相続放棄の手続き方法と期限|必要書類・費用・注意点を解説【2026年最新】

親が借金を抱えたまま亡くなった。突然のことで何をすべきか分からない——そんな状況で「相続放棄」という言葉を初めて知る方は少なくありません。

相続放棄は、故人の借金や負の財産を引き継がないための有効な手段ですが、申述期限は原則3ヶ月以内と定められており、この期間を過ぎると原則として相続を承認したとみなされる可能性があります。

本記事では、相続放棄を検討している方・手続きを始めようとしている方に向けて、以下の内容をまとめて解説します。

  • 相続放棄の定義と民法上の根拠
  • 相続放棄が必要になる典型的なケース
  • 3ヶ月の期限と延長申請の方法
  • STEP別の手続きの流れ
  • 必要書類と費用の一覧(関係別)
  • 財産処分・次順位相続人への影響など注意点
  • 撤回・取消しができるケース
  • 弁護士・司法書士への相談タイミング
  • よくある質問(FAQ)

相続放棄の手続きは、正しい知識と早めの行動が結果を左右します。ぜひ最後までお読みください。

目次

相続放棄とは?民法第938条をわかりやすく解説

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産・負債をすべて引き継がないことを家庭裁判所に申し立てる手続きです。

民法第938条では「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」と定められており、口頭や書面での意思表示だけでは法的に有効とはならない点が重要です。

また、民法第939条は「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定しています。つまり、相続放棄が受理されると、その人は最初から相続人ではなかった扱いになります。

プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する

相続放棄は「借金だけを放棄して、預貯金だけ受け取る」といった選択的な利用はできません。被相続人の財産全体——預貯金・不動産・株式などのプラス財産も、借金・未払い税金・保証債務などのマイナス財産も——をすべて放棄する手続きです。

この点は限定承認(民法第922条)と異なる部分です。限定承認はプラスの財産の範囲内でマイナスを引き継ぐ制度ですが、相続人全員の同意が必要で手続きも複雑なため、実務上は相続放棄が多く選択されます。

相続放棄を選ぶ場合には、「受け取れる可能性のある財産がある場合でも、それも含めて放棄する」という覚悟が必要です。故人が自宅不動産を持っていた場合など、プラスの財産がある場合は、放棄前に専門家への相談を検討することをお勧めします。

なお、相続放棄は家庭裁判所に申述することで成立します。親族間での「もらわない」という口頭の約束や、遺産分割協議での「取り分なし」とする合意は、法的には相続放棄ではありません。これらは相続分の放棄または遺産分割協議の合意にすぎず、借金などのマイナス財産には効力が及ばない場合があるとされています。

相続放棄と遺産分割協議の「取り分なし」は別物

実務でよく見られる誤解として、「遺産分割協議で何も受け取らない合意をすれば、相続放棄と同じ効果がある」と思い込むケースがあります。

遺産分割協議で「自分は何も受け取らない」と合意しても、相続人としての地位は残ります。そのため、被相続人が後から判明した借金を持っていた場合、債権者から請求を受ける可能性があります。一方、家庭裁判所への相続放棄申述が受理された場合は、初めから相続人ではなかったとみなされるため、借金の返済義務も生じない扱いになります。

借金の有無が不明な場合や、相続放棄を考えている場合は、遺産分割協議のみで処理しようとするのではなく、家庭裁判所への正式な申述手続きを取ることが重要です。

相続放棄が必要・有効なケース

相続放棄が選択されるケースは、借金を抱えた親の相続だけではありません。実務上よく見られる典型的な状況を整理します。

ケース①:借金・負債がプラスの財産を上回る場合

最も多い相続放棄の理由です。被相続人の借金(金融機関ローン・消費者金融・連帯保証債務など)が、預貯金や不動産などのプラス財産を上回っているケースでは、相続放棄が有効な選択肢の一つとなります。

特に、被相続人が消費者金融や複数の金融機関から借り入れをしていた場合、相続人が知らないうちに多額の負債を抱えていることがあります。「親が借金をしていたとは知らなかった」という事例は決して珍しくありません。

