相続放棄の手続き方法|申述書の書き方・3ヶ月の期限・費用・注意点【2026年最新】

親や配偶者が亡くなった直後、「相続放棄をしたほうがいいのでは」と考える方は少なくありません。借金があるかもしれない、手続きが面倒そう、将来のトラブルを避けたい——そんな不安と疑問を抱えながら検索されているのではないでしょうか。

相続放棄は、亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければならない、期限のある手続きです。知らないまま時間が過ぎると、借金も含めたすべての財産を相続したものとみなされるリスクがあります。

この記事では、相続放棄の基本的な意味から申述書の書き方、必要書類、費用、期限を延長する方法、よくある注意点まで、2026年の最新情報をもとに詳しく解説します。

この記事を読むと分かること:相続放棄とは何か・誰でも申述できるか・3ヶ月の期限と延長手続き・申述書の正確な書き方・必要書類の集め方・費用の目安・よくある失敗パターン
目次

相続放棄とは?わかりやすく解説

相続放棄の定義と法的根拠

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産上の権利義務の一切を受け継がないことを、家庭裁判所に申述する手続きです。民法第938条に「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」と明記されています。

口頭での「相続放棄します」という意思表示には法的効力がありません。必ず家庭裁判所への申述が必要です。申述が受理されると、その相続人は「初めから相続人でなかった」とみなされます(民法第939条)。

たとえばお父様が3,000万円の住宅ローン残債を残して亡くなった場合、相続放棄をすれば、その債務を引き継ぐ義務がなくなります。一方で、プラスの財産(預金・不動産など)も受け取れなくなります。

相続放棄は「財産の全部」が対象です。「借金だけ放棄してプラスの財産だけもらう」ことはできません。プラスとマイナスの財産を精算したうえで受け取りたい場合は、後述する「限定承認」という方法を検討することになります。

相続放棄・単純承認・限定承認の違い

相続が発生した際、相続人には3つの選択肢があります。違いを正確に理解しておくことが重要です。

選択肢 内容 手続き先 期限 向いているケース
単純承認 プラスもマイナスもすべて引き継ぐ 不要(何もしなければ自動) 3ヶ月以内に何もしない プラス財産が多い場合
相続放棄 一切の権利義務を放棄する 家庭裁判所 3ヶ月以内 借金が多い場合・関わりたくない場合
限定承認 プラスの範囲でのみマイナスを引き継ぐ 家庭裁判所(相続人全員) 3ヶ月以内 財産状況が不明な場合

限定承認は「相続人全員が共同で」申請しなければならないため、実務上はハードルが高いとされています。相続人のうち一人でも反対すると利用できません。

相続放棄は一人でも申述できますが、限定承認は相続人全員の同意が必要です。これが実務上の大きな違いです。

なお、3ヶ月以内に何もしない場合は「単純承認」したとみなされます(民法第921条第2号)。借金の存在が判明している場合は、早急に対応が必要です。

相続放棄が有効なケース・無効になるケース

相続放棄が有効とならない場合があります。以下のような行為をしてしまうと、相続を承認したとみなされ(法定単純承認)、その後に相続放棄の申述をしても受理されないことがあります。

相続財産を処分・消費してしまうと、後から相続放棄できなくなるリスクがあります。

具体的には次のような行為が「法定単純承認」に当たるとされるケースがあります。

  • 被相続人の預金を引き出して使った
  • 相続財産を売却した
  • 被相続人の借金を相続財産から返済した
  • 相続財産を隠匿した、または故意に財産目録に記載しなかった

一方、葬儀費用の支払いや相続財産の現状維持のために行う最低限の管理行為(家の電気・水道の維持など)は、原則として単純承認とはみなされないとされています。ただし解釈が難しいケースもあるため、不安な場合は専門家への相談が推奨されます。

