算上、相続財産に加算されるルールでした。つまり、亡くなる3年より前に贈与していれば、その財産は相続税の対象外となり、節税効果がありました。

しかし、2024年の改正により、この加算期間が7年に延長されたため、亡くなる7年以内の贈与は相続財産として扱われることになります。ただし、延長された4年分(4年目から7年目)については、合計100万円まで相続財産に加算されない措置が設けられています。

この改正によって、以下のような影響が出ています。

  • 短期間での駆け込み贈与の効果が薄れた
  • より長期的な計画が必要になった
  • 早めに贈与を始めることの重要性が高まった
  • 孫など相続人以外への贈与の有効性が相対的に上がった

改正前と改正後の比較

改正前:相続開始前3年以内の贈与を相続財産に加算
改正後:相続開始前7年以内の贈与を相続財産に加算(ただし、4~7年目の贈与は合計100万円まで除外)

相続時精算課税制度の改正

相続時精算課税制度についても、2024年から重要な改正が行われました。最も大きな変更は、年110万円の基礎控除が新設されたことです。

従来、相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税の年110万円の基礎控除が使えなくなるデメリットがありました。しかし、改正後は相続時精算課税制度を選択していても、年110万円までの贈与については贈与税がかからず、かつ相続財産にも加算されないことになりました。

この改正により、相続時精算課税制度の使い勝手が大幅に向上し、選択しやすくなったと言えます。特に、定期的に少額の贈与を行いながら、必要に応じて大きな金額も贈与できる柔軟性が生まれました。

改正後の対策のポイント

税制改正を踏まえた今後の生前贈与対策のポイントは次の通りです。

  1. 早めに贈与を開始する:加算期間が7年になったため、より早い段階から計画的に贈与を始めることが重要です。
  2. 孫など相続人以外への贈与を検討する:孫への贈与は加算期間の対象外のため、有効な節税手段となります。
  3. 相続時精算課税制度の活用:年110万円の基礎控除が新設されたため、以前より使いやすくなりました。
  4. 贈与の特例制度を活用する:教育資金や住宅取得資金の特例など、非課税枠が大きい制度を積極的に活用します。
相談者

すでに75歳の父がいるのですが、今から贈与を始めても意味はありますか?

専門家

意味はあります。7年以上前の贈与は相続財産に加算されないため、長生きされる可能性も考慮すると、早めに始めるメリットはあります。また、孫への贈与など、別の方法も検討できます。

生前贈与のメリット

生前贈与には、税制面でのメリットだけでなく、財産管理や家族関係の面でもさまざまな利点があります。ここでは、生前贈与の主なメリットを詳しく見ていきましょう。

相続財産を減らして相続税を軽減できる

生前贈与の最大のメリットは、計画的に財産を移転することで将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できる点です。

相続税は累進課税のため、財産が多いほど税率が高くなります。基礎控除を超える財産がある場合、生前に少しずつ贈与することで、相続時の財産総額を減らし、税率の上昇を抑える効果が期待できます。

たとえば、1億円の財産を持つ方が、毎年110万円ずつ子ども2人に10年間贈与した場合、2,200万円の財産移転が非課税で実現できます。これにより、相続財産は7,800万円まで減少し、相続税の負担も大幅に軽減される可能性があります。

財産の使い道を見届けられる

生前贈与のもう一つの大きなメリットは、贈与した財産がどのように使われているかを自分の目で確認できることです。相続の場合、自分が亡くなった後に財産がどう使われるかは見届けることができません。

生前贈与であれば、子どもや孫が住宅を購入する、事業を始める、教育を受けるなど、財産が有効に活用される様子を見守ることができます。また、必要なタイミングで必要な金額を渡せるため、受け取る側にとっても助けになります。

遺産分割のトラブルを防げる

相続が発生すると、遺産分割協議が必要になり、相続人間でトラブルが発生するケースも少なくありません。生前贈与を活用することで、生前に財産を分配し、将来の相続争いを予防する効果が期待できます。

特に、不動産など分割しにくい財産がある場合、生前に特定の相続人に贈与しておくことで、相続時の分割協議がスムーズになることがあります。ただし、他の相続人の遺留分を侵害しないよう注意が必要です。

特例制度を活用できる

贈与税には、一定の目的で行われる贈与について非課税となる特例制度がいくつか用意されています。これらの制度を活用することで、まとまった金額を非課税で贈与することが可能です。

