葬儀費用と相続税控除|控除できる費用・できない費用・領収書の保管方法を解説

親族が亡くなった後、相続税の申告が必要かどうか確認しながら、同時に葬儀費用の精算や書類の準備を進めなければならない状況は、精神的にも事務的にも非常に負担が大きいものです。

「葬儀でかかった費用は相続税の計算で引けるのか」「どの費用が対象で、どの費用は対象外なのか」「お布施の領収書がないときはどうすればいいのか」といった疑問を持つご遺族は少なくありません。

本記事では、葬儀費用と相続税控除の仕組みを国税庁の情報に基づいて整理し、控除できる費用・できない費用の一覧、計算方法の具体例、領収書の保管方法、申告書への記載方法まで網羅的に解説します。

この記事を読むことで、以下の点について理解を深めていただけます。

  • 葬儀費用の「債務控除」とは何か、どういう仕組みで節税につながるのか
  • 控除できる費用・できない費用を一覧表で確認できる
  • お布施など領収書がない費用の取り扱い方
  • 相続税申告書への具体的な記載方法
  • 税理士への相談が必要なタイミングと選び方

相続税の申告期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。準備が必要な方は、この記事を参考に手続きを進めてみてください。

目次

葬儀費用と相続税控除の基本的な仕組み

相続税を計算する際に、葬儀にかかった費用を遺産総額から差し引くことができます。これを「葬式費用の債務控除」といい、相続税法第13条および第14条に規定された正当な制度です。

控除の仕組みを一言で説明すると、「課税対象となる遺産から葬儀費用を引くことで、相続税の計算基盤となる金額を小さくする」というものです。遺産が多ければ多いほど、葬儀費用を控除することによる節税効果は大きくなります。

債務控除の計算構造

相続税の計算における「課税遺産総額」は、以下の式で求めます。

課税遺産総額 = 遺産総額 - 非課税財産 - 債務 - 葬式費用 - 基礎控除額

葬式費用は「債務」と同列に扱われ、遺産総額から直接差し引くことができます。相続税の税率は最大55%(課税額6億円超の場合)に達するため、たとえば葬儀費用が300万円であれば、最大で165万円程度の相続税の節税につながる可能性があります。

ただし、葬式費用の控除額には上限が設けられていないため、実際に支払った金額全額(控除対象に該当するもの)を控除することができます。

葬式費用の債務控除は相続税法上の正当な権利であり、正しく申告することで相続税の負担を軽減できる制度です。

債務控除を受けられる人・受けられない人

債務控除を受けられるのは、相続または遺贈によって財産を取得した相続人および包括受遺者です。具体的には、法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)が対象です。

一方で、相続放棄をした人は債務控除を受けることができません。相続放棄をした場合、相続人としての地位を失うため、たとえ葬儀費用を実際に負担していても控除の対象外となります。

相続放棄を検討している場合は、葬儀費用の負担者をあらかじめ話し合っておくことが重要です。相続放棄後に葬儀費用を負担しても控除は受けられません。

また、特定受遺者(遺贈によって特定の財産を受け取る人)については、葬式費用の控除が認められないケースがある点にも注意が必要です。

国税庁が定める葬式費用の範囲

国税庁のホームページ(No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」)では、控除対象となる葬式費用の具体的な範囲が示されています。判断に迷う場合は、まず国税庁の公式情報を確認することをおすすめします。

基本的な考え方として、「葬式や葬送に直接かかった費用」は控除対象となり、「葬儀後の法要や墓地・仏壇の購入費用」は控除対象外とされています。

控除できる葬儀費用の一覧

国税庁の情報に基づき、相続税の計算上控除できる葬儀費用を以下にまとめます。葬儀の種類や地域によって費用の内訳は異なりますが、基本的に「葬式・葬送に直接必要な費用」が対象となります。

費用の種類 控除の可否 備考
葬儀社への葬儀一式費用 ○ 控除できる 祭壇・棺・霊柩車・人件費など含む
火葬費用・埋葬費用 ○ 控除できる 火葬場への支払い全般
遺体の搬送費用 ○ 控除できる 病院から葬儀場・火葬場への搬送代
お布施(読経料) ○ 控除できる 葬儀・火葬・納骨時の読経に伴うもの
戒名料(法名料) ○ 控除できる 葬儀に伴うものに限る
通夜・告別式の飲食費 ○ 控除できる 通夜振る舞い・精進落としなど
葬儀場の使用料 ○ 控除できる 式場使用料・控室使用料など
マイクロバス・送迎車両費用 ○ 控除できる 葬儀参列者の送迎に必要なもの
死亡診断書の取得費用 ○ 控除できる 葬儀手続きに必要な書類取得費
骨壺・骨箱の購入費用 ○ 控除できる 火葬に際して必要なもの
遺体の保存費用(ドライアイスなど) ○ 控除できる 葬儀まで必要な保存処置
生花・供花の費用(葬儀社手配分) ○ 控除できる 葬儀一式として含まれる場合