相続放棄を申述できる人・相続順位

法定相続人の順位と範囲

相続放棄は法定相続人であれば誰でも申述できます。法定相続人とは民法で定められた相続権を持つ人のことで、配偶者は常に相続人となり、血族相続人には順位があります。

順位 相続人 相続割合(配偶者がいる場合) 備考
配偶者(常に) 夫または妻 第1順位と共同:1/2
第2順位と共同:2/3
第3順位と共同:3/4
単独:全部
内縁関係は不可
第1順位 子(直系卑属) 1/2(配偶者と折半) 養子・非嫡出子も含む
第2順位 父母・祖父母(直系尊属) 1/3(配偶者と折半) 第1順位がいない場合
第3順位 兄弟姉妹 1/4(配偶者と折半) 第1・第2順位がいない場合

相続放棄の申述は、各順位の相続人が個別に行います。一人が放棄しても、他の相続人の権利には影響しません(ただし「相続権が移る」という意味では影響があります)。

相続放棄による相続権の連鎖(第2順位・第3順位への影響)

相続放棄で特に注意が必要なのが、「相続権の連鎖」です。

第1順位の相続人(子)全員が相続放棄をすると、相続権が第2順位(父母・祖父母)に移ります。さらに第2順位の全員が放棄すると、第3順位(兄弟姉妹)へと移っていきます。

子が相続放棄しても、被相続人の父母(祖父母)や兄弟姉妹に借金の相続権が移る可能性があります。放棄前に必ず親族へ連絡することが大切です。

具体的な例を挙げます。夫が亡くなり、妻と子が相続放棄した場合、相続権は夫の父母へ移ります。夫の父母もすでに亡くなっている場合は夫の祖父母へ、それも亡くなっている場合は夫の兄弟姉妹へ移ります。

そのため、子が相続放棄を検討する際は、被相続人の父母や兄弟姉妹に対して「相続放棄を検討していること」を事前に伝え、彼らも放棄を検討できるよう配慮することが実務上のマナーとされています。突然、見知らぬ債権者から連絡が来て初めて相続の事実を知る——というのは、できれば避けたい状況です。

なお、兄弟姉妹が相続放棄した場合、その子(甥・姪)には代襲相続が発生しない点も覚えておいてください(民法第887条・第889条)。代襲相続は第1順位(子)のみに適用され、兄弟姉妹の場合は甥・姪止まりです。

未成年者・認知症の方の相続放棄

相続人が未成年者の場合、法定代理人(通常は親権者)が代わって申述します。ただし、親権者自身も同じ相続において相続人である場合は「利益相反」となるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。

認知症など判断能力が著しく低下している方が相続人の場合は、成年後見人が代わって手続きを行います。成年後見人がまだ選任されていない場合は、まず成年後見申立てを行い、選任後に相続放棄の申述を行うことになります。

このようなケースでは手続きが複雑になるため、早期に家庭裁判所や弁護士・司法書士に相談することが推奨されます。

3ヶ月の熟慮期間と期限の延長方法

3ヶ月の期限はいつから始まるか

相続放棄の申述期限は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」です(民法第915条第1項)。「相続が開始したこと」と「自分が相続人であること」の両方を知った日が起算点となります。

被相続人が亡くなった日ではなく、相続人が「自分が相続人になった」と知った日が起算点です。この違いは重要です。

例えば、第1順位の子が全員相続放棄をした場合、第2順位の父母が「自分に相続権が移った」と知った日から新たに3ヶ月の熟慮期間が始まります。子の放棄から父母の知った日まで時間差がある場合は、それぞれの知った日から3ヶ月が起算されます。

「3ヶ月が過ぎてしまった」と思っていても、実は起算点がまだ先だったというケースがあります。期限を諦める前に専門家に確認することをお勧めします。

熟慮期間の延長申請(期限を延ばす方法)

財産状況の調査に時間がかかる場合、家庭裁判所に対して「熟慮期間の伸長(延長)」を申請することができます(民法第915条第1項ただし書き)。

申請の流れは以下のとおりです。

  1. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる
  2. 申立書に「財産調査が完了していない理由」等を記載する
  3. 収入印紙800円・郵便切手を添付する
  4. 裁判所の判断により、期間が延長される

