相続人の確認方法・戸籍謄本の集め方完全ガイド|法定相続人の順位・取り寄せ手順【2026年最新】

親や配偶者が亡くなった後、最初に直面する問いが「相続人は誰なのか」という確認作業です。葬儀が終わり、少し落ち着いた頃に「戸籍謄本を集めなければならない」と聞いて、何から手をつければよいかわからなくなる方は少なくありません。

相続人の確認は、遺産分割・相続登記・預金解約・相続税申告など、あらゆる相続手続きの大前提です。相続人を一人でも見落とすと、後から遺産分割協議が無効になるリスクがあります。特に被相続人に前婚の子や認知した子がいた場合、見落としは深刻なトラブルに発展します。

この記事では、相続人の確認が必要な理由から、法定相続人の範囲・順位・相続割合、戸籍謄本の種類と集め方、法定相続情報証明制度の活用法、相続人が見つからない場合の対処法まで、相続手続きを初めて経験する方が迷わず動けるよう、実務的な手順をすべて解説します。

目次

相続人確認が必要な理由

相続人不明のまま進めるリスク

相続人の確認を省略したまま手続きを進めることは、法律上許されていません。民法第907条により、遺産分割協議は法定相続人全員の合意がなければ無効とされています。後から「知らなかった相続人」が現れた場合、すでに進めた協議や手続きをやり直すことになります。

特に深刻なのは、相続登記が完了した後に見落とした相続人が判明したケースです。不動産の名義変更は一度行うと変更に多大な費用と時間がかかります。金融機関から払い出した預金を返還しなければならない事態も考えられます。

2024年4月から相続登記の申請が義務化されました。相続発生を知った日から3年以内に登記を行わなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。この義務化が進む中で、相続人を正確に把握することの重要性はさらに高まっています。

相続人が不明のまま放置することで生じる主なリスクは以下のとおりです。

  • 遺産分割協議の無効(後から相続人が現れた場合にやり直しが必要)
  • 相続登記の遅延による過料リスク(2024年4月以降)
  • 金融機関での手続き不備(相続人全員の署名・捺印が揃わず手続きが止まる)
  • 相続税申告の誤り(相続人の数によって基礎控除額が変わる)
  • 相続放棄の期限超過(相続開始を知った日から3か月以内に申述が必要)

これらのリスクを回避するためにも、相続手続きの最初のステップとして相続人の確定を行うことが不可欠です。

相続手続きの全体像

相続手続きは、大きく分けて次の流れで進みます。相続人の確認はその最初のステップに位置します。

  • ステップ1:相続人の確定(戸籍謄本の収集・法定相続人の特定)
  • ステップ2:相続財産の調査(不動産・預金・株式・負債などの洗い出し)
  • ステップ3:相続方法の選択(単純承認・限定承認・相続放棄を3か月以内に選択)
  • ステップ4:遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を話し合う)
  • ステップ5:各種名義変更・解約手続き(不動産登記・預金解約・証券口座など)
  • ステップ6:相続税の申告・納付(該当する場合のみ、10か月以内)

ステップ1の相続人確定が完了しなければ、ステップ2以降に進むことができません。戸籍謄本を集めて相続人を正確に確定させることが、すべての相続手続きの基礎となります。

相続人の確定に必要な期間は、被相続人の転籍歴や家族構成によって異なります。単純なケースでは2〜3週間程度で完了しますが、複数回の転籍があったり改製原戸籍が必要な場合は1〜2か月かかることもあります。早めに着手することが大切です。

相続手続きは期限が設けられているものも多く、相続放棄・限定承認は相続開始を知った日から3か月以内、相続税の申告は10か月以内という制限があります。相続人の確定を後回しにすると、これらの期限を超過してしまうリスクが高まります。相続が発生したら、できる限り早く戸籍の収集に取りかかることをおすすめします。

法定相続人の範囲と順位

第1〜3順位の詳細

法定相続人(ほうていそうぞくにん)とは、民法により相続する権利が定められた人のことです。被相続人が遺言を残している場合でも、法定相続人には「遺留分(いりゅうぶん)」という最低限の取り分が民法第1042条により保障されています。