主な贈与税の特例制度には以下のようなものがあります。

  • 教育資金の一括贈与の特例:30歳未満の子や孫への教育資金として1,500万円まで非課税
  • 結婚・子育て資金の一括贈与の特例:18歳以上50歳未満の子や孫への結婚・子育て資金として1,000万円まで非課税
  • 住宅取得等資金の贈与の特例:住宅購入やリフォーム資金として一定額まで非課税(時期や住宅の種類により金額が異なる)
  • 配偶者控除:婚姻期間20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与について2,000万円まで非課税

これらの特例を適切に活用することで、暦年贈与の年110万円の枠に加えて、さらに大きな金額を非課税で移転できます。ただし、それぞれの特例には細かい要件があるため、ベンナビ相続で相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

生前贈与のメリットまとめ

  • 相続財産を減らして相続税を軽減
  • 財産の使い道を見届けられる
  • 遺産分割トラブルの予防
  • 各種特例制度の活用が可能
  • 必要なタイミングで財産を渡せる

生前贈与のデメリットと注意点

生前贈与には多くのメリットがある一方で、デメリットや注意すべき点もあります。計画を立てる際には、これらのリスクもしっかり理解しておくことが大切です。

贈与税の負担が大きくなる可能性

贈与税の税率は、相続税と同じく10%から55%の累進課税ですが、税率の適用区分が相続税よりも厳しく設定されているため、大きな金額を一度に贈与すると、相続税よりも高い税負担になる可能性があります。

たとえば、2,000万円を一度に贈与した場合の贈与税は約695万円(特例税率適用時)ですが、相続で同額を受け取った場合、他の財産との合計額や相続人の数にもよりますが、税率が低くなるケースが多くあります。

そのため、贈与を行う際は、年110万円の基礎控除を活用して複数年に分散するか、相続時精算課税制度や各種特例を利用するなど、税負担を抑える工夫が必要です。

名義預金と認定されるリスク

生前贈与で最も注意すべきなのが「名義預金」と認定されるリスクです。名義預金とは、形式的には子どもや孫の名義になっているが、実質的には贈与者が管理している預金のことを指します。

税務署は相続税の調査時に、名義預金がないかを厳しくチェックします。名義預金と認定されると、贈与は成立していないと判断され、相続財産として相続税が課税されるだけでなく、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。

名義預金と認定されないためには、以下の点に注意が必要です。

  • 贈与契約書を作成する
  • 受贈者が通帳や印鑑を管理する
  • 受贈者が自由に使える状態にする
  • 受贈者の口座に直接振り込む
  • 110万円を超える贈与は贈与税の申告を行う

名義預金と認定される典型的なケース

  • 親が子ども名義の口座を開設し、通帳・印鑑を自分で管理している
  • 子どもが口座の存在を知らない、または使ったことがない
  • 親の口座から定期的に子ども名義の口座に振り替えているだけ
  • 贈与の事実を示す証拠(契約書など)がない

定期贈与と認定されるリスク

もう一つの注意点が「定期贈与」です。定期贈与とは、あらかじめ一定額を定期的に贈与することを約束した贈与のことで、贈与の初年度に全体の金額に対して贈与税が課税される可能性があります。

たとえば、「10年間、毎年100万円ずつ贈与する」という約束をした場合、1,000万円の贈与を受ける権利を最初の年に得たとみなされ、1,000万円に対して贈与税が課税されるリスクがあります。

定期贈与と認定されないためには、以下のような対策が有効です。

  • 毎年異なる金額を贈与する
  • 贈与の時期を変える(毎年同じ日ではなく)
  • 毎年、贈与契約書を作成する
  • 110万円を超える金額をあえて贈与し、贈与税の申告を行う

不動産贈与の注意点

不動産を生前贈与する場合、現金とは異なる注意点があります。不動産の贈与では、贈与税に加えて、登録免許税や不動産取得税などの費用が発生します。

特に、登録免許税は固定資産税評価額の2%、不動産取得税は3~4%(軽減措置あり)と高額になりがちです。相続の場合、登録免許税は0.4%で、不動産取得税はかからないため、場合によっては相続のほうが有利なこともあります。

また、不動産の贈与は小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性もあるため、総合的な判断が必要です。不動産の生前贈与を検討する際は、必ず税理士に相談することをおすすめします。