延長できる期間は裁判所の裁量によりますが、一般的に3ヶ月程度の延長が認められるケースが多いとされています。ただし、延長申請は必ず3ヶ月の熟慮期間内に行う必要があります。期限が過ぎてから申請することはできません。

延長申請に必要な主な書類は次のとおりです。

  • 熟慮期間伸長の申立書
  • 被相続人の死亡が分かる戸籍謄本
  • 申立人の戸籍謄本
  • 相続関係を示す戸籍謄本(必要に応じて)

3ヶ月を過ぎてしまった場合の対処法

3ヶ月が過ぎてしまった後でも、一定の条件下では相続放棄が認められるケースがあります。最高裁判所の判例(昭和59年4月27日)では、「相続財産が全くないと信じ、かつ、そのように信じることに相当な理由があった場合」は、相続人が相続財産の存在を知った時から3ヶ月以内に申述すればよい、という考え方が示されています。

ただし、これはあくまで例外的な扱いです。期限を過ぎた場合の相続放棄申述は、家庭裁判所が受理するかどうかの判断を慎重に行います。

3ヶ月を過ぎていても、相続財産の存在を全く知らなかった事情があれば、申述が認められる可能性があります。諦める前に弁護士・司法書士に相談することをお勧めします。

なお、期限を過ぎた状態でも申述書を提出することはできます。家庭裁判所が「期限内の申述とみなせるか」を審査します。申述が却下された場合は、即時抗告(不服申立て)を行うことも可能です。

相続放棄に必要な書類一覧

申述人の続柄別・必要書類の違い

相続放棄に必要な書類は、申述人(放棄をする人)が被相続人とどのような関係かによって異なります。

申述人 必要書類 備考
配偶者 ・相続放棄申述書
・被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
・申述人の戸籍謄本
・収入印紙800円・郵便切手
最もシンプル
子(第1順位) ・相続放棄申述書
・被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
・申述人の戸籍謄本
・収入印紙800円・郵便切手
配偶者と同様
父母・祖父母(第2順位) ・相続放棄申述書
・被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
・被相続人の子全員が放棄した旨が分かる書類(審判書謄本等)
・申述人の戸籍謄本
・収入印紙800円・郵便切手
第1順位の放棄が確認できる書類が必要
兄弟姉妹(第3順位) ・相続放棄申述書
・被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)
・第1・第2順位が放棄した旨が分かる書類
・申述人の戸籍謄本
・収入印紙800円・郵便切手
書類が最も多くなる傾向

書類は全て原本が必要です(コピー不可の場合があります)。裁判所によって取り扱いが異なる場合もあるため、申述先の家庭裁判所に事前に確認することをお勧めします。

戸籍書類の取得方法と注意点

必要な戸籍謄本類は、本籍地の市区町村役場で取得します。直接窓口に行くか、郵送請求で取り寄せます。

戸籍謄本(現在戸籍)は1通あたり450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本は1通あたり750円が一般的な手数料です(2026年現在)。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要な場合(第3順位の申述など)、被相続人が本籍を何度も移転していると、複数の市区町村から取り寄せる必要があります。時間がかかることがありますので、早めの手配が推奨されます。

また、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付でも一部の戸籍書類を取得できます(対応している市区町村に限る)。ただし除籍謄本・改製原戸籍謄本はコンビニ交付できないケースがほとんどです。

裁判所への申述に必要な書類チェックリスト

申述書を提出する前に、以下のリストで漏れがないか確認してください。

  • ✓ 相続放棄申述書(家庭裁判所の書式、または自作)
  • ✓ 被相続人の死亡が記録された戸籍謄本
  • ✓ 申述人の戸籍謄本
  • ✓ (第2・第3順位の場合)先順位者全員の相続放棄受理証明書または審判書謄本
  • ✓ 収入印紙800円分
  • ✓ 郵便切手(裁判所に確認要。数百円程度)
  • ✓ (代理人を立てる場合)委任状・代理人の資格証明書