血族の相続順位は、民法第887条・889条に以下のとおり定められています。

  • 第1順位:子(実子・養子・婚外子)および代襲相続人(民法第887条)
  • 第2順位:直系尊属(父母・祖父母など)(民法第889条第1項第1号)
  • 第3順位:兄弟姉妹および代襲相続人(甥・姪)(民法第889条第1項第2号)

上位順位の相続人が一人でもいれば、下位順位の方は相続人になりません。たとえば子が1人でもいれば、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。法定相続分は次のとおりです。

順位 相続人 配偶者がいる場合の法定相続分 配偶者がいない場合の法定相続分
常に相続人 配偶者 第1順位と:1/2、第2順位と:2/3、第3順位と:3/4 (配偶者なし)
第1順位 子(実子・養子・婚外子) 残り1/2を子全員で均等分割 全部を子全員で均等分割
第2順位 父母(直系尊属) 残り1/3を父母で均等分割 全部を父母で均等分割
第3順位 兄弟姉妹 残り1/4を兄弟姉妹で均等分割 全部を兄弟姉妹で均等分割

なお、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の2分の1とされています(民法第900条第4号但書)。

相続人が複数いる場合の相続分は、上記の法定相続分を相続人の人数に応じて均等割りにします。たとえば子が3人いる場合、子の相続分(配偶者がいる場合は1/2)を3等分(各6分の1)します。遺産分割協議で全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で分割することも可能です。

配偶者は常に相続人になる

民法第890条により、配偶者(婚姻届を提出している法律上の配偶者)は、常に相続人になります。血族相続人の順位に関わらず、必ず相続人に含まれます。

ただし、配偶者と認められるのは法律上の婚姻関係にある方のみです。内縁関係(事実婚・婚姻届を提出していない関係)のパートナーは、どれほど長く同居・生計を共にしていても法定相続人にはなりません。内縁のパートナーに財産を渡したい場合は、遺言書の作成が必要です。

離婚した元配偶者も相続人にはなりません。一方で、離婚した元配偶者との間に生まれた子は、親権の所在にかかわらず法定相続人(第1順位)のままです。この点は混同されやすいため注意が必要です。

配偶者が相続人でない主なケースは以下のとおりです。

  • 離婚が成立している場合(協議離婚・裁判離婚どちらも)
  • 婚姻届を提出していない内縁関係の場合
  • 相続放棄を申述した場合
  • 相続欠格・廃除が確定した場合

なお、配偶者が相続人になる場合の相続分は、他の相続人の順位によって変わります。子がいれば2分の1、子がおらず父母がいれば3分の2、子も父母もおらず兄弟姉妹がいれば4分の3が配偶者の法定相続分になります。

代襲相続・再婚・養子縁組のケース

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人になるはずだった方が相続発生前に死亡していた場合に、その方の子が代わりに相続することです(民法第887条第2項)。

代襲相続が発生する主なケースは以下のとおりです。

  • 被相続人の子がすでに亡くなっていた場合 → その子の子(孫)が代襲相続人
  • 孫もすでに亡くなっていた場合 → ひ孫が代襲相続人(再代襲・民法第887条第3項)
  • 被相続人の兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合 → その子(甥・姪)が代襲相続人

兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪の世代(1代)のみです。甥・姪がすでに亡くなっていても、その子がさらに代襲相続人になることはありません。子の代襲相続(孫以降)とは異なります。

再婚がある場合は、前婚・後婚の双方の子が相続人になります。被相続人が何度か婚姻・離婚を繰り返している場合、すべての婚姻期間中に生まれた子・認知した子を戸籍から特定する必要があります。再婚相手の連れ子については、養子縁組をしていない限り相続権はありません。

養子縁組をした養子は、民法第809条により実子と同等の第1順位の相続人です。特別養子縁組の場合は実親との親族関係が終了しますが(民法第817条の9)、普通養子縁組の場合は実親の相続権も保持します。養子の有無も戸籍から確認します。なお、相続税の計算においては、養子の数が法定相続人の数に算入できる人数に制限がある点にも留意してください(実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで)。

相続人の確認に必要な書類

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の違い

相続手続きで「戸籍謄本を集めてください」と言われると、一種類の書類を集めればよいと思いがちですが、実際には3種類の書類を使い分ける必要があります。被相続人の生きた時代・転籍の有無・制度改正のタイミングによって、必要な書類の種類が変わります。