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効果的な生前贈与の方法

生前贈与で節税効果を最大化するためには、計画的かつ戦略的に進めることが重要です。ここでは、効果的な生前贈与の具体的な方法を紹介します。

暦年贈与を長期的に活用する

最も基本的な方法は、年110万円の基礎控除を活用した暦年贈与を長期間にわたって行うことです。2024年の税制改正で加算期間が7年に延長されたため、できるだけ早い段階から始めることが重要になりました。

たとえば、60歳から20年間、子ども2人と孫2人の計4人に毎年110万円ずつ贈与した場合、合計8,800万円の財産を非課税で移転できます。これにより、将来の相続財産を大幅に減らし、相続税の負担を軽減できます。

暦年贈与を成功させるポイントは次の通りです。

  • できるだけ早く始める(健康なうちに計画を立てる)
  • 贈与契約書を毎年作成する
  • あえて110万円を少し超える金額を贈与し、贈与税の申告をする
  • 受贈者が自由に使える状態にする
  • 金額や時期を多少変化させる

孫への贈与を活用する

孫への贈与は、相続税対策として非常に有効です。なぜなら、孫は通常の相続では相続人にならないため、贈与した財産が相続財産に加算されないからです(ただし、遺言で孫に遺贈する場合や、代襲相続の場合は除く)。

また、孫への贈与は、子どもの世代を飛ばして財産を移転できるため、将来的に子どもから孫への相続時にかかる相続税も節約できる「世代飛ばし」の効果もあります。

ただし、孫への贈与には注意点もあります。孫が未成年の場合、親権者である子どもが財産を管理することになるため、実質的に子どもへの贈与とみなされないよう、適切な管理体制を整える必要があります。

教育資金・住宅取得資金の特例を活用する

目的が明確な場合は、非課税枠の大きい特例制度を活用することで、一度に大きな金額を移転できます。特に効果的なのが以下の制度です。

教育資金の一括贈与の特例では、30歳未満の子や孫への教育資金として最大1,500万円まで非課税で贈与できます。ただし、教育資金として使われなかった残額は贈与税の対象となるため、計画的な利用が必要です。

住宅取得等資金の贈与の特例は、住宅を購入またはリフォームする子や孫に対して、一定額まで非課税で贈与できる制度です。非課税枠は時期や住宅の性能によって異なりますが、省エネ住宅の場合は1,000万円、一般住宅の場合は500万円が非課税となる期間があります(制度の期限や要件は変更される可能性があるため、最新情報を確認してください)。

これらの特例は、暦年贈与の110万円の基礎控除や相続時精算課税制度の110万円控除と併用できるため、組み合わせることでさらに大きな節税効果が期待できます。

特例制度活用の注意点

  • それぞれの特例には細かい要件があり、満たさないと適用されない
  • 税務署への申告が必要(期限内に申告しないと特例が使えない)
  • 教育資金の特例は、使途の領収書保管が必要
  • 住宅取得資金の特例は、住宅の性能や取得時期によって非課税枠が異なる

相続時精算課税制度を戦略的に使う

2024年の改正で年110万円の基礎控除が新設されたことで、相続時精算課税制度の活用の幅が広がりました。この制度は、将来値上がりが見込まれる財産を早期に移転する場合に特に有効です。

たとえば、現在の評価額が3,000万円の不動産が、将来5,000万円に値上がりすると予想される場合、相続時精算課税制度で贈与しておけば、相続税の計算では3,000万円として評価されるため、2,000万円分の値上がり益に相続税がかからなくなります。

また、事業承継で自社株を後継者に渡す場合も、相続時精算課税制度が有効です。事業が成長して株価が上がる前に贈与することで、将来の相続税負担を抑えられます。

相談者

うちの場合、どの方法が一番効果的か知りたいのですが、どうすればいいですか?