相続が発生したら、まず故人の財産・負債の全体像を調査することが重要です。負債の調査方法としては、信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への照会や、金融機関への残高証明書の取り寄せなどが考えられます。

ケース②:故人と長年疎遠で財産状況が不明な場合

長年音信不通だった親族が亡くなり、突然相続人となるケースもあります。このような場合、財産の全体像を把握するまでに時間がかかることが多く、期限内に判断しきれない状況も生じやすいといえます。

疎遠な親族の相続では、思わぬ借金が発覚することもあります。財産の調査が十分にできないまま期限が迫っている場合は、家庭裁判所への期間延長申請(熟慮期間の伸長)を検討することをお勧めします。

ケース③:保証人・連帯保証債務を抱えている場合

被相続人が第三者の借金の連帯保証人になっていた場合、その債務も相続の対象となります。主債務者が返済不能になると、相続人に請求が来る可能性があります。

連帯保証債務は財産目録には現れにくいため、相続前の調査で見落としやすい項目です。故人の書類や通帳明細などを丁寧に確認することが大切です。

ケース④:相続争いを避けたい・関与したくない場合

相続人間でのトラブルが予想される場合や、遺産分割に一切関わりたくない場合にも、相続放棄という選択が取られることがあります。

ただし、この場合もプラスの財産をすべて手放すことになります。相続放棄による「争いからの離脱」は可能ですが、財産面でのデメリットも理解したうえで判断することが重要です。

相続放棄の期限:3ヶ月以内とその延長方法

相続放棄の申述は、「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行う必要があります(民法第915条第1項)。この期間を「熟慮期間」といいます。

「相続の開始を知った時」とは、原則として被相続人の死亡を知った日です。ただし、相続人が後順位(例えば子が放棄したことで相続権が移ってきた親など)の場合は、自己が相続人となったことを知った日が起算点となるとされています。

3ヶ月を過ぎた場合はどうなるか

熟慮期間内に何も手続きをしないと、「単純承認」(すべての財産・負債を無条件に引き継ぐこと)をしたとみなされる可能性があります(民法第921条第2号)。

ただし、すべてのケースで「3ヶ月を過ぎると放棄できない」とは一概には言えません。判例では、被相続人に相続財産が全くないと信じたことに相当の理由があるなど、特別の事情がある場合は熟慮期間経過後でも相続放棄が認められるケースがあるとされています。

期限を過ぎてしまった場合は、諦める前に弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。

熟慮期間の延長(伸長)申請の方法

「3ヶ月以内に財産・負債の調査が終わらない」「疎遠で状況が把握できない」といった場合には、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申請できます(民法第915条第1項ただし書)。

伸長申請は、3ヶ月の熟慮期間が終わる前に行う必要があります。期限が過ぎてからの申請は受け付けられません。

項目 内容
申請先 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申請期限 熟慮期間(3ヶ月)が終わる前
必要書類 申述書・被相続人の死亡が分かる戸籍謄本・申述人の戸籍謄本など
費用 収入印紙800円・郵便切手(各裁判所の指定額)
延長期間 裁判所の判断により異なる(数ヶ月程度が目安)

伸長申請は正当な理由があれば認められるケースが多いとされていますが、申請が認められるかどうかは裁判所の判断によります。複雑な状況の場合は、専門家への相談を検討することをお勧めします。

相続放棄の手順:STEP別に解説

相続放棄の手続きは、大きく4つのステップで進みます。各ステップの内容と注意点を詳しく説明します。

STEP 1:相続財産(プラス・マイナス)の調査

相続放棄を判断するためには、まず被相続人の財産・負債の全体像を把握する必要があります。この調査が不十分だと、放棄後に「実は大きな財産があった」「借金が思ったより少なかった」という事態が生じる可能性があります。