申述書の書式は、各家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。裁判所のウェブサイト(https://www.courts.go.jp/)でも入手可能です。

相続放棄申述書の書き方

申述書の基本構成と記入のポイント

相続放棄申述書は、家庭裁判所所定の書式を使います。A4判1枚の書類で、以下の項目を記入します。

主な記載事項は次のとおりです。

  • 申述人(放棄する人)の住所・氏名・生年月日・被相続人との関係
  • 被相続人の氏名・最後の住所・死亡日
  • 相続放棄の理由(選択式+自由記載)
  • 相続財産の概略

記入は黒のボールペンまたは万年筆が基本です。修正が必要な場合は二重線を引いて訂正印を押します。修正液の使用は避けてください。

「放棄の理由」欄の書き方

申述書には放棄の理由を記入する欄があります。選択肢として「被相続人から生前に贈与を受けている」「生活が安定している」「被相続人と生前折合いが悪かった」「債務超過のため」「その他」などが用意されているケースが多いです。

理由欄は簡潔に記載するだけで問題ありません。「債務超過のため」「関与したくないため」など、実情に合った項目を選べばよく、詳細な説明は不要です。

「その他」を選んだ場合は、簡単な理由(「被相続人の財産関係に関与しないため」など)を記入します。裁判所が放棄の動機を審査するわけではないため、プライベートな事情を詳細に書く必要はありません。

相続財産の概略欄の書き方

申述書には「相続財産の概略」を記入する欄があります。ここでは、把握している範囲での財産(不動産・預金・借金など)を記入します。

財産の全容が不明な場合は「不明」や「調査中」と記入しても問題ないとされています。財産目録を別途添付する必要はなく、概略の記載で足ります。ただし「財産がないと思っていたが実はあった」という場合でも、申述の受理には影響しません(放棄の申述そのものは財産の有無に関わらず受理されます)。

なお、相続財産の概略欄に記入した内容が虚偽であっても、それだけで申述が無効になるわけではありませんが、誠実に記載することが推奨されます。

申述後の手続き(照会書・回答書)

申述書を提出後、家庭裁判所から「照会書」が郵送されてくることがあります。これは、申述が本人の意思によるものかどうかを確認するための書類です。

照会書には「相続放棄の意思確認」や「財産について知っていたか」などの質問が記載されています。必ず期限内に回答書を返送してください。回答がないと申述が受理されないことがあります。

回答書の返送後、数日〜数週間で「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これが放棄完了の証明となります。

相続放棄の費用と申述の流れ

自分で手続きする場合の費用

相続放棄を自分で行う場合、主にかかる費用は以下のとおりです。

費用項目 金額の目安 備考
申述書の収入印紙 800円(1人あたり) 裁判所に納付
郵便切手 数百円程度 裁判所の指示による
戸籍謄本等(現在戸籍) 1通450円×枚数 市区町村役場
除籍謄本・改製原戸籍謄本 1通750円×枚数 市区町村役場
郵送費用(郵送申請の場合) 数百円 書類の郵送代

申述人が配偶者または第1順位(子)の場合、戸籍謄本は比較的少なく済むため、総額2,000〜5,000円程度に収まるケースが多いとされています。第3順位(兄弟姉妹)の場合は、被相続人の出生〜死亡の戸籍が必要となり、戸籍書類の取得費用が高くなることがあります。