書類名 内容 窓口手数料
戸籍謄本(全部事項証明書) 現在有効な戸籍の全員分の記載を写したもの。コンピュータ化後の戸籍に対して発行される。 450円/通
除籍謄本(じょせきとうほん) 戸籍内の全員が除籍になった後の戸籍の写し。死亡・転籍・婚姻等で全員が抜けた後に「除籍」となる。 750円/通
改製原戸籍謄本(かいせいはらこせきとうほん) 戸籍法の改正(昭和32年・平成6年等)以前に作られた旧様式の戸籍の写し。「はらこせき」とも呼ばれる。 750円/通

被相続人が高齢の場合(戦前・戦中生まれ)は、明治・大正・昭和初期の旧様式の改製原戸籍が必要になることがあります。旧様式の戸籍は縦書きで記載されており、「戸主」を中心とした家制度に基づいた記載になっているため、解読に慣れが必要です。

改製原戸籍の読み解きが難しい場合は、司法書士・行政書士に依頼することを検討してください。判読を誤ると相続人の見落としにつながります。

なお、2024年3月から戸籍法が改正され、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本を取得できる「広域交付制度」が始まりました。この制度により、複数の市区町村に本籍があった場合でも、一か所の窓口でまとめて取得できるケースが増えています。ただし改製原戸籍・除籍謄本については広域交付の対象外となる場合もあるため、事前に窓口に確認することをおすすめします。

住民票・印鑑証明が必要な場面

相続手続きでは戸籍謄本のほかに、住民票・印鑑登録証明書(印鑑証明)が必要になる場面があります。それぞれの役割と必要なタイミングを整理しておきましょう。

被相続人の住民票(除票)が必要になる場面は以下のとおりです。

  • 不動産の相続登記(法務局への申請書類として被相続人の最後の住所の証明)
  • 金融機関の相続手続きで住所確認が必要な場合

相続人全員の住民票が必要になる場面は以下のとおりです。

  • 法定相続情報一覧図の申出(任意)
  • 不動産の相続登記(相続人の住所証明として)

相続人全員の印鑑登録証明書が必要になる場面は以下のとおりです。

  • 遺産分割協議書への押印(実印であることを証明するため)
  • 金融機関での相続手続き(預金解約・名義変更)

印鑑証明書は遺産分割協議書に添付するために必要です。協議書に押す印鑑は必ず実印でなければなりません。実印の登録がない方は事前に市区町村窓口で登録を済ませておく必要があります。印鑑証明書の有効期限は発行から3か月以内とする金融機関が多いため、遺産分割協議書の作成・押印に合わせて取得するタイミングを調整してください。

また、相続人のうち未成年者がいる場合は、親権者が代理人として手続きを行いますが、親権者も同じ相続人の場合は「利益相反」になるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要があります。この場合も戸籍謄本のほか、特別代理人選任申立書・財産目録などが必要です。

戸籍謄本の集め方・手順

STEP1 被相続人の出生〜死亡の戸籍を取得

戸籍謄本の収集は、まず被相続人の死亡時の戸籍から始めます。死亡時の戸籍には「死亡」の記載があり、その戸籍の「改製」や「転籍前の本籍地」情報をたどることで、順番に古い戸籍を取得していきます。

具体的な手順は以下のとおりです。

  • 死亡時の本籍地の市区町村で「除籍謄本」を取得する(死亡届が受理された後、数週間以内に発行される)
  • 取得した除籍謄本に記載されている「従前の戸籍(転籍前の本籍地)」を確認する
  • 転籍前の市区町村に「除籍謄本」または「改製原戸籍謄本」を請求する
  • これを「出生時の戸籍」が得られるまで繰り返す

被相続人が複数回転籍をしている場合は、複数の市区町村に請求が必要です。転籍ごとに本籍地が変わっているため、それぞれの市区町村窓口(または郵送)で取得します。

出生時の戸籍に「出生」の記載があれば、それ以上さかのぼる必要はありません。ただし、出生時の記載が「入籍」と記されている場合は、さらに前の戸籍を確認する必要があります。被相続人が昭和初期以前に生まれた場合は、旧民法下の「家」制度に基づく戸籍(明治・大正期の戸籍)まで取得が必要になることがあります。