調査すべき主な財産・負債の種類は以下の通りです。

  • 預貯金:通帳・キャッシュカードを確認し、金融機関に残高証明書を請求
  • 不動産:固定資産税の納税通知書・登記事項証明書で確認
  • 有価証券:証券会社からの取引報告書・残高証明書で確認
  • 生命保険:保険証券を確認(ただし死亡保険金は受取人固有の財産のため相続財産ではないケースが多い)
  • 借金・ローン:通帳明細の引き落とし・郵便物・信用情報機関への照会で確認
  • 連帯保証債務:契約書類の確認が必要

信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への情報開示請求は、本人(または相続人等)が行うことができます。借入れ状況の全体像を把握するうえで有効な手段の一つです。

調査には時間がかかることが多く、3ヶ月の熟慮期間内に終わらない場合は、前述の伸長申請を検討してください。また、財産調査の段階で故人の財産に手をつけないよう注意が必要です(詳細は注意点の項目をご参照ください)。

STEP 2:家庭裁判所への申述

財産・負債の調査が終わり、相続放棄の方針が固まったら、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。

申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。例えば、被相続人が東京都渋谷区に住んでいた場合は東京家庭裁判所に申述します。裁判所の管轄は、裁判所ウェブサイトの「裁判所の管轄区域」ページで確認できます。

申述は窓口への持参または郵送で行えます。書式は裁判所のウェブサイトからダウンロードできます(「相続放棄申述書」で検索)。記載内容は、被相続人との続柄・放棄の理由・相続財産の概要などです。

申述方法 内容
窓口持参 裁判所の家事受付窓口に書類一式を提出
郵送 必要書類一式を郵送(簡易書留・レターパック等が望ましい)
代理人申述 弁護士・司法書士が代理で申述することも可能

申述書の記載内容に不備がある場合は裁判所から補正を求められることがあります。書類の準備に不安がある場合は、司法書士や弁護士に依頼することで手続きをスムーズに進めることができます。

STEP 3:裁判所からの照会書への回答

申述書を提出すると、数週間以内に家庭裁判所から「相続放棄申述についての照会書」が届きます。これは、申述者が自らの意思で相続放棄を申述しているかどうかを確認するためのものです。

照会書の内容は、申述者が成人か未成年か、申述の動機・理由、財産の状況などを問う質問が中心です。照会書への回答は申述人本人が行う必要があり、回答期限内に返送しなければなりません。

回答内容が申述書の記載と大きく矛盾する場合や、照会書に返答がない場合は、申述が却下される可能性があるとされています。正直に、かつ申述書の内容と整合性を持たせて回答することが重要です。

照会書の記載例や回答方法については、裁判所の窓口でも教えてもらえることがあります。不安な場合は申述前に確認しておくとよいでしょう。

STEP 4:相続放棄申述受理通知書・証明書の受け取り

照会書への回答を受けて、裁判所が申述を適正と判断した場合、「相続放棄申述受理通知書」が申述人に郵送されます。この通知書が届いた時点で、相続放棄の手続きは完了です。

申述から受理通知までの期間は、裁判所や時期によって異なりますが、おおむね申述後2〜4週間程度が目安とされています。

受理通知書のほかに、「相続放棄申述受理証明書」が必要になることがあります。これは債権者や他の相続人に対して相続放棄の事実を証明するための書類で、裁判所に申請することで取得できます。手数料は1通150円程度が目安です(裁判所により異なる場合があります)。

債権者から「相続放棄した証明を出してほしい」と言われた場合には、この受理証明書を提出することで対応できます。受取通知書と受理証明書は別物であるため、混同しないよう注意が必要です。

相続放棄の必要書類一覧(被相続人との関係別)

相続放棄の申述に必要な書類は、申述人と被相続人との関係によって異なります。以下の表を参考にしてください。

なお、各書類は原本の提出が必要な場合がほとんどです。コピーで代用できるかどうかは裁判所に確認してください。

全申述人に共通する書類

書類 入手先 備考
相続放棄申述書 裁判所ウェブサイト・窓口 所定の書式を使用
被相続人の住民票除票または戸籍の附票 被相続人の最後の住所地の市区町村役場 最後の住所を証明するため
申述人(放棄する方)の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 被相続人との関係を証明
収入印紙800円分 郵便局・コンビニ等 申述1件ごとに必要
返信用郵便切手 郵便局等 各裁判所の指定額(目安:500〜1,000円程度)