この中で特に注意が必要なのが「お布施」と「戒名料」です。これらは葬儀に直接関係する宗教的儀式の費用として控除対象となりますが、初七日法要以降のお布施は対象外となるため、葬儀当日のものと法要のものを区別して記録しておく必要があります。

また、通夜や告別式での飲食費(通夜振る舞い・精進落とし)も控除対象ですが、過度に高額な飲食費については税務署から確認が入る場合があります。一般的な規模・金額の範囲であれば問題ありません。

葬儀社への費用の内訳確認が重要な理由

葬儀社から受け取る請求書・領収書は、通常「葬儀一式」としてまとめて記載されることが多いですが、内訳が明示されている場合は各費用が控除対象かどうかを確認する必要があります。

たとえば、葬儀社が「葬儀一式費用」として香典返しの手配費や仏壇の設置費用を含めている場合、それらは控除対象外です。葬儀社に依頼して内訳を分けた領収書を発行してもらうことが、申告をスムーズに進めるうえで重要です。

葬儀社に「相続税申告のために費用の内訳が分かる領収書を発行してほしい」と伝えると、対応してもらえるケースが多いです。

控除できない葬儀費用の一覧

葬儀に関連して支払った費用であっても、相続税の計算上控除できないものがあります。国税庁の情報に基づき、代表的な控除対象外の費用をまとめます。

費用の種類 控除の可否 理由・注意点
香典返しの費用 × 控除できない 葬儀そのものの費用ではなく謝礼のため
墓石・墓碑の購入費用 × 控除できない 葬式費用に該当しない(非課税財産だが控除対象外)
墓地の購入費用・永代使用料 × 控除できない 同上
仏壇・仏具の購入費用 × 控除できない 葬式費用に該当しない
初七日法要の費用 × 控除できない 葬式後の法要は対象外(式中に繰り込んだ場合を除く)
四十九日法要・一周忌の費用 × 控除できない 葬式後の法要はすべて対象外
納骨後の法要に伴うお布施 × 控除できない 葬儀に直接関係しない宗教的費用
遺影写真の作成費用 × 控除できない 葬式費用としては認められないケースが多い
死亡広告(新聞等への掲載) × 控除できない 葬式費用の範囲外とされるケースが多い
会葬礼状・礼状の印刷費 △ グレーゾーン 葬儀一式として含まれる場合は認められることも
遺産整理・遺品整理の費用 × 控除できない 葬式費用には該当しない
相続手続きの費用(戸籍取得など) × 控除できない 葬式費用ではなく相続手続き費用

この中で最も誤解が多いのが「墓地・墓石の費用」です。墓地や墓石は相続税法上「非課税財産」として扱われる(遺産に含まれない)ため、相続税がかかりません。しかし、「葬式費用としての控除」とは別の話であり、控除の対象にはならない点に注意が必要です。

「墓地は非課税だから控除もできる」という誤解が多いですが、非課税財産と債務控除は別の概念です。混同しないよう注意してください。

また、初七日法要については、近年は葬儀当日に「繰り上げ初七日法要」として葬儀社の費用に含まれるケースが増えています。この場合、葬儀一式の中に含まれているとして控除対象になる可能性がありますが、明確に区分されている場合は対象外となります。税理士への確認が望ましい判断です。

香典返しが控除できない理由

香典返しは、参列者からいただいた香典に対するお礼として贈るものです。葬儀の際に一般的に行われる慣習ですが、相続税の計算上は「葬式費用」には含まれません。

国税庁の見解では、香典返しは「葬式を行うために直接必要な費用」ではなく、受け取った香典に対する返礼行為であるため、控除対象外と定められています。

なお、香典そのものは喪主個人への贈り物として扱われるため、相続税の課税対象にもなりません。香典収入については申告は不要ですが、受け取った金額が社会通念上不相当に高額な場合は別途確認が必要になることがあります。

葬儀費用控除の計算方法と具体例

実際の相続税計算において、葬式費用がどのように影響するかを具体的な数値で見てみましょう。

基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額は次の式で求めます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

