家族が亡くなったときの健康保険・後期高齢者医療の手続き一覧【2026年最新】

家族が亡くなった直後は、葬儀の手配や各種届出など、膨大な手続きが一度に押し寄せます。なかでも健康保険・後期高齢者医療・介護保険に関する手続きは、期限が定められているものが多く、手遅れになると給付金を受け取れなくなる場合があります。

本記事では、家族が亡くなったときに必要となる医療保険関連の手続きを、保険の種類ごとに網羅的に解説します。「何を」「いつまでに」「どこに」提出すればよいかを整理しているので、手続きリストとして活用してください。

目次

家族が亡くなったときに必要な医療保険関連手続き

手続きの全体像と期限

家族が亡くなった後に行う医療保険関連の手続きは、大きく分けると次の4種類に整理できます。

  1. 健康保険(被用者保険)に関する手続き
  2. 国民健康保険に関する手続き
  3. 後期高齢者医療制度に関する手続き
  4. 介護保険に関する手続き

それぞれに届出・申請の期限が設けられており、見逃すと埋葬料・葬祭費・高額療養費などの給付金が受け取れなくなります。特に埋葬料や葬祭費は、死亡日の翌日から2年以内が申請期限の目安となっています(制度により異なる場合があります)。

また、亡くなった方が自分の扶養に入っていた場合や、逆に亡くなった方の扶養に入っていた家族がいた場合は、切り替え・脱退の手続きも別途必要です。死亡後は速やかに、それぞれの窓口へ連絡することをお勧めします。

なお、手続きの窓口は保険の種類によって異なります。会社員や公務員が加入する「健康保険(被用者保険)」は勤務先または健康保険組合、「国民健康保険」と「後期高齢者医療制度」は市区町村の窓口、「介護保険」も原則として市区町村が担当します。

手続きに必要な書類の準備

手続きに先立って、以下の書類を手元に用意しておくとスムーズに進みます。

  • 死亡診断書(コピーも可):死亡届の控えとともに、ほぼすべての手続きで必要になります。
  • 故人の健康保険証(または後期高齢者医療被保険者証):資格喪失の手続きで返却します。
  • 故人の介護保険被保険者証:65歳以上であれば介護保険の返却手続きでも必要です。
  • 申請者(喪主・遺族)の本人確認書類:運転免許証・マイナンバーカードなど。
  • 申請者名義の振込先口座情報:給付金の受取口座として必要です。
  • 葬儀費用の領収書:埋葬費・葬祭費の申請時に添付を求められることがあります。
  • 戸籍謄本または住民票の写し:続柄の確認のために求められる場合があります。

自治体や健康保険組合によって必要書類が異なる場合があるため、事前に窓口へ問い合わせるとよいでしょう。マイナンバーカードの提示で書類の省略ができる自治体も増えています。

手続きは一人で抱え込まず、可能であれば家族で役割を分担して進めることをお勧めします。喪主が葬儀対応に集中している間に、別の家族が書類収集を担当するといった形で進めると効率的です。

健康保険(被用者保険)の手続き

会社員・公務員・私学教職員などが加入している健康保険(被用者保険)では、加入者本人が亡くなった場合、または被扶養者が亡くなった場合に、それぞれ所定の手続きが必要になります。手続き窓口は、勤務先の人事・総務部門や、協会けんぽ(全国健康保険協会)、各健康保険組合などです。

健康保険証の返却方法・タイミング

被保険者本人が亡くなった場合、資格は死亡日に自動的に喪失します。健康保険証は、原則として死亡後5日以内に勤務先を通じて返却するのが一般的です(健康保険法第48条)。

勤務先の人事担当者に死亡の事実を伝えると、返却の手順を案内してもらえます。保険証は本人分だけでなく、扶養家族分もまとめて返却します。紛失している場合は「健康保険被保険者証滅失届」を提出する必要があります。

亡くなった後に誤って保険証を使用してしまうと、不正使用として保険給付の返還を求められる場合があるため、速やかに返却することが重要です。

埋葬料・埋葬費の申請(協会けんぽ・健保組合)

健康保険の被保険者本人が死亡した場合、その埋葬を行った家族(被扶養者)には埋葬料として5万円が支給されます(健康保険法第100条)。

埋葬を行う家族がいない場合は、実際に埋葬を行った人に対して埋葬費(実費の範囲内、上限5万円)が支給されます。

申請先:協会けんぽ(全国健康保険協会)または加入している健康保険組合

申請期限:死亡日の翌日から2年以内

必要書類(協会けんぽの場合の例):

  • 健康保険埋葬料(費)支給申請書
  • 死亡診断書のコピーまたは死亡届のコピー
  • 被保険者証(返却と同時に手続きするのが一般的)
  • 申請者の振込先口座情報