関係別の追加書類

申述人の立場 追加で必要な書類
配偶者・子(第1順位) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本)
父母・祖父母(第2順位) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本+第1順位の相続人全員が放棄済みまたは不存在であることを証明する書類(戸籍謄本等)
兄弟姉妹・甥姪(第3順位) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本+第1・第2順位の全員が放棄済みまたは不存在であることを証明する書類
代襲相続人(孫・甥姪) 代襲の原因となった方の死亡が分かる戸籍謄本も必要

戸籍謄本は、本籍地が遠方の場合は郵送でも請求できます(定額小為替での手数料支払いが一般的)。マイナンバーカードがある場合はコンビニでも取得できます(対応自治体の場合)。

書類の準備は意外と手間と時間がかかります。特に先順位の相続人全員の放棄証明が必要な場合は、戸籍を一つひとつ辿っていく作業が必要になることもあります。司法書士に依頼すれば、書類収集も含めて代行してもらえます。

相続放棄にかかる費用の目安

相続放棄の費用は、自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合で大きく異なります。

自分で手続きする場合の費用

費用項目 金額の目安 備考
収入印紙 800円(1件) 申述人1人につき800円
返信用郵便切手 500〜1,000円程度 裁判所の指定額による
戸籍謄本(1通) 450円 コンビニ取得は400円(対応自治体のみ)
住民票除票(1通) 300〜400円程度 市区町村により異なる
郵送費・交通費等 数百〜数千円 郵送申述の場合は郵送料がかかる
合計目安 2,000〜5,000円程度 書類の通数・裁判所への距離等により変動

専門家(司法書士・弁護士)に依頼する場合の費用

依頼先 費用の目安 特徴
司法書士 1万〜5万円程度 書類作成・申述代行が可能(ただし本人申述のサポートが中心で、代理権は制限的)
弁護士 3万〜10万円程度 代理人として申述可能。複雑なケース・争いがある場合に対応

専門家への依頼費用は事務所・案件の複雑さによって大きく異なります。初回相談は無料としている事務所も多いため、まず相談してから依頼の有無を決めることをお勧めします。

なお、申述人が複数いる場合(例:子どもが3人全員で相続放棄する場合)は、1人ずつ申述が必要なため、その分の費用(収入印紙等)が複数名分かかります。

相続放棄の注意点:失敗しないために知っておくべきこと

相続放棄の手続きには、知らないと失敗につながる落とし穴がいくつかあります。以下の注意点を事前に把握しておくことが重要です。

注意点①:財産の処分・消費をすると放棄できなくなる可能性がある

故人の財産(現金・家財・車・骨董品など)を処分・消費・売却した場合、「相続財産の処分」とみなされ、単純承認したとみなされる可能性があります(民法第921条第1号)。

「親の家の片付けをした」「葬儀費用に充てるために預金を引き出した」といった行為が問題になるケースがあります。特に、故人の財産から不相当な額の葬儀費用を支出したり、形見分けとして価値のある財産を取得したりした場合は、相続を承認したとみなされる可能性があります。

相続放棄を検討しているなら、故人の財産には一切手を触れないことが原則です。どうしても必要な場合(例:葬儀費用の支出)は、事前に弁護士・司法書士に相談することをお勧めします。

なお、判例上、社会通念上許容される範囲の形見分けや葬儀費用の支出については、直ちに単純承認とはならないとする考え方もあるとされていますが、判断の基準は個々のケースによって異なります。安全のため、専門家に事前確認することが最善です。

注意点②:次順位の相続人に相続権が移ることを伝える必要がある

自分が相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移ります。このことを事前に伝えておかないと、親族間のトラブルに発展することがあります。

相続の順位は民法で定められており、次の通りです。

  • 第1順位:子(子が先に亡くなっている場合は孫が代襲相続)
  • 第2順位:父母・祖父母(直系尊属)
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は甥・姪が代襲相続)