具体的な計算例(相続人が配偶者+子2人の場合)

法定相続人3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。

【ケース1】遺産総額5,500万円・葬儀費用250万円

課税遺産総額 = 5,500万円 - 250万円(葬儀費用) - 4,800万円(基礎控除) = 450万円

葬儀費用を控除することで、課税遺産総額が700万円から450万円に減少します。相続税の税率10%が適用される場合、葬儀費用250万円の控除によって約25万円の相続税が軽減される計算になります。

【ケース2】遺産総額8,000万円・葬儀費用300万円・その他債務100万円

課税遺産総額 = 8,000万円 - 300万円(葬儀費用) - 100万円(債務) - 4,800万円(基礎控除) = 2,800万円

このケースでは、葬儀費用と債務の合計400万円が課税遺産総額から差し引かれます。課税遺産総額2,800万円に対して、法定相続分(配偶者1/2・子各1/4)に応じた相続税が計算されます。

【ケース3】遺産総額5,000万円・葬儀費用200万円(申告しない場合との比較)

申告なし:課税遺産総額 = 5,000万円 - 4,800万円 = 200万円

葬儀費用控除あり:課税遺産総額 = 5,000万円 - 200万円 - 4,800万円 = 0円(申告不要)

このボーダーラインケースでは、葬儀費用の控除によって相続税の申告が不要になる可能性があります。葬儀費用の記録と申告が特に重要な状況です。

遺産総額が基礎控除額に近い場合、葬儀費用の控除が相続税の有無を分けるケースがあります。費用の記録は忘れずに行いましょう。

相続税の速算表(国税庁情報に基づく)

課税遺産総額を法定相続分で分割した後、各相続人の取得額に以下の税率を適用します。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」

計算した相続税の総額は、各相続人が実際に取得した財産の割合に応じて按分されます。この計算は複雑になることが多いため、遺産総額が大きい場合や相続人が複数いる場合は税理士への相談をご検討ください。

領収書がない場合の対処法

葬儀費用の中には、お布施・戒名料・心付けなど、領収書が発行されないものが含まれることが珍しくありません。これらについては、どのように記録・申告すればよいか迷われる方が多くいます。

お布施・戒名料の取り扱い

お布施や戒名料については、税務上は「支払った事実が証明できれば領収書がなくても控除対象となる」とされています。ただし、「証明」の方法として有効なのは次のような記録です。

  • 支払日(葬儀日・火葬日・納骨日など)
  • 支払先(寺院名・住職名・お寺の所在地)
  • 支払金額(現金手渡しの場合はその旨も記録)
  • 支払いの理由(葬儀の読経・戒名授与など)

これらをメモ書き(お布施メモ)として作成し、封筒に入れて保管しておくことが推奨されます。寺院によっては「御布施受領証」を発行してくれる場合もあるため、依頼してみる価値があります。

お布施のメモは「A4用紙1枚でも問題なし」です。支払った事実を記録しておくことが最優先です。葬儀後の慌ただしい時期に忘れないよう、当日その場で記録することをおすすめします。

心付け・チップの取り扱い

葬儀の際に、葬儀スタッフや火葬場の担当者などに渡す「心付け」については、控除対象として認められないケースが多いとされています。金額も少額であることが多いため、申告から除外しておくほうが無難です。

ただし、金額が大きく、葬儀に欠かせないサービスへの対価として支払ったことが明確な場合は、税理士に相談のうえ判断することをおすすめします。

銀行振込の場合

葬儀社や火葬場への支払いを銀行振込で行った場合は、振込明細書が証拠書類になります。振込明細書は必ず保管しておきましょう。

クレジットカード払いの場合は利用明細書が証拠になりますが、カード会社の明細書だけでは内訳が分かりにくいことがあります。葬儀社から領収書を必ず受け取るようにしてください。

領収書の保管期間と保管方法

相続税の申告に関連する書類の保管期間については、法的に定められた基準があります。適切に管理しておくことで、税務署からの問い合わせや調査にも対応できます。

法定保管期間の目安

相続税の申告書に関連する書類の保管期間については、相続税法の「除斥期間( じょせききかん)」を参考にすることが一般的です。

区分 期間の目安 根拠
通常の場合 申告期限から5年 税務調査の時効に対応するため
申告漏れ・修正申告が見込まれる場合 申告期限から7年 隠ぺい・仮装があった場合の時効
相続税が発生しなかった場合 最低3〜5年程度 後日申告が必要となる場合に備えて