市区町村によっては「連続性の確認」として、前の戸籍と次の戸籍がつながっていることを示すため、複数通の戸籍をセットで提出するよう求められることがあります。法務局での相続登記や金融機関手続きの際に、戸籍の「つながり」が確認できるよう、収集した戸籍は時系列順に整理しておくと便利です。

STEP2 相続人全員の現在の戸籍を取得

被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集が完了したら、次に相続人全員の現在の戸籍謄本を取得します。これにより、相続人が現在も存命であること(死亡していないこと)、相続欠格・廃除に該当しないことを確認します。

相続人全員の現在の戸籍謄本が必要な理由は次のとおりです。

  • 相続人が存命であることの証明(被相続人より先に亡くなっていた場合は代襲相続が発生する)
  • 代襲相続の発生有無の確認
  • 法定相続情報一覧図の申出に必要
  • 金融機関・法務局から提出を求められる

各相続人は自分の現在の本籍地の市区町村窓口で「戸籍謄本(全部事項証明書)」を取得します。相続人が各地に分散している場合は、それぞれが自分の本籍地の市区町村に郵送請求するか、各自が窓口で取得して取りまとめます。

法定相続情報一覧図を活用する場合は、相続人全員の戸籍謄本に加えて、相続人全員の住民票も必要になります。なお、代襲相続が発生している場合は、亡くなった相続人(被代襲者)の戸籍謄本と代襲相続人(孫・甥・姪)の現在の戸籍謄本が追加で必要になります。

市区町村窓口・郵送・マイナンバーカードでの取得方法

戸籍謄本の取得方法は複数あります。状況に合わせて最適な方法を選んでください。

窓口での取得は最も確実な方法です。本籍地の市区町村役場の戸籍担当窓口に、本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)と申請書を持参します。相続のために必要であることを伝えると、担当者が必要な書類を案内してくれる場合があります。直接担当者に相談できるため、必要な書類の種類・通数を確認しながら収集できる点が窓口取得のメリットです。

郵送請求は、本籍地が遠方にある場合に便利な方法です。各市区町村のウェブサイトから請求書をダウンロードし、定額小為替(ゆうちょ銀行で購入)・返信用封筒(切手貼付・住所記入済み)・本人確認書類のコピーを同封して郵送します。回答まで1〜2週間程度かかることが多いです。

マイナンバーカードを使ったコンビニ交付は、現在の本籍地の市区町村がコンビニ交付に対応しており、かつ有効な戸籍謄本(現在戸籍のみ)の取得に限定されます。除籍謄本・改製原戸籍はコンビニ交付の対象外である自治体がほとんどです。

2024年3月から始まった広域交付制度では、本籍地以外の市区町村窓口でも、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を一括して取得できるようになりました。複数の本籍地にまたがる場合でも一か所で取得できるため、手続きが大幅に簡略化されます。ただし、コンピュータ化されていない古い戸籍や一部の改製原戸籍は対象外の場合がありますので、窓口で事前に確認することをおすすめします。

費用の目安

戸籍謄本の収集にかかる費用は、被相続人の転籍歴・家族構成・戸籍の数によって異なります。一般的な目安は以下のとおりです。

書類の種類 窓口取得 郵送請求(定額小為替)
戸籍謄本(全部事項証明書) 450円/通 450円分の定額小為替
除籍謄本・改製原戸籍謄本 750円/通 750円分の定額小為替
住民票(除票含む) 200〜300円/通(自治体により異なる) 同額の定額小為替
印鑑登録証明書 200〜300円/通(自治体により異なる) 窓口のみ(郵送不可)

定額小為替はゆうちょ銀行・郵便局の窓口で購入できます(発行手数料:1枚100円)。郵送請求では通数を事前に正確に計算することが難しいため、多めに同封し、余剰分は返還してもらうよう申し添えるのが一般的です。

被相続人の転籍が多い場合・改製原戸籍が多く必要な場合は、戸籍取得だけで5,000〜15,000円程度かかることもあります。これに加えて郵送費(封筒・切手代)が必要です。費用を抑えたい場合は、広域交付制度を活用して一か所の窓口でまとめて取得することを検討してください。