例えば、子ども全員が相続放棄をした場合、次は被相続人の父母・祖父母に相続権が移ります。さらに父母・祖父母も放棄した場合、兄弟姉妹に移ります。放棄の連鎖が生じると、最終的には遠い親族にまで影響が及ぶことがあります。

放棄を決めたら、次順位の相続人にあたる親族に事前に連絡し、状況を共有することが望ましいでしょう。突然の通知によるトラブルを避けるため、丁寧なコミュニケーションをとることをお勧めします。

注意点③:一度受理された相続放棄は原則として撤回できない

相続放棄の申述が受理されると、原則として撤回はできません(民法第919条第1項)。「やっぱりプラスの財産があったので放棄を取り消したい」という申し出は、原則として認められません。

相続放棄を決断する前に、財産・負債の調査を十分に行い、慎重に判断することが大切です。

ただし、詐欺・脅迫・錯誤などによって相続放棄をした場合は、民法の規定に基づいて取消しができる場合があるとされています(民法第919条第2項)。取消しができるのは限られたケースのため、後述の「撤回・取消しができるケース」もご参照ください。

注意点④:相続放棄後も管理義務が残る場合がある

相続放棄をしたからといって、直ちにすべての義務から解放されるわけではありません。民法第940条では、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」と定められています。

例えば、被相続人と同居していた場合や、故人所有の空き家を管理していた場合には、放棄後も一定期間の管理義務が残ることがあります。不動産など管理に費用・手間がかかる財産がある場合は、専門家への相談が特に重要です。

相続放棄の撤回・取消しができるケース

原則として相続放棄の撤回はできませんが、一定の条件を満たす場合には取消しの申請ができることがあります。

取消しが認められる可能性があるケース

民法第919条第2項は、相続の承認・放棄について民法第1編(総則)の規定を準用しており、以下のような場合に取消しができるとされています。

  • 詐欺による相続放棄:他の相続人や第三者に欺かれて放棄した場合
  • 脅迫による相続放棄:脅されて放棄せざるを得なかった場合
  • 錯誤による相続放棄:重要な事実を誤解していたために放棄した場合

ただし、「借金があると思っていたが実はなかった」という程度では錯誤取消しは認められないケースが多いとされています。錯誤の内容が「動機の錯誤」として法律上の要件を満たす必要があり、判断が難しいケースも多くあります。

取消しを検討する場合は、弁護士への相談が不可欠です。取消しの申請は家庭裁判所に行い、認められるかどうかは裁判所の判断によります。

相続放棄の申述が却下された場合

申述の内容に重大な瑕疵がある場合や、期限を著しく過ぎている場合には、家庭裁判所が申述を却下することがあります。却下に対しては不服申し立て(即時抗告)が可能とされています。

申述却下の可能性を避けるためにも、書類の準備・照会書への回答は丁寧かつ正確に行うことが重要です。

弁護士・司法書士に相談すべきタイミング

相続放棄は自分で手続きすることも可能ですが、専門家のサポートが有効な場面も多くあります。

以下のような状況であれば、早めに専門家へ相談することをお勧めします。

こんな場合は専門家へ

  • 3ヶ月の期限が迫っている・すでに過ぎた可能性がある:期限内に手続きを完了させるため、専門家のサポートが有効です。
  • 被相続人の財産・負債が複雑で全体像が把握できない:信用情報の照会・金融機関への残高証明書請求など、調査の方法についてアドバイスをもらえます。
  • 疎遠だった親族の相続で書類収集が困難:戸籍収集・住民票取得など、書類準備を代行してもらえます。
  • 財産に手をつけてしまった後で放棄できるか不安:行為の内容によって単純承認とみなされるかどうかの判断が必要です。専門家への相談が重要です。
  • 次順位の親族との調整が必要:放棄の連鎖で親族トラブルになりそうな場合、専門家が仲介的な役割を担えることもあります。
  • 債権者から連絡が来ている:債権者への対応と相続放棄の手続きを並行して進めるには、弁護士のサポートが有効です。