健康保険組合によっては、付加給付として5万円を超える埋葬料を設けている場合があります。加入している健保組合の規定を確認してみてください。

被扶養者が亡くなった場合には、被保険者本人が「家族埋葬料」(5万円)を請求できます。こちらも同様に死亡後2年以内が申請期限の目安です。

扶養家族だった場合の脱退・切り替え

亡くなった方が、会社員である別の家族の健康保険の扶養に入っていた場合は、扶養削除(被扶養者喪失)の手続きが必要です。

扶養削除の手続きは、被保険者(会社員)本人が勤務先を通じて行います。死亡した被扶養者の保険証と死亡を証明する書類を提出します。

また、被保険者(会社員)本人が亡くなった場合、その扶養に入っていた家族は保険の資格を喪失するため、以下のいずれかへの切り替えが必要になります。

  • 自分が勤務先で健康保険に加入している場合:勤務先の保険へ移行
  • 健康保険の任意継続(死亡日から20日以内に申請)
  • 国民健康保険への加入(死亡日から14日以内に市区町村へ届出)
  • 他の家族の扶養に入る

国民健康保険への加入は原則14日以内ですが、14日を超えても加入自体は可能です。ただし、保険料の滞納が生じる場合があるため、できるだけ早めに手続きすることが望ましいです。

国民健康保険の手続き

自営業者・フリーランス・無職の方などが加入する国民健康保険では、被保険者が亡くなった際に市区町村の窓口で資格喪失の届出を行うほか、葬祭費の申請や過払い保険料の還付手続きが必要になります。

被保険者資格喪失届の提出

国民健康保険の被保険者が亡くなった場合、死亡日から14日以内に住所地の市区町村窓口へ「国民健康保険被保険者資格喪失届」を提出します(国民健康保険法第9条)。

提出先:住所地の市区町村(市役所・区役所・町村役場)の国保担当窓口

必要書類の例:

  • 国民健康保険被保険者資格喪失届
  • 故人の国民健康保険証
  • 死亡を証明する書類(死亡診断書コピーや死亡届の控えなど)
  • 届出者の本人確認書類

死亡届の提出と同じ窓口で手続きできる自治体もあります。ワンストップ窓口が設置されている場合は、一度の来庁で複数の手続きを済ませられる場合があります。

なお、死亡した月の保険料は、死亡月の翌月以降の保険料が発生しません。月の途中での死亡でも死亡月までの保険料が発生します(日割り計算はしない市区町村が一般的です)。

葬祭費の申請(市区町村)

国民健康保険の被保険者が亡くなった場合、葬儀を行った喪主(葬祭執行者)に対して葬祭費が支給されます。金額は市区町村によって異なりますが、一般的に1万円〜7万円程度が多く、5万円前後の自治体が多い傾向にあります。

申請先:住所地の市区町村の国保窓口

申請期限:葬儀を行った日の翌日から2年以内(市区町村により異なる場合あり)

必要書類の例:

  • 葬祭費支給申請書(窓口またはホームページから取得)
  • 故人の国民健康保険証
  • 葬儀の領収書または会葬礼状
  • 申請者(喪主)の本人確認書類
  • 振込先口座情報

葬祭費は申請しなければ受け取れません。資格喪失届の提出と同時に申請することで、窓口への来庁回数を減らすことができます。

過払い保険料の還付

国民健康保険料は前払いや一括納付をしている場合があり、死亡によって資格を喪失した月以降の保険料は過払いとなります。過払い分は申請または自動的に還付される場合があります。

年払いや口座引き落としで納付していた場合、死亡月の翌月以降に相当する保険料が還付対象となります。市区町村によって、届出後に自動で還付される場合と、別途申請が必要な場合があります。

還付先は相続人(配偶者や子など)の口座になります。還付額の確認や手続きについては、資格喪失届提出時に窓口で確認しておくとよいでしょう。

なお、過払い保険料の還付は相続財産に含まれる場合があります。相続の手続きと並行して確認しておくことをお勧めします。

後期高齢者医療制度の手続き

75歳以上(または65歳以上で一定の障害がある)の方が加入する後期高齢者医療制度では、亡くなった際に被保険者証の返却と資格喪失届の提出が必要です。また、死亡前に高額の医療費がかかっていた場合、高額療養費の申請・還付が受けられる可能性があります。

被保険者資格喪失届

後期高齢者医療制度の被保険者が亡くなった場合、死亡日から14日以内に住所地の市区町村窓口、または各都道府県の後期高齢者医療広域連合に「資格喪失届」を提出します。

提出先:住所地の市区町村窓口(市区町村を経由して広域連合へ届出する形が一般的)