一般的には、申告期限(相続開始の翌日から10ヶ月後)からさらに5年〜7年間の保管が推奨されます。具体的には、相続開始から約6〜8年は保管しておくとよいでしょう。

具体的な保管方法

葬儀費用に関する書類は、種類ごとに整理して保管することが大切です。

  • 葬儀社・火葬場からの領収書 → クリアファイルに入れて封筒にまとめる
  • お布施メモ → 手書きでも可。日付・支払先・金額を記入して同封
  • 銀行振込明細書 → 通帳のコピーまたは明細書を同封
  • 葬儀の見積書・明細書 → 費用の内訳確認のため保管
  • 相続税申告書のコピー → 控えを必ず保管

これらを「相続関係書類」としてひとまとめにしてファイリングし、保管場所を家族全員が把握しておくことが大切です。

デジタル保存も有効です。スキャンしてPDF化し、クラウドストレージ(Google ドライブ等)に保存すれば紛失リスクを下げられます。ただし、原本も同時に保管しておく方が安心です。

相続税申告書への記載方法

葬式費用を相続税の計算上控除するためには、相続税の申告書(第13表)に正確に記載する必要があります。申告書の書き方を理解しておくことで、スムーズに申告を進めることができます。

申告書第13表「債務及び葬式費用の明細書」への記載

相続税の申告書の中で、葬式費用を記載するのは「第13表 債務及び葬式費用の明細書」です。この書類に以下の情報を記入します。

  • 費用の種類(葬儀一式・火葬費用・お布施など)
  • 支払い先(葬儀社名・寺院名など)
  • 支払った年月日
  • 金額
  • 負担した相続人の名前

複数の相続人が費用を分担して支払った場合は、それぞれが負担した金額を各自の欄に記載します。誰がどの費用を負担したかを明確にしておくことが重要です。

申告書への添付書類

葬式費用を申告する際の添付書類について、相続税の申告には「葬式費用の領収書の添付は必須ではない」とされています。しかし、税務調査の際に提示を求められる場合があるため、必ず手元に保管しておく必要があります。

申告書への領収書の添付は任意ですが、税務調査では必ず提示を求められます。申告書を提出したからといって領収書を処分しないよう注意してください。

申告書を提出する先

相続税の申告書は、被相続人(亡くなった方)の住所地を管轄する税務署に提出します。複数の相続人がいる場合でも、申告書の提出先は被相続人の住所地の税務署1箇所です。

申告期限は「被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内」であり、この期間内に納税も完了させる必要があります。

葬儀費用控除と準確定申告の関係

相続が発生した場合、葬儀費用の控除以外にも「準確定申告」という手続きが必要になるケースがあります。葬儀費用控除と準確定申告はまったく別の手続きであるため、混同しないよう整理しておきましょう。

準確定申告とは

準確定申告とは、被相続人(亡くなった方)が生前に得ていた所得(給与・年金・不動産収入など)について、相続人が代わりに確定申告を行う手続きです。

被相続人が1月1日から死亡日までの間に所得があった場合、その年の所得税の申告・納税を相続人が行う義務があります。

申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」です。相続税の申告期限(10ヶ月以内)より短いため、注意が必要です。

葬儀費用は準確定申告で控除できるか

葬儀費用は「所得控除」の対象にはならないため、準確定申告での控除は認められません。葬儀費用の控除は、相続税の計算における「債務控除」という位置づけであり、所得税の計算とは別の仕組みです。

準確定申告と相続税申告は別々の手続きです。葬儀費用の控除は「相続税申告書の第13表」にのみ記載します。準確定申告には含めません。

医療費控除と葬儀費用の関係

被相続人が亡くなる前に支払った入院費用・治療費などの医療費については、準確定申告において医療費控除として申告できる場合があります。

ただし、これは「葬儀費用」とは別の費用であり、医療費として準確定申告で控除し、葬儀費用は相続税申告で控除する、という形で両方を活用することが可能です。

税理士への相談が必要なケース

相続税の申告は、遺産総額や家族構成によって複雑になることがあります。以下のようなケースでは、税理士への相談が相続税の適正な申告と節税対策につながります。

専門家への相談が特に重要なケース

  • 遺産総額が基礎控除額に近い場合:申告の要否の判断や、葬儀費用の控除による境界線の確認が必要
  • 複数の不動産を相続する場合:不動産の評価額(路線価・時価)の計算が必要で、葬儀費用控除の有効活用が重要
  • 相続人の間で葬儀費用の負担者が異なる場合:申告書への正確な記載と按分の計算が必要
  • 初七日法要を葬儀と同日に行った場合:費用の内訳によって控除できる範囲の判断が必要
  • 海外に財産がある場合:外国財産の評価や葬儀費用との相殺の取り扱いが複雑になる
  • 被相続人が事業を行っていた場合:事業用資産の評価と葬儀費用の控除の計算が複雑になる
  • 相続税の申告期限が近い場合:期限内申告と適切な控除の確保のために専門家の支援が必要