戸籍収集を司法書士・行政書士に依頼する場合は、実費に加えて代行手数料(3〜8万円程度)がかかります。ご自身での収集が難しい場合や、戸籍の通数が多くなりそうな場合は、早めに専門家への相談を検討することをおすすめします。

法定相続情報一覧図の活用

法定相続情報一覧図とは

法定相続情報一覧図(ほうていそうぞくじょうほういちらんず)は、法務局が相続関係を証明した公式書類です。相続人全員の関係を一枚の図にまとめたもので、法務局の認証が入ることで公的な証明力を持ちます。

この制度は「法定相続情報証明制度」として2017年5月に始まりました。従来は相続手続きのたびに大量の戸籍謄本の束を各機関に提出する必要がありましたが、この一覧図があれば、戸籍謄本の束の代わりに一覧図の写しを提出できます。

法定相続情報一覧図の主なメリットは以下のとおりです。

  • 戸籍謄本の束を何度もコピー・提出する手間が省ける
  • 必要枚数を無料で複数枚取得できる(法務局による認証済み写し)
  • 複数の金融機関・法務局に同時並行で手続きを進めやすくなる
  • 有効期限がないため、手続きが長引いても使い続けられる

法定相続情報一覧図は相続人が自分で申出することができます。司法書士等の専門家に依頼することも可能ですが、費用はかかりません。一覧図の作成・提出・認証写しの交付はすべて無料です。収集した戸籍謄本が多い場合や、複数の金融機関・不動産の手続きが必要な場合は、積極的に活用することをおすすめします。

申請方法と使えるシーン

法定相続情報一覧図の申出手順は以下のとおりです。

  • ステップ1:被相続人の戸籍謄本一式(出生から死亡まで)と相続人全員の戸籍謄本・住民票を収集する
  • ステップ2:法定相続情報一覧図を自分で作成する(法務局のウェブサイトにひな形あり)
  • ステップ3:申出書・一覧図・収集した戸籍謄本一式を、被相続人の最後の本籍地・住所地・申出人の住所地・不動産所在地のいずれかを管轄する法務局に提出する
  • ステップ4:法務局が審査を行い、認証済みの一覧図の写しを交付する(通常1〜2週間程度)

一覧図の写しは必要な枚数を無料で交付してもらえます。複数の金融機関・証券会社・不動産登記がある場合は、必要枚数を事前に計算して申出時に枚数を伝えてください。後から追加交付を求めることもできます。

法定相続情報一覧図が使えるシーンは以下のとおりです。

  • 不動産の相続登記(法務局)
  • 預金口座の解約・名義変更(銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行等)
  • 株式・投資信託の名義変更(証券会社)
  • 自動車の名義変更(陸運局)
  • 相続税の申告(税務署)

ただし、金融機関によっては独自の手続き書類を求める場合があります。一覧図の写しで対応可能かどうか、事前に各機関に確認することをおすすめします。また、一覧図には相続放棄をした方を記載しないため、相続放棄があった場合は「相続放棄申述受理証明書」を別途用意して提出する必要があります。

相続人が不明・見つからない場合の対処法

行方不明の相続人への対応

相続人の中に行方不明の方がいる場合でも、その方の同意なしに遺産分割協議を進めることはできません。行方不明者がいる場合は、法的な手続きを経て対応する必要があります。

不在者財産管理人の選任(民法第25条)は、行方不明の期間が7年未満の場合に有効な方法です。家庭裁判所に申立てを行い、行方不明者の代わりに財産を管理・代理する人(不在者財産管理人)を選任してもらいます。選任された管理人が遺産分割協議に参加することで、行方不明者がいる場合でも協議を進められます。不在者財産管理人は通常、弁護士・司法書士などの専門家が選任されます。

失踪宣告(民法第30条・31条)は、行方不明期間が7年以上(危難失踪の場合は1年以上)の場合に利用できる制度です。家庭裁判所への申立てにより、行方不明者を法律上「死亡したものとみなす」宣告が得られます。失踪宣告が確定すると、その方を相続人から除いた形で遺産分割協議を進められます。

行方不明者への対応は家庭裁判所への申立てが必要です。手続きには数か月〜1年以上かかることがあります。早めに弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