必要書類の例:

  • 後期高齢者医療被保険者資格喪失届
  • 後期高齢者医療被保険者証(限度額適用認定証なども返却)
  • 死亡を証明する書類
  • 届出者の本人確認書類

後期高齢者医療制度の葬祭費(「葬祭費」または「埋葬費」)についても、都道府県の後期高齢者医療広域連合または市区町村が支給している場合があります。国民健康保険の葬祭費と同様に申請が必要ですので、資格喪失届提出時に合わせて確認してください。支給額は各都道府県・広域連合によって異なります(多くは3万円〜7万円程度)。

高額療養費の申請・還付

亡くなった方が死亡前に高額の医療費を支払っていた場合(同一月内の自己負担が一定額を超えた場合)、高額療養費の支給を受けられる可能性があります。

高額療養費は被保険者が死亡した後でも、相続人が代わりに申請することができます(未支給の高額療養費の請求)。

申請先:後期高齢者医療広域連合または市区町村窓口

申請期限:療養を受けた月の翌月の初日から2年以内

入院が長期にわたっていた場合や、複数の医療機関を受診していた場合は、高額療養費が複数月分にわたる可能性があります。死亡前の受診履歴を整理し、申請漏れがないよう確認することをお勧めします。

介護保険の手続き

65歳以上の方(第1号被保険者)または40歳以上65歳未満で特定疾病がある方(第2号被保険者)が加入している介護保険では、被保険者が亡くなった際に被保険者証の返却と、高額介護サービス費の申請手続きが必要になります。

介護保険証の返却

介護保険の被保険者が亡くなった場合、死亡日から14日以内を目安に住所地の市区町村窓口へ「介護保険被保険者証」を返却します(介護保険法第12条)。

返却先:住所地の市区町村(介護保険担当窓口)

必要書類の例:

  • 介護保険被保険者証
  • 介護保険負担割合証
  • 死亡を証明する書類
  • 届出者の本人確認書類

資格喪失の届出と保険証の返却は同時に行うのが一般的です。死亡届を市区町村に提出した際に、介護保険担当窓口への誘導をしてもらえる自治体が増えています。

介護保険料についても、死亡月の翌月以降の保険料は発生しません。年金天引き(特別徴収)で保険料を納付していた場合は、後日年金支給機関から精算されることがあります。

高額介護サービス費の申請

亡くなった方が生前に高額の介護サービスを利用していた場合、同一月内の自己負担額が一定の上限(所得に応じて月15,000円〜44,400円程度)を超えた分については、高額介護サービス費として払い戻しを受けられます。

死亡後に遺族が代わりに申請することも可能です。

申請先:住所地の市区町村(介護保険担当窓口)

申請期限:サービスを利用した月の翌月の初日から2年以内

必要書類の例:

  • 高額介護サービス費支給申請書
  • 死亡を証明する書類
  • 申請者(相続人等)の本人確認書類
  • 振込先口座情報

月をまたいで継続的に介護サービスを受けていた場合は、複数月分の申請ができます。直近2年分を遡って確認し、申請漏れがないよう注意してください。

高額療養費の申請方法

高額療養費制度とは、同一月内(1日〜月末)に支払った医療費の自己負担額が、所得に応じた上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。亡くなった後でも、遺族(相続人)が未申請分の高額療養費を請求できます。

死亡前の入院費用に関する申請

長期入院や高額な治療を受けていた場合、高額療養費の対象となっている月が複数あることが少なくありません。亡くなった後に遺族が申請する場合は、「未支給の高額療養費の請求」として手続きします。

自己負担限度額は年齢・所得区分によって異なります。70歳未満の場合は所得区分に応じて月約80,100円〜252,600円+α(多数回該当の場合は軽減)、70歳以上は約18,000円〜252,600円が目安となります(2026年3月時点の制度に基づく概算)。

同一医療機関でも入院・外来は別々に計算されます。また、複数の医療機関の費用を合算して申請できる「世帯合算」や、直近12か月間に高額療養費が3回以上支給された場合の「多数回該当」の適用も確認しましょう。

申請期限と必要書類

申請期限:療養を受けた月の翌月の初日から2年以内

申請先:

  • 健康保険(被用者保険)の場合:協会けんぽまたは各健康保険組合
  • 国民健康保険の場合:住所地の市区町村の国保窓口
  • 後期高齢者医療制度の場合:後期高齢者医療広域連合または市区町村窓口

必要書類の例:

  • 高額療養費支給申請書(各保険者の窓口・ホームページで入手)
  • 故人の保険証
  • 医療機関の領収書(コピー可の場合あり)
  • 死亡を証明する書類
  • 申請者(相続人)の本人確認書類・続柄確認書類
  • 振込先口座情報

すでに高額療養費の申請をしていた場合でも、振込口座の変更(相続人口座への変更)手続きが必要になることがあります。保険者へ確認しておきましょう。

医療費が高額だった月が複数ある場合は、月ごとに申請書を作成する必要があります。入院期間中の領収書が手元にあればまとめて申請できますが、紛失している場合は医療機関に再発行を依頼することができます(再発行に費用がかかる場合があります)。

よくある質問

Q1. 健康保険証を返却する前に死亡後の医療費を請求された場合はどうすればよいですか?