専門家

財産の種類や金額、家族構成、将来の計画によって最適な方法は異なります。ベンナビ相続で相続に強い税理士に相談し、シミュレーションをしてもらうことをおすすめします。

生前贈与と相続、どちらが有利か

「生前贈与と相続、どちらが節税になるのか」という質問をよく受けますが、これには一概に答えることができません。財産の総額、家族構成、贈与のタイミングなどによって、有利不利が変わってくるためです。

財産総額別の考え方

財産総額が基礎控除以下の場合(たとえば相続人3人で4,800万円以下)は、相続税がかからないため、生前贈与をする税務上のメリットはほとんどありません。むしろ、不動産を贈与すると登録免許税や不動産取得税が余計にかかる可能性があります。

財産総額が基礎控除を少し超える程度の場合(5,000万円~1億円程度)は、暦年贈与を長期的に活用することで節税効果が期待できます。年110万円の基礎控除を使って計画的に贈与することで、相続財産を基礎控除内に収められる可能性があります。

財産総額が非常に大きい場合(数億円以上)は、暦年贈与だけでなく、相続時精算課税制度や各種特例を組み合わせた総合的な対策が必要です。この場合、不動産の評価額を下げる対策や、生命保険の活用なども検討すべきでしょう。

年齢と健康状態による判断

贈与者の年齢や健康状態も、判断の重要なポイントです。2024年の改正で加算期間が7年に延長されたため、高齢になってから始める生前贈与の効果は以前より限定的になりました。

たとえば、85歳で健康状態に不安がある方が暦年贈与を始めても、7年以内に相続が発生すれば、贈与した財産は相続財産に加算されてしまいます。この場合、無理に贈与するよりも、相続時に小規模宅地等の特例などを活用したほうが有利なこともあります。

一方、60代前半で健康な方であれば、長期的な暦年贈与の計画を立てることで、大きな節税効果が期待できます。

財産の種類による判断

財産の種類によっても、生前贈与の有利不利が変わります。

現金・預金は、贈与も相続も同じ評価額なので、純粋に税率の違いだけで判断できます。暦年贈与の基礎控除を活用すれば、税負担なく移転できます。

不動産は、贈与すると登録免許税(2%)と不動産取得税(3~4%)がかかるため、小規模宅地等の特例が使える居住用不動産などは、相続のほうが有利なケースが多くあります。ただし、将来値上がりが確実な不動産や、収益物件などは、早めに贈与することで節税効果が出る場合もあります。

株式(特に非上場株式)は、評価額が変動するため、評価額が低いタイミングで贈与することで節税効果が期待できます。事業承継の場合は、事業承継税制などの特例も活用できます。

判断のポイントまとめ

  • 財産総額が基礎控除以下なら生前贈与の税務メリットは少ない
  • 財産総額が大きいほど、計画的な生前贈与の効果が大きい
  • 年齢が若く健康なら、長期的な暦年贈与が有効
  • 不動産は登録免許税等のコストも考慮が必要
  • 将来値上がりが見込まれる財産は早めの贈与が有効

生前贈与を行う際の手続きと必要書類

生前贈与を適切に行うためには、正しい手続きを踏むことが重要です。証拠を残さないと、税務調査で贈与が否認されるリスクがあります。

贈与契約書の作成

生前贈与を行う際に最も重要なのが、贈与契約書を作成することです。贈与契約書は、贈与の事実を証明する重要な証拠となります。

贈与契約書には、最低限、次の内容を記載します。

  • 贈与契約書の作成日
  • 贈与者と受贈者の氏名・住所
  • 贈与する財産の内容(現金の場合は金額、不動産の場合は所在地・地番など)
  • 贈与の時期
  • 贈与者と受贈者の署名・押印

贈与契約書は、贈与者と受贈者がそれぞれ1部ずつ保管します。高額な贈与の場合や不動産の贈与の場合は、公正証書で作成するとより確実です。

贈与税の申告手続き

1年間に受け取った贈与の合計額が110万円を超える場合、または相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与税の申告が必要です。申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。

贈与税の申告に必要な主な書類は以下の通りです。

  • 贈与税の申告書
  • 贈与契約書のコピー
  • 受贈者の戸籍謄本(特例税率を適用する場合)
  • 財産の評価を証明する書類(不動産の場合は固定資産税評価証明書など)
  • 特例制度を利用する場合は、それぞれの要件を証明する書類

申告書は国税庁のホームページからダウンロードできるほか、e-Taxを利用してオンラインで申告することもできます。

不動産を贈与する場合の手続き

不動産を贈与する場合は、贈与税の申告に加えて、法務局での所有権移転登記が必要です。登記の際には、以下の書類が必要になります。

  • 登記申請書
  • 贈与契約書
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票
  • 不動産の登記識別情報(権利証)
  • 固定資産税評価証明書

不動産の贈与には登録免許税(固定資産税評価額の2%)がかかり、受贈者には不動産取得税も課税されます。手続きが複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。