また、相続人の存在は確認できているが連絡先がわからない場合は、弁護士・行政書士が戸籍の附票(ふひょう)から住所を調査し、手紙・内容証明郵便で連絡を取ることが一般的です。戸籍の附票には本籍地の異動と住所の変遷が記録されており、最新の住所を特定する手段として活用できます。

相続人調査を専門家に依頼する場合

戸籍謄本の収集・相続人の特定は自分で行うことができますが、以下のような状況では専門家への依頼を検討することをおすすめします。

  • 被相続人の転籍が多く、戸籍の収集に多くの時間・手間がかかる場合
  • 旧様式の改製原戸籍の解読が難しい場合
  • 代襲相続・養子縁組・再婚など複雑な家族関係がある場合
  • 行方不明の相続人や連絡のとれない相続人がいる場合
  • 相続人の間でトラブルが起きている・起きそうな場合

相続人調査を依頼できる主な専門家と、それぞれの役割は以下のとおりです。

専門家 対応できること 費用の目安
司法書士 戸籍収集・相続関係図作成・相続登記・法定相続情報一覧図申出 5〜15万円程度(内容による)
行政書士 戸籍収集・相続関係図作成・遺産分割協議書作成(紛争なしの場合) 5〜10万円程度(内容による)
弁護士 相続人間のトラブル対応・交渉・調停・裁判 10〜50万円以上(内容による)

相続手続きの中でも「戸籍収集・相続人調査」だけを依頼することも可能です。費用は依頼する作業の範囲と戸籍の通数によって変わります。複数の専門家に見積もりを依頼したうえで、信頼できる専門家を選ぶことが大切です。

市区町村の法律相談窓口・法テラス(日本司法支援センター)では、弁護士・司法書士による無料相談を実施している場合があります。費用の負担が気になる場合は、まず無料相談を利用することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q:戸籍謄本を集めるのにどのくらいかかるか

被相続人の転籍歴や家族構成によって異なりますが、一般的な目安は次のとおりです。

転籍が少なく家族構成がシンプルな場合は、2〜3週間程度で収集が完了することがあります。一方、被相続人が複数回転籍しており、複数の市区町村に郵送請求が必要な場合や、旧様式の改製原戸籍が多く必要な場合は、1〜2か月かかることもあります。

2024年3月から始まった広域交付制度を活用すると、複数の市区町村にまたがる場合でも一か所の窓口で取得できるため、収集にかかる期間を短縮できる場合があります。郵送請求よりも窓口での取得(または広域交付)のほうが時間を短縮しやすいです。専門家に依頼する場合は、まず1〜2週間程度で必要書類の洗い出しが完了し、全収集まで1か月前後が目安になることが多いです。

Q:前婚の子(婚外子)は相続人になるか

前婚の子も婚外子(認知した子)も、いずれも法定相続人(第1順位)になります。前婚が離婚で解消されていても、その婚姻中に生まれた子の相続権は失われません。親権がどちらにあるかも関係ありません。

婚外子(非嫡出子)については、被相続人が認知している場合に限り相続権が生じます(民法第779条)。認知の記載は被相続人の戸籍に記載されますが、認知された子の戸籍には被相続人の名前が記載されます。被相続人の戸籍を出生までさかのぼって収集することで、認知した子の存在を確認できます。

前婚の子・認知した子の存在は、現在の戸籍には記載されていない場合があります。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を収集することで、見落とさずに把握できます。このような事情がある場合は、家族間で情報を共有したうえで専門家にも相談することをおすすめします。

Q:相続放棄した人の戸籍は必要か

相続放棄をした方の戸籍謄本は、原則として不要です。ただし、相続放棄が受理されたことを証明するために「相続放棄申述受理証明書」が必要になる場合があります。

具体的には以下の場面で必要になります。

  • 金融機関の相続手続きで、相続放棄した方がいることを証明するとき
  • 不動産の相続登記の申請書類として
  • 次順位の相続人が手続きを進める際に、前順位者全員が放棄したことを証明するとき

相続放棄申述受理証明書は、申述を行った家庭裁判所に請求することで取得できます(1通150円程度)。相続放棄を行った本人または利害関係人が請求できます。なお、相続放棄の申述受理証明書の請求には「事件番号」が必要です。申述時に裁判所から送付される「申述受理通知書」を保管しておくことをおすすめします。