死亡後に保険証を使用して医療費を受診させることは原則できません。ただし、死亡当日または死亡直前に受診していた場合で、窓口での精算が完了していないケースでは、医療機関と相談して自費で精算する必要があります。すでに保険診療として請求が処理されていた場合は、保険者(健康保険組合や市区町村)へ相談してください。誤った請求が発生した場合には返還を求められることがあります。

Q2. 埋葬料と葬祭費は両方受け取れますか?

加入していた保険の種類によって異なります。健康保険(被用者保険)に加入していた場合は「埋葬料」または「家族埋葬料」、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は「葬祭費」が支給対象となります。両方の制度から二重に受け取ることは原則できません。亡くなった方が加入していた保険を確認し、その制度の窓口へ申請してください。

Q3. 亡くなった父の扶養に入っていました。国民健康保険への切り替え期限はいつですか?

被保険者(お父様)が死亡し、健康保険の資格を喪失した日から14日以内に、住所地の市区町村へ国民健康保険の加入届を提出することが定められています(国民健康保険法第9条)。14日を超えても加入自体は可能ですが、無保険期間が生じてしまいます。万一その間に受診が必要になった場合でも、遡って国保加入が認められれば保険給付を受けられる場合があります。なお、勤務先で健康保険に加入できる場合や、他の家族の扶養に入れる場合は、そちらを優先的に検討するとよいでしょう。

Q4. 高額療養費の申請を忘れていました。2年を超えた場合はどうなりますか?

高額療養費の申請期限は、療養を受けた月の翌月の初日から2年とされています(健康保険法第193条等)。この期限を過ぎてしまうと、原則として申請ができなくなります。2年以内の分については今からでも申請できるため、過去の医療費の領収書を見直し、申請漏れがないか確認することをお勧めします。加入している保険者(協会けんぽ・健保組合・市区町村)に問い合わせれば、申請可能な未支給分を案内してもらえる場合があります。

Q5. 相続人が複数いる場合、高額療養費や葬祭費は誰が申請できますか?

高額療養費や葬祭費など、亡くなった方への未支給給付については、相続人が代わりに申請することができます。相続人が複数いる場合、一般的には申請者の代表者(例:配偶者や喪主)が申請し、その口座へ振り込まれる形となります。受け取った給付金は相続財産として扱われる場合があるため、相続人間で分配方法について話し合っておくとよいでしょう。なお、葬祭費や埋葬料については、実際に葬儀を執り行った方(喪主)が申請者となる場合が多く、必ずしも相続人全員が申請できるわけではありません。各保険者へ確認してください。

まとめ

家族が亡くなったときに必要な医療保険関連の手続きは、保険の種類によって窓口・期限・給付の内容が異なります。手続きを漏れなく行うために、以下の点を改めて確認しておきましょう。

保険の種類 主な手続き 期限の目安 窓口
健康保険(被用者保険) 保険証返却・埋葬料申請・扶養削除 返却5日以内・申請2年以内 勤務先・協会けんぽ・健保組合
国民健康保険 資格喪失届・葬祭費申請・保険料還付 届出14日以内・申請2年以内 市区町村窓口
後期高齢者医療制度 資格喪失届・葬祭費申請・高額療養費申請 届出14日以内・申請2年以内 市区町村・広域連合
介護保険 被保険者証返却・高額介護サービス費申請 返却14日以内・申請2年以内 市区町村窓口

埋葬料・葬祭費・高額療養費・高額介護サービス費は、申請しなければ自動的には受け取れません。特に高額療養費は申請期限が2年のため、「まだ間に合う」と思いながら忘れてしまうケースが少なくありません。手続きリストを作り、一つずつ確認しながら進めることが大切です。

各手続きの詳細や必要書類は、自治体・保険者によって異なる場合があります。不明な点は各窓口へお問い合わせのうえ、正確な情報をもとに手続きを進めてください。本記事の内容は2026年3月時点の情報をもとに作成していますが、法改正・制度変更により内容が変わる場合があります。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的アドバイスを行うものではありません。具体的な手続きについては、各保険者や市区町村の窓口、または専門家(社会保険労務士・行政書士等)にご相談ください。

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