司法書士・弁護士に依頼した場合の費用相場

書類の収集や申述書作成を専門家に依頼する場合の費用目安は以下のとおりです。

依頼先 費用相場(1人あたり) 対応範囲
司法書士 2〜5万円程度 申述書作成補助・書類収集代行
弁護士 5〜10万円程度 申述書作成・書類収集・交渉代理

相続人が複数いる場合、人数分の費用がかかります。事務所によっては「家族割引」等を設けているところもあります。

期限が迫っている・財産が複雑・債権者からの連絡がある場合は、専門家への早期依頼が推奨されます。費用より時間の損失のほうが大きくなるケースがあります。

司法書士は「書類作成の補助」が業務範囲です。債権者との交渉や裁判所での代理人業務は弁護士のみが対応できます。状況に応じて使い分けることが大切です。

申述から完了までの流れと期間

相続放棄の手続きは、一般的に以下のステップで進みます。

  1. 相続発生の確認・相続人の確定(被相続人の死亡後すみやかに)
  2. 財産・負債の調査(信用情報機関への照会、金融機関・法務局での調査)
  3. 必要書類の収集(戸籍謄本など)
  4. 申述書の作成・提出(被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ)
  5. 照会書への回答(裁判所から郵送される)
  6. 相続放棄申述受理通知書の受領
  7. (必要に応じて)相続放棄申述受理証明書の取得

申述から受理通知書が届くまで、おおむね1〜4週間程度かかることが多いとされています。ただし裁判所の込み具合や書類の不備によっては時間がかかることもあります。

受理通知書は自動的に届きますが、「相続放棄申述受理証明書」は別途申請が必要です。債権者から証明書の提出を求められた場合は、裁判所に申請してください(手数料150円/通)。

相続放棄の注意点・よくある失敗パターン

財産を処分・消費してしまった場合のリスク

相続放棄を検討している段階で、うっかり相続財産に手をつけてしまうことがあります。この場合、法定単純承認(民法第921条)が成立し、相続放棄ができなくなる可能性があります。

特に注意が必要なのは、「日常的な行為」と見えるものです。

  • 被相続人名義の口座からATMで現金を引き出した
  • 被相続人の家電・家財を自宅に持ち帰った
  • 被相続人の名義で保険金を受け取り消費した

亡くなった直後に「口座を整理しよう」「形見分けをしよう」と行動してしまうのが最もよくある失敗パターンです。相続放棄を少しでも検討しているなら、財産には手をつけないことを徹底してください。

なお、葬儀費用については、相続財産から支払ってもただちに単純承認にはならないとされています(東京高裁昭和57年3月8日判決等)。ただし明確な基準がないため、多額の費用を相続財産から支払う場合は専門家への確認が推奨されます。

プラス財産がある場合の判断基準

相続放棄を検討する際、「借金があるが、プラスの財産(不動産・預金など)もある」ケースは判断が難しいです。

基本的な考え方は「プラスの財産とマイナスの財産(債務)を比較して、マイナスが上回る見込みがある場合に放棄を検討する」です。ただし、財産状況が不明確な場合は「限定承認」も選択肢の一つです。

プラスの財産があっても放棄を選ぶ理由として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 不動産の管理・維持コストが高く、売却も難しい
  • 被相続人との関係が複雑で、相続手続きに関わりたくない
  • 他の相続人と争いになることが予想される
  • 相続後の税金(相続税・固定資産税等)の負担が大きい

一方で、プラスの財産が明らかに大きい場合に相続放棄をすると、後から「やはり財産を受け取れば良かった」と後悔するケースも見られます。放棄は一度申述が受理されると原則として取り消せないため、慎重な判断が求められます。

相続放棄後の財産管理義務

相続放棄をした後も、「自己の固有財産と同一の注意をもって相続財産を管理する義務を免れない」とされていました(旧民法第940条)。2023年(令和5年)の民法改正により、この規定が見直されています。

改正後(2023年4月1日施行)は、相続放棄をした者は「相続人が相続財産の管理を始めることができるまでの間」のみ保存義務を負うこととされました(改正後民法第940条第1項)。他の相続人が管理できる状態になれば、放棄した者の管理義務は終了します。

2023年4月以降は、相続放棄後の財産管理義務が緩和されました。ただし「誰も管理できる人がいない」状況では、依然として注意が必要です。

放棄した財産を「放置すると危険な状態」にした場合、隣人等から損害賠償を求められるリスクがないわけではありません。不動産が含まれている場合は、特に注意が必要です。

よくある質問(FAQ)

相続放棄したら借金の請求は来なくなりますか?