Q:専門家に依頼する費用の目安は

相続手続きを専門家に依頼する際の費用の目安は以下のとおりです。ただし、依頼内容・相続財産の規模・各事務所の料金体系によって大きく異なります。事前に複数の専門家に見積もりを依頼することをおすすめします。

  • 戸籍収集・相続関係図作成のみ(行政書士・司法書士):3〜8万円程度
  • 遺産分割協議書の作成(行政書士・司法書士):5〜15万円程度
  • 相続登記(司法書士):5〜15万円程度(登録免許税は別途)
  • 相続税申告(税理士):遺産総額の0.5〜1.5%程度(最低報酬あり)
  • 相続トラブルの交渉・調停・裁判(弁護士):10〜50万円以上

費用を抑えたい場合は、戸籍収集は自分で行い、遺産分割協議書の作成や相続登記だけを専門家に依頼する方法もあります。また、市区町村の無料法律相談・法テラスの法律援助制度の活用も検討してください。相続財産の総額が少ない場合や、相続人全員の合意が取れている場合は、費用を抑えながら手続きを進められることがあります。

まとめ

相続人の確認は、すべての相続手続きの出発点です。相続人を一人でも見落とすと、遺産分割協議が無効になるなど深刻なリスクが生じます。早めに着手して正確に確認することが大切です。

この記事の要点を整理します。

  • 相続人の確認には、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)の収集が必要です。現在の戸籍だけでは把握できない相続人がいる場合があります。
  • 法定相続人の範囲は、配偶者・子(第1順位)・父母(第2順位)・兄弟姉妹(第3順位)です。配偶者は常に相続人になります。内縁の配偶者・離婚した元配偶者は相続人になりません。
  • 前婚の子・認知した子・養子も法定相続人です。現在の戸籍だけでは把握できない場合があるため、出生までさかのぼって戸籍を収集することが重要です。
  • 代襲相続(子や兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合)が発生すると、孫・甥・姪が相続人になります。見落としに注意が必要です。
  • 戸籍謄本の取得は、窓口・郵送・広域交付制度(2024年3月〜)の活用が可能です。郵送の場合は定額小為替と返信用封筒を用意します。
  • 法定相続情報一覧図を法務局で作成しておくと、戸籍謄本の束を何度も提出する手間が省けます。複数の金融機関・法務局への手続きがある場合に特に有効です。無料で利用できます。
  • 行方不明の相続人がいる場合は、不在者財産管理人の選任・失踪宣告などの法的手続きが必要です。早めに専門家に相談することをおすすめします。
  • 複雑な家族構成・旧様式の戸籍が多い・相続人間にトラブルがある場合は、司法書士・行政書士・弁護士への依頼を検討してください。

相続は、亡くなった方への敬意と残されたご遺族の今後の生活を守るための大切な手続きです。正確な相続人の確定を第一歩として、落ち着いて一つひとつの手続きを進めていただければと思います。

手続きの途中で不明な点が生じた場合は、市区町村の窓口・法務局の相談窓口・法テラス・各専門士業の無料相談を積極的に活用してください。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら進めることが、相続手続きをスムーズに完了させる近道です。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談・税務相談に代わるものではありません。具体的な相続手続きについては、司法書士・行政書士・税理士・弁護士など各分野の専門家にご相談ください。法令・制度は改正されることがあります。最新の情報は法務省・国税庁・各市区町村の公式情報をご確認ください。

📋 相続に関する公的機関の情報

※ 個別の法律・税務相談は弁護士・税理士等の専門家にご確認ください

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この記事を書いた人

終活葬儀ナビ編集部。身近な家族の葬儀・相続・遺品整理を実際に経験した編集メンバーが中心となり、終活に直面する方の「わからない」「不安」に寄り添う情報発信を行っています。厚生労働省・国税庁・地方自治体など公的機関の一次情報を徹底的に参照しつつ、実務目線での注意点を織り交ぜた記事制作を心がけています。取り扱い領域は、葬儀(家族葬・一日葬・直葬)、お墓・供養(納骨堂・樹木葬・永代供養)、相続(相続税・遺言書・遺産分割)、遺品整理、ペット供養など終活全般。個別具体的な法律・税務相談については、必ず弁護士・税理士など有資格の専門家にご相談ください。

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