手続きの注意点

  • 贈与契約書は必ず作成し、双方で保管する
  • 110万円を超える贈与は必ず申告する(申告しないとペナルティがある)
  • 特例制度を利用する場合は、期限内に申告しないと適用されない
  • 不動産の贈与は専門家(司法書士、税理士)に相談する

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よくある質問(FAQ)

生前贈与は毎年必ず110万円以内にしないといけませんか?
いいえ、110万円を超える贈与も可能です。ただし、超えた分には贈与税がかかり、申告が必要になります。むしろ、あえて110万円を少し超える金額(たとえば120万円)を贈与し、贈与税を申告することで、贈与の証拠を残すという方法もあります。120万円を贈与した場合の贈与税は1万円程度(特例税率)なので、わずかな税負担で確実な証拠を残せます。
親が認知症になってからでも生前贈与はできますか?
認知症の程度によります。贈与契約は法律行為のため、意思能力が必要です。軽度の認知症で判断能力がある場合は可能ですが、重度の認知症で意思能力が失われている場合は、贈与契約が無効とされる可能性があります。認知症と診断されている場合は、成年後見制度の利用を検討する必要があり、成年後見人がついた後の贈与は原則として認められません。そのため、元気なうちに贈与の計画を立てることが重要です。
夫婦間の贈与にも贈与税はかかりますか?
はい、夫婦間でも贈与税はかかります。ただし、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、最高2,000万円まで配偶者控除が受けられます。この特例を使えば、基礎控除110万円と合わせて2,110万円まで非課税で贈与できます。ただし、同じ配偶者からは一生に一度しか使えない特例なので、タイミングを慎重に検討する必要があります。
贈与税の申告をしなかった場合、どうなりますか?
110万円を超える贈与を受けたにもかかわらず申告しなかった場合、税務署に発覚すると、本来の贈与税に加えて無申告加算税(15~20%)や延滞税が課される可能性があります。また、意図的に隠していたと認定されると、重加算税(40%)が課されることもあります。税務署は金融機関の取引記録や不動産の登記情報などから無申告を把握できるため、必ず期限内に申告することが大切です。
生前贈与した財産は遺産分割の対象になりますか?
原則として、生前贈与された財産は遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続開始前10年以内に相続人に対して行われた特別受益(婚姻、養子縁組、生計の資本としての贈与)は、遺産分割の際に持ち戻して計算される可能性があります。また、他の相続人の遺留分を侵害するような多額の贈与は、遺留分侵害額請求の対象となることがあります。公平な財産分与を心がけることが、将来のトラブル防止につながります。
相続時精算課税制度を選択すると、どんなデメリットがありますか?
相続時精算課税制度の主なデメリットは、一度選択すると撤回できず、暦年課税に戻れない点です。ただし、2024年の改正で年110万円の基礎控除が新設されたため、このデメリットは大幅に緩和されました。その他のデメリットとして、贈与した財産が相続時に相続財産として加算されるため、相続税の計算が複雑になることや、小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性があることが挙げられます。選択する際は税理士に相談し、総合的なシミュレーションをすることをおすすめします。

まとめ

生前贈与と相続には、それぞれ異なる税制が適用され、どちらが有利かは財産の総額、家族構成、年齢、財産の種類などによって異なります。

2024年の税制改正により、暦年贈与の加算期間が7年に延長されたことで、より早い段階から長期的な計画を立てることの重要性が高まりました。一方で、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されたことで、選択肢の幅も広がっています。

生前贈与を成功させるポイントは次の通りです。

  • できるだけ早く、元気なうちに計画を始める
  • 贈与契約書を作成し、証拠を残す
  • 名義預金や定期贈与と認定されないよう注意する
  • 暦年贈与、相続時精算課税、各種特例を適切に組み合わせる
  • 財産の種類や家族構成に応じた個別の戦略を立てる

生前贈与は節税効果が期待できる一方で、誤った方法で行うと税務調査で否認されるリスクもあります。また、財産の状況によっては、生前贈与をせずに相続のほうが有利なケースもあります。

最適な相続対策は、個々の状況によって大きく異なるため、相続に詳しい税理士に相談し、シミュレーションを行った上で計画を立てることを強くおすすめしますベンナビ相続では、全国の相続に強い税理士を検索でき、初回相談無料の事務所も多数登録されています。

適切な専門家のサポートを受けながら、ご家族の状況に合った最適な相続対策を進めていきましょう。

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