弁護士と司法書士、どちらに依頼すべきか

専門家 向いているケース 費用目安
司法書士 書類準備・申述書作成のサポートが中心。比較的シンプルなケース 1万〜5万円程度
弁護士 代理人として申述可能。債権者対応・争いがある場合・複雑なケース 3万〜10万円程度

初回相談が無料の事務所も多いため、まず相談してから費用・対応内容を比較することをお勧めします。相続放棄の手続きは期限が命です。迷っている時間がもったいないと感じたら、早めに専門家に連絡することを検討してください。

弁護士・司法書士への無料相談を活用しましょう
相続放棄は期限が定められており、判断を誤ると取り返しのつかない事態になることもあります。「まず話を聞くだけ」でも専門家への相談は有効です。初回無料相談を実施している事務所も多いので、お早めにご連絡ください。

ケース別・状況別の対処法

相続放棄をめぐる状況は人によって異なります。よくある状況別に、対処のポイントをまとめます。

ケース①:期限まで1ヶ月を切っている場合

熟慮期間の残りが少ない場合は、すぐに行動することが重要です。書類収集と申述書の作成を並行して進め、書類が揃い次第すぐに申述することをお勧めします。

書類の一部が間に合わない場合でも、まず申述書を提出して後から補正を求められる形になることもあります。裁判所の窓口に事情を相談することも一つの方法です。時間がない場合こそ、司法書士・弁護士への相談を早急に検討してください。

ケース②:未成年の子どもが相続人になっている場合

未成年の相続人が相続放棄をする場合、親権者が法定代理人として申述を行います。ただし、同じ相続に親権者自身も相続人である場合は、利益相反の問題が生じるため、特別代理人の選任が必要となります。

例えば、父親が死亡して母親と未成年の子が相続人となる場合、母親が子の代理人として相続放棄の申述をするには、家庭裁判所に特別代理人の選任申立てが必要になるケースがあります。このようなケースは手続きが複雑になるため、早めに専門家にご相談されることをお勧めします。

ケース③:相続人が多数いる場合

相続人の人数が多い場合(例:被相続人に子ども・孫が複数いる、兄弟姉妹が多数いるなど)は、全員が相続放棄の手続きを個別に行う必要があります。1人が放棄しても他の相続人に相続権は残ります。

全員が放棄する場合は、スケジュールを共有して期限内に全員が申述を完了できるよう調整することが必要です。手続きをまとめて司法書士に依頼することで、効率よく進められる場合もあります。

ケース④:相続放棄後に債権者から連絡が来た場合

相続放棄が受理された後でも、相続放棄の事実を知らない債権者から請求連絡が来ることがあります。このような場合は、「相続放棄申述受理証明書」を取得し、債権者に送付することで対応できます。

書類を送付した後も連絡が続く場合や、法的手続きをとると言われた場合は、弁護士への相談をお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄した後でも葬儀費用の支払いはできますか?

葬儀費用については、社会通念上相当な範囲内であれば、直ちに単純承認(相続放棄ができなくなる行為)とはならないとする考え方もあるとされています。ただし、被相続人の預金から多額の葬儀費用を引き出す行為は、財産の処分とみなされるリスクがあります。相続放棄を検討している場合は、葬儀費用の支出方法についても事前に専門家に確認することをお勧めします。相続放棄後に費用を自己負担する形をとるのが、最も安全な対応の一つとされています。

Q2. 相続放棄は郵送でできますか?

はい、相続放棄の申述は郵送でも可能です。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所あてに、申述書と必要書類を送付します。郵送の場合は簡易書留やレターパックプラスを使用することをお勧めします(追跡・受取確認ができるため)。書類に不備があると補正を求められる場合があるため、裁判所の書式・チェックリストを確認してから送付してください。

Q3. 相続放棄した後で相続財産に新たなプラス財産が見つかった場合はどうなりますか?

相続放棄が受理された後で、被相続人のプラス財産(例えば知らなかった預金口座や不動産など)が新たに発見されても、原則として相続放棄の効力は変わりません。つまり、放棄した後で発見された財産も受け取ることはできません。相続放棄は取り返しのつかない手続きであるため、財産調査を十分に行ってから決断することが重要です。

Q4. 被相続人の借金があるかどうか確認する方法はありますか?