税理士への相談は相続開始後できるだけ早い段階で行うことが大切です。申告期限(10ヶ月以内)は意外と短く、準備に時間がかかります。

税理士の選び方と費用の目安

相続税の申告を依頼する税理士を選ぶ際には、「相続税の申告実績が豊富かどうか」を確認することが重要です。税理士全般ではなく、相続専門または相続を得意とする税理士を選ぶことで、葬儀費用の控除を含めた適切な申告が期待できます。

税理士費用の目安は、遺産総額の0.5%〜1%程度が一般的です。遺産総額5,000万円であれば25万円〜50万円程度になることが多いですが、事務所によって異なるため、複数の事務所に相談して比較することをおすすめします。

初回相談を無料で行っている税理士事務所も多くあります。まずは相談だけしてみることから始めてみてください。

葬儀費用の節税を最大化するためのポイント

葬儀費用の債務控除を最大限に活用するためには、費用の記録と申告の準備を適切に行う必要があります。

葬儀直後から始めるべきこと

葬儀後は様々な手続きが重なり慌ただしいですが、葬儀費用の記録は早めに行うことが大切です。

  1. 領収書・明細書の収集:葬儀社・火葬場・寺院など各支払先から領収書を受け取り、一箇所にまとめる
  2. お布施メモの作成:領収書が出ない支払いは、当日中にメモを作成する
  3. 費用負担者の確認:誰がどの費用を負担したか、相続人間で確認・記録する
  4. 葬儀社への内訳確認:「一式」の請求に含まれる費用の内訳を確認し、必要に応じて分けた領収書を依頼する
  5. 銀行引き落とし・振込の確認:通帳や振込明細書を保管する

費用を控除できるかどうか判断に迷う場合

葬儀費用の中には、控除できるかどうかの判断が難しいグレーゾーンのものがあります。判断に迷った場合は、以下の基準で考えてみてください。

  • 「葬式・葬送に直接必要か」→ 直接必要なら控除対象の可能性が高い
  • 「葬式の前後を問わず必要だったか」→ 葬式と関係なく発生する費用は対象外の可能性が高い
  • 「通夜・告別式・火葬の当日に関係するか」→ 当日の費用は控除対象が多い

それでも判断がつかない場合は、費用の記録を残したうえで税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄をした人が葬儀費用を負担した場合、控除は受けられますか?

相続放棄をした方は、相続税法上の債務控除を受けることができません。葬儀費用を実際に負担していたとしても、相続放棄によって相続人としての地位を失うため、葬式費用の控除の対象から外れます。葬儀費用を誰が負担するかは、相続放棄をする前に相続人の間で話し合っておくことが重要です。なお、相続放棄しても葬儀費用の支払い自体は可能ですが、税務上の控除が受けられない点は理解しておく必要があります。

Q2. 葬儀費用は全額控除できますか?上限はありますか?

葬式費用の債務控除には法律上の上限は設けられていません。実際に支払った控除対象費用の全額を控除することができます。ただし、過度に高額な費用については税務署から内容の確認を求められる場合があります。一般的な葬儀費用の相場は100万円〜200万円程度とされていますが、地域や葬儀の規模によって異なります。いずれにせよ、支払った事実を証明できる書類(領収書・メモなど)を保管しておくことが大切です。

Q3. 相続税がかからない場合でも、葬儀費用の記録は必要ですか?

遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告は不要であり、葬儀費用の控除も不要です。しかし、遺産の全体像が明らかになる前の段階では、葬儀費用の記録は必ずしておくことをおすすめします。後から遺産が出てきて申告が必要になるケースや、税務署から問い合わせがある場合に備えて、最低3〜5年間は記録を保管しておくと安心です。

Q4. 初七日法要を葬儀当日に「繰り上げ初七日」として行った場合、費用は控除できますか?