申述が受理された後、相続放棄申述受理証明書を債権者に提示することで、請求を止めてもらえるケースが多いとされています。ただし、証明書を提示しても支払いを求めてくる業者がいる場合は、弁護士に相談することをお勧めします。受理証明書の発行は裁判所に申請します(手数料150円/通)。

亡くなってから3ヶ月以上経過してしまいましたが、放棄できますか?

3ヶ月を過ぎていても、「相続財産が全くないと信じており、そのように信じることに相当な理由があった」場合は、財産の存在を知った日から3ヶ月以内に申述することで認められる可能性があります(最高裁昭和59年4月27日判決)。ただし、認められるかどうかは裁判所の判断によります。期限超過の場合は、早急に弁護士または司法書士に相談することを推奨します。

相続放棄後に被相続人の預金通帳が見つかりました。どうすればよいですか?

相続放棄が受理された後に財産が発見されても、放棄の効力は変わりません。その財産は放棄した人には権利がないため、手をつけないことが大切です。他に相続人がいる場合はその人に連絡し、相続人が誰もいない場合は家庭裁判所に相続財産清算人の選任申立てを行う必要が生じます。

被相続人が保証人になっていた場合も放棄で対応できますか?

被相続人が第三者の借金の保証人(連帯保証人)になっていた場合、その保証債務も相続の対象となります。相続放棄をすることで、この保証債務の引き継ぎも回避できます。被相続人の債務の全体像を調査する際には、信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への照会も有効な手段の一つです。

相続放棄の申述は郵送で可能ですか?

可能です。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所への郵送申述が認められています。裁判所のウェブサイトから申述書の書式を入手し、必要書類を同封して送付します。なお、照会書が届いた際の返送も郵送で対応できます。直接裁判所に行く必要は基本的にありませんが、不安な場合は事前に電話で確認することをお勧めします。

相続放棄すると生命保険金も受け取れなくなりますか?

生命保険金は、受取人として指定されている人が受け取る権利を持ちます。受取人が指定されている場合、生命保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産とされるため、相続放棄をしても受け取れます。ただし「相続人」という指定がある場合は解釈が複雑になりますので、保険会社に確認することを推奨します。

まとめ:相続放棄を後悔しないために

相続放棄は、借金やトラブルを回避するための有効な手段ですが、一度受理されると原則として取り消せない重大な決断です。この記事のポイントを以下に整理します。

  • 期限は3ヶ月以内(「自分が相続人になったと知った日」から起算)
  • 手続き先は家庭裁判所(被相続人の最後の住所地管轄)
  • 財産に手をつけると放棄できなくなるリスクがある
  • 子が放棄すると、父母・兄弟姉妹に相続権が移るため、親族への連絡が重要
  • 費用は自分で手続きする場合2,000〜5,000円程度(申述人が配偶者・子の場合)
  • 申述書は裁判所のホームページからダウンロード可能
  • 期限が迫っている場合は熟慮期間の伸長申請が可能

財産状況の全容が不明な場合は、信用情報機関への照会や弁護士・司法書士への相談を検討してください。「借金があるのかどうか分からない」という状況でも、まず相続放棄の申述期限(3ヶ月)を意識しながら動くことが大切です。

相続放棄に関する手続きや判断に迷う場合は、家庭裁判所の窓口(無料相談)や、法テラス(日本司法支援センター:電話0570-078374)のご利用も選択肢の一つです。

相続放棄は「3ヶ月」「家庭裁判所への申述」「財産に手をつけない」の3点を守ることが最重要です。少しでも迷ったら、早めに専門家に相談することをお勧めします。

【免責事項】本記事は2026年3月時点の法令・情報に基づく一般的な情報提供を目的として作成されています。個別の法律相談・税務相談には当たりません。具体的な手続きや判断については、弁護士・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。

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