借金の有無を確認するには、信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への情報開示請求が有効な手段の一つです。相続人(法定代理人)として開示請求できる場合があります。また、被相続人宛の郵便物(督促状など)や通帳の引き落とし明細を確認する方法も実務上よく使われます。信用情報機関の開示手続きの方法は各機関のウェブサイトで確認できます。

Q5. 相続放棄の手続き中に3ヶ月を過ぎそうになった場合はどうすればよいですか?

3ヶ月の熟慮期間が終わる前に、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て(熟慮期間の伸長申請)」を行ってください。申立書・被相続人の死亡が分かる戸籍謄本・申述人の戸籍謄本などを準備し、収入印紙800円と郵便切手を添えて申立てます。伸長期間は裁判所の判断によりますが、数ヶ月程度延長されるケースが多いとされています。期限が迫っている場合は、すぐに弁護士・司法書士にご相談されることをお勧めします。

まとめ:相続放棄は早めの判断と正確な手続きが重要

相続放棄は、被相続人の借金や負の財産を引き継がないための有効な手段ですが、手続きには期限・要件・注意点が多くあります。この記事のポイントを改めて整理します。

  • 相続放棄は民法第938条に基づき、家庭裁判所への申述が必要。口約束・遺産分割協議のみでは法的効力がない。
  • 申述期限は「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」(熟慮期間)。期限が迫っていれば伸長申請も可能。
  • 手続きはSTEP1(財産調査)→STEP2(申述)→STEP3(照会書回答)→STEP4(受理通知)の流れで進む。
  • 必要書類は被相続人との関係によって異なる。先順位の相続人の放棄証明が必要なケースもある。
  • 自分で手続きする場合の費用は2,000〜5,000円程度。専門家に依頼する場合は1万〜10万円程度が目安。
  • 故人の財産を処分・消費すると単純承認とみなされ、放棄できなくなる可能性があるため注意が必要。
  • 自分が放棄すると次順位の親族に相続権が移ることを事前に伝えることが望ましい。
  • 一度受理された相続放棄は原則として撤回できないため、決断は慎重に。

相続放棄は「3ヶ月以内」という期限があるため、迷っている時間は多くありません。特に借金の有無が不明な場合・書類収集が困難な場合・次順位の親族への影響が大きい場合は、早めに弁護士・司法書士に相談することをお勧めします。

専門家への無料相談で、手続きの不安を解消しましょう
相続放棄の期限・手続き・書類について、ご自身の状況に合わせたアドバイスを専門家から受けることができます。初回相談無料の事務所も多くあります。お早めにご相談されることをお勧めします。

免責事項・参考情報

本記事は、一般的な情報提供を目的として作成されており、個別の法的アドバイスや専門的なアドバイスを提供するものではありません。相続放棄に関する判断・手続きは、個々の状況によって大きく異なります。具体的な手続きについては、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

本記事は2026年3月時点の法令・情報に基づいています。法改正や制度変更により、内容が変わる場合があります。最新情報については、裁判所ウェブサイト(https://www.courts.go.jp/)、法務省ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/)、国税庁ウェブサイト(https://www.nta.go.jp/)等の公的機関の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

終活葬儀ナビ編集部。身近な家族の葬儀・相続・遺品整理を実際に経験した編集メンバーが中心となり、終活に直面する方の「わからない」「不安」に寄り添う情報発信を行っています。厚生労働省・国税庁・地方自治体など公的機関の一次情報を徹底的に参照しつつ、実務目線での注意点を織り交ぜた記事制作を心がけています。取り扱い領域は、葬儀(家族葬・一日葬・直葬)、お墓・供養(納骨堂・樹木葬・永代供養)、相続(相続税・遺言書・遺産分割)、遺品整理、ペット供養など終活全般。個別具体的な法律・税務相談については、必ず弁護士・税理士など有資格の専門家にご相談ください。

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