初七日法要は本来「葬儀後の法要」として控除対象外とされていますが、葬儀当日に繰り上げて行う「繰り上げ初七日」については、葬儀一式として扱われる場合もあります。ただし、初七日法要の費用が葬儀社の請求書に明確に区分されている場合は対象外となることが多く、判断が難しいケースです。税理士への確認が最も確実な方法です。

Q5. 葬儀費用をクレジットカードで支払いました。控除は受けられますか?

葬儀費用の支払い方法(現金・振込・クレジットカード)は控除の可否に影響しません。クレジットカードで支払った場合でも、控除対象となる費用であれば問題なく申告できます。ただし、カードの利用明細書だけでは費用の内訳が分かりにくい場合があるため、葬儀社から詳細な領収書・明細書を必ず受け取っておくことが重要です。また、カード会社への支払いが翌月になる場合でも、申告では葬儀が行われた時点の費用として扱われます。

Q6. 葬儀費用を相続財産から支払った場合と自己資金から支払った場合で、控除の扱いは変わりますか?

葬式費用の債務控除は、費用をどの資金から支払ったかではなく、「相続財産を取得した相続人が実際に負担したかどうか」で判断されます。相続財産から支払った場合も、自己資金から支払った場合も、控除対象の費用であれば申告書に記載することができます。ただし、被相続人の生前の預金から葬儀費用を引き出す場合は、金融機関の手続きが必要になるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

Q7. 遠方からの親族の交通費・宿泊費は葬儀費用として控除できますか?

遠方から参列した親族の交通費や宿泊費については、一般的に葬式費用の控除対象外とされることが多いです。国税庁の規定では、葬式費用として認められるのは「葬式や葬送に直接必要な費用」であり、参列者の交通費・宿泊費はこれに含まれないと解釈されるのが一般的です。ただし、例外的に認められるケースもないとは言い切れないため、個別のケースは税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

葬儀費用と相続税控除の仕組みについて、ここまで詳しく解説してきました。最後にポイントをまとめます。

  • 葬式費用の債務控除は相続税法第13条に基づく正当な控除制度であり、遺産総額から葬儀費用を差し引くことで課税対象額を減らすことができます。
  • 控除できる費用は、葬儀社費用・火葬費用・お布施・通夜飲食費など「葬式・葬送に直接必要な費用」が対象です。
  • 控除できない費用は、香典返し・墓地・仏壇・初七日以降の法要費用などです。「葬儀に関係するから全額控除できる」という誤解に注意してください。
  • お布施など領収書がない費用は、日付・支払先・金額・理由を記録したメモを作成・保管することで申告に使用できます。
  • 領収書の保管期間は申告期限から最低5年間(万全を期すなら7年間)が目安です。
  • 申告書への記載は「第13表 債務及び葬式費用の明細書」に行います。費用の種類・支払先・金額・負担者を記入します。
  • 葬儀費用控除と準確定申告は別々の手続きです。葬儀費用は相続税申告の第13表に記載し、準確定申告には記載しません。
  • 税理士への相談は、遺産総額が大きい場合や相続人が複数いる場合、不動産を含む場合などに特に有効です。相続開始後早めに相談することをおすすめします。

相続税の申告は、専門知識が必要な部分も多く、ひとつひとつの手続きに時間がかかります。葬儀費用の記録は「葬儀が終わったその日」から始めることが、後々の申告をスムーズにする最大のポイントです。

「相続税がかかるかどうか分からない」「葬儀費用の何が控除できるか判断できない」といった場合は、早めに税理士や税務署の相談窓口(相続税の無料相談)を利用することをおすすめします。


本記事は2024年4月現在の国税庁の情報に基づいて作成しています。税法は改正されることがあるため、申告の際は最新情報をご確認ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的アドバイスではありません。具体的な申告については、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

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この記事を書いた人

終活葬儀ナビ編集部。身近な家族の葬儀・相続・遺品整理を実際に経験した編集メンバーが中心となり、終活に直面する方の「わからない」「不安」に寄り添う情報発信を行っています。厚生労働省・国税庁・地方自治体など公的機関の一次情報を徹底的に参照しつつ、実務目線での注意点を織り交ぜた記事制作を心がけています。取り扱い領域は、葬儀(家族葬・一日葬・直葬)、お墓・供養(納骨堂・樹木葬・永代供養)、相続(相続税・遺言書・遺産分割)、遺品整理、ペット供養など終活全般。個別具体的な法律・税務相談については、必ず弁護士・税理士など有資格の専門家にご相談